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あなたのそばに7

 しかし、豊はこちらを見るわけでもなく、淡々と作業を進めていた。祐希は豊に近寄って、腕に触れてみたが、何の反応も無かった。

 豊は「さてと、写真のチェックだ」とデスクのパソコンを立ち上げようとしようとして移動したときに、豊の体は実態の無い祐希の体を通り抜けた。祐希はフッと熱いものがこみ上げてきた。

 (こうやって私の魂は豊の近くにいるのに、何一つ、伝えることが出来ないんだ。言葉をかけることも、ましてや抱きしめることも)


 そこに一人の女性が事務所を訪れてきた。

 「あの…突然申し訳ございません。九月からファッション誌Stylishの編集部に配属になった秋吉エリカと申します」と女性はバックから名刺入れを出し、名刺入れから取り出した名刺を豊に手渡した。

 豊は「Stylishさんには、いつもお世話になっております」と丁寧に言葉を返し、豊も同じように「矢野プロダクションの相沢です」と名刺を手渡した。秋吉は同じように北原にも名刺を渡し、北原も豊にならって名刺をぎこちなく差し出した。

 「本当はお電話でこちらにお伺いすることを伝えるべきでしたが、電話が通じませんでしたので」と秋吉が言うと、豊はポケットの中の携帯電話を取り出し、確認した。

 「すみません。電話いただいていたようですね。先ほどまで撮影がありまして」と豊が言い訳を言った。

 「いいんです。そしたら矢野プロダクションさんは午後三時以降には戻ってくることが多いから、直接伺ってみろと編集長が言うものですから」と秋吉は答えた。

 「それと、ご挨拶を兼ねて、撮影の依頼をさせていただきたいと思いまして」と秋吉は続けた。

 「そういうことなら、こちらにどうぞ」と豊は秋吉を打ち合わせ室に案内し、北原に「悪いけど、写真のチェック進めておいてもらえるかな」と指示をした。北原は任してくださいと言わんばかりの表情で  「はい」と答えていた。

 北原くんも成長したんだな、と祐希は感心しつつ、二人に置いて行かれないよう、豊の後ろについていくようにして、打ち合わせ室に入った。


続く

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