微笑み武器(ウェポン)
俺達三人に向かって、深々と頭を下げているじいさんと雨宮 凛に、美沙は慌てながら
「いえ、おじいさまも凛さんも、頭をお上げになってください。あたしはどんなことがあっても最初から、凛さんご本人と直接会うつもりでいたので…全然気になさらないでください」
急いで、そう言う。
美沙のその言葉に俺と摸も同意するようにゆっくりと頷くと。
じいさんはその頭を上げて…雨宮 凛もそれに続いた。
頭を上げたじいさんは、そんな俺達三人の顔を、瞳を、順番に見つめながら
「そう言ってもらえると、助かるのぅ…本当に、感謝じゃ」
そう言ってまた、小さく頭を下げた後、まるで自分に言い聞かせるように
「じゃからと言って…もうすることが決まっておるのも、確かなことじゃ。わしの力を持ってして…手遅れになっておらねば良いが…。どちらにせよ…もう時間が、ない。わしも心を…決めねばならぬ…」
呟くようにそう言うと…。
次の瞬間、気持ちを切り替えるように、少し声のトーンを上げて
「…と、いうこじゃ!依田先生にはお主達から、そのように伝えてはもらえんかのぅ…。我が家のことはこちらで何とかするゆえ、もう心配せんでえぇ、と…」
そう言ってじいさんは、どこか寂しげに…微笑んだ。
…。
…何だか、嫌な気持ちになる…微笑みだ。
“もうすることが決まっておる” という言葉も… “心を決めねばならぬ” という言葉も…。
恐らくそれは、雨宮 凛を “再封印する” …という意味に違いないだろう。
…かと言って、俺達三人に出来ることが、役に立てることがないのも…現状だ。
このじいさんの言う通り…明日学校で、依田先生にじいさんの今の言葉を伝えることが、俺達三人に出来る一番賢明な判断なのかも…しれない。
…。
巡り巡って…結局、そういう答えしか見出せない自分を、やるせなく感じつつも…俺がふと、今回のミッションの核心に迫る人物、雨宮 凛のほうにチラリッと目をやると…。
その視線に気がついた雨宮 凛が俺のほうを見つめて、愛らしいその顔で、再びニコッ…と微笑んだ。
…!
本日何度目の…俺に向けての微笑みだろう!
そうそう、二度目だ!
何度見ても、可愛い女の子の微笑みは、いいよなぁ…。
俺はポワ~ンとしながらも、どこか吹っ切れたように。
それにしても…可愛い女の子の微笑みというものは、正直…。
強力な “武器” だということを…その破壊力が凄まじいものだということを…。
俺は本日、いや今この瞬間…二度目ながらにして、改めて身を持って体感を…して、いる…。
つ・ま・り…だ。
どんな理由があろうとも、例えその胎内に悪鬼ごときがいようとも。
こんなに可愛い女の子を…(未来の俺の彼女を、妻を…)この世から消滅させてはならない!…ということだ!!
…解決策も、何の具体策も見出せないまま、再びのぼせ上がった俺が、そんな無責任な決断と、勝手に雨宮 凛を未来の自分のパートナーに決定しながら…一人、エキサイティングしていると。
「凛ちゃんはぁ…どうしてメモ用紙を使ってぇ~会話をしているんですかぁ?」
脳天気に摸が、しかもなれなれしく人の未来のパートナーのことを “凛ちゃん” と、下の名前で呼びながら…のんびりとした口調で、その口を開いた。




