あなたのそばに18
二人が店を後にした瞬間、祐希はまた、花が咲き乱れるあの風景の場所にやってきていた。
「私、どうしたのかしら」と独り言を言うと、
「貴方の情念が強すぎたわ」と後ろから声が聞こえてきた。
振り返ってみると、あのときに会った白い服を着た女性がたたずんでいた。
「情念が強すぎた?」
「貴方は魂だけが、現世に漂っているのだけれど、思い入れが強すぎると、貴方の気持ちが生きている人に伝わってしまうことがあるのよ」
「あれは…、二人の思い出の曲が流れたから、豊が躊躇したんだと思うわ」
「貴方が念じたのよ、私を忘れないで、ってね。それが間接的に曲として現れてしまった」
「そうなんですか?」
「貴方がしたいことは、豊さんを縛ることではないでしょう」
祐希は頷いた。
「私はただ、『豊と結婚したかった』、そう伝えたいだけなの、今は叶わぬ願いだけれども」
「そうよね。それに豊さんの幸せを願っている、そうじゃない?」
「もちろん」と祐希は小さな声で頷いた。
「であれば、それも願わなければ、貴方の伝えたいことも、豊さんには伝わらないの、わかる?」
彼女は優しく問いかけてきた。
「わかりました」
「じゃあ、もう一度だけ、現世に戻してあげるから、今度こそ、うまくやるのよ」と祐希の頭を撫でた。
「いってらっしゃい」
そう言うと、祐希を現世に送り返していた。
続く