蛇足に雷撃
「…でも」
じいさんのその言葉に…視線に…応えるように、硬直から立ち直ったのか、美沙はそっと口を開くと
「…おじいさまが、あたし達のことをいくら信用して下さっても、やはり凛さんご本人には直接、会わせてもらうことは出来ないのですよね?」
静かに、そう言う。
「…それに」
…と今度は摸が、美沙の言葉に付け足すように話し始める。
「…おじいさんはどうして、KRZ48のチケットをそう易々と手に入れて…。しかもそれを他人に譲るなんて神のようなことが出来るんですかぁ~?依田先生が部室で言っていた大事な用事って、神楽坂劇場へ生のKRZ48を…秋素さあやちゃんを見に行くことだったんだぁ~…いいなぁ~!僕も一緒に行きたかったよぉ~」
脳天気に、摸がそう言葉を発した瞬間に、俺の隣りで美沙が何やらボソボソ…と呟いたかと思うと、次の瞬間…
“ドドォ~ン!”
…と、小さな一筋の雷撃が、摸の頭上から摸めがけて降り注ぎ…。
哀れ…黒焦げになった摸は、ヒクヒクと痙攣しながら、座っていた座布団の上にうつ伏せにバタリ…と倒れ込んだ。
「…」
「…」
そんな摸を、俺とじいさんは冷や汗とともに無言で見つめ…。
KRZ48のことは、もういいんだってば!…と、空気を読めなかった摸のことを、俺は内心気の毒に思いながらも…美沙の次の言葉をじっと待っていた。
…そんな中、美沙は何事も無かったかように
「無理にとは言いません。でも…あたし達やっぱり、凛さん本人に直接会ってその様子を見てみたい…。そして出来ることなら、お二人の力になりたいんです」
そう言うと、真剣な眼差しで真っ直ぐにじいさんの顔を見つめた。
そんな美沙の眼差しを、じいさんは目を細めるようにして受け止めながら
「…いい目を、しておるのぅ…」
そう呟くように言ってから
「そう…じゃのぅ…。信じておる…と言っておきながら、当の本人には会わせず、その事情を話そうとさえしない…。それでは本当にお主らを信じておる、と…いくら言ったところで、口だけになってしまうのかもしれんのぅ…」
そう言うと一人小さく頷いてから、心を決たように静かに息を吸い込んで
「…では、話し始めるとしようかのぅ。信じているお主らに、凛の同級生であるお主らに、その “事情” とやらを…。今からわしが話すことを聞いて、凛と直接会うかどうかは、お主ら三人が自分達で決めることじゃて。…それで、いいかの?」
じいさんの問い掛けに、俺と美沙は頷き…少し遅れて、制服と顔の煤を払い落としながら起き上がった摸も頷くと、座布団にしっかり座り直した。
じいさんはそんな俺達三人を順番に見つめながら、腕を組むと
「…何から話せば、いいのかのぅ」
呟くようにそう言って、リビングルームから続く庭園のような立派な庭に目を向け、まるで記憶の糸を手繰り寄せるようにその目を細めながら、ゆっくりと静かに語り始めた。




