テーセの憂鬱な時間 12-7
~エピローグ
いつもの四阿での仮想空間デートだった。
「ねえ、ノルディック。その映像残っているんだよね? 私も見たい!」
彼女はノルディックの顔をキラキラとした眼差して見つめてくる。
仮想空間で二人はそれぞれのアバターで会っている。
いつものように二人だけの個室であるように夕日を見ながら四阿に座っていた。
今日の出来事を聞いて、彼女は瞳を輝かせている。
見せられたものではないはずなのに。
「面白いものじゃないぞ」
「だって私もノルディックの格好の良い姿を見たいもの」
「オレは口下手だし、英雄じゃないぞ」
「ヒーローだよ。だってここぞという時のノルディックは雄弁だし恰好が良かったもの」
「そんな訳あるか」
「知らないの? ノルディックは本当に必要な時は誰よりも前に出てみんなを守ってくれていたんだから」
「嘘だろう?」
ただやれることを身体を張ってやっただけだ。狙ってやっているわけではない。
「メイやカーズに訊いてみるといいわ。あなたが無敵のヒーローだって言うわよ」
「本当かよ。知らなかったな。リョウやシークに弁の方は任せっきりなっていると思ったからな」顔が真っ赤になっている。「オレは話し上手じゃないからな」
「まあぶっきら棒だし、愛想もないけれど、ここぞという時ははっきり言ってくれるし、頼りになっていたんだから」
彼女はノルディックに訴えかけてくる。
「信じられない」
「だってあの時は」
彼女は自分が責め立てられていた時に具体的な例を示しながら颯爽と庇ってくれたノルディックの姿を嬉しそうに頬を染めて話をしてくれた。
「すっげぇ、恥ずかしいんだが」
「私は何度もノルディックに助けてもらっていたんだから」
落ち込んだ時、必要な時に颯爽と現れて助けてくれた。
「分かった。分かった」
「で、でも待って」
映像を引っ張り出そうとしていたノルディックは頭を抱えもだえ苦しむ彼女の姿に戸惑った。
「待って、ツイングさんたちを助けていたのよね」
「そうだが?」
「やっぱり見るの止める」何度も唸り声を上げて彼女は言う。「絶対にそんなの見たら嫉妬に狂いそうになるに決まっているわ」
「え~っ、嫉妬ってなんだよ」
「優しい眼差しは私だけに向けて欲しいし、ノルディックは私だけのヒーローだもの」
「当然だろう」
当たり前のように宣言したノルディックに彼女は強く抱き着いてきたのだった。
〈十二話了 十三話へ続く〉
13話はこれにて終了です。
次からの14話は部長秘書クリスが故郷へ一時帰郷するお話となります。
このお話も気に入っていただけたら、★など頂けたら、励みになり嬉しいので、よろしくお願いします。




