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サラリーマン、銀河を行く ~底辺から花形部署へ成り上がれ  作者: 無海 シロー


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テーセの憂鬱な時間 12-6

 6.結果オーライ?



「お待たせしたね」

 フェミング部長が応接室に入室してきた。

 ディはすぐに立ち上がると謝罪していた。テーセもあわてて立ち上がり頭を下げている。

「申し訳ありませんでした。フェミング部長」

「デュエルナ君はよくやってくれたよ」

 労いの言葉を掛けてくる。

「とんでもございません。作業が滞ってしまったのであれば、それはテーセの責任でもあります。私がそれを手伝いたいと思うのですが」

「それには及ばないよ。それに三課の今回のプロジェクトはね機密性が高いものでね」

「他の担当者には触らせられないと」ノルディックは言う。

「そういうことだよ。遅れは彼らが何とかしてくれるだろう」

「申し訳ありません」ディはテーセを見た。「先輩方にご迷惑をお掛けしているのですから、テーセも頑張りなさい」

「う、うん」

 テーセは反省していたが、気が重そうだった。

「さてテーセ君」

「は、はい」

 テーセは背筋を伸ばす。

「君は解除不能なプロテクトを作り、課の業務を停滞させた。その行為は処分に値するのは理解してくれているかな」

「はい」しょんぼり俯きながらテーセは頷く。「すいませんでした」

「理解してくれたようでよかった」

 フェミング部長の目は微笑んでいるようにも見えたが、その口調には冷徹さがあるように感じてしまう。

 こいつも百戦錬磨の狸だとノルディックは思い知らされた。

「だが一方で君は未然に機密漏洩を防いでくれている」理解していての行動ではないだろうが。「これは君の手柄でもある」

「本当に?」

 顔を上げてテーセは驚いていていた。

「よって君への処分は相殺させてもらおう。始末書は書いてもらうがね」

 顔をテーセはしかめていたが、ディはホッとしていたようだ。

「……分かりました」

「寛大な処置ありがとうございます」

「オガワ君や彼に感謝するといい」ノルディックを見てフェミング部長は言う。「当部としては、これだけ才能のあるプログラマーを持って行かれるのは痛恨の極みだよ」

「どういうことでしょうか?」

 ディは訊ねる。

「私の前任を含め、見る目が無いといってもいいのだろうね。これだの才能を持っているのだからね」

 ノルディックには二人の能力について言っていると感じていたが、ディもテーセも部長の話についていっていないようである。

「テーセ・ナルス・ツイング君」

「は、はい」

 名を呼ばれテーセはもう一度背筋を伸ばす。

「本日付で君をTDFへと出向させることとする」

「出向?」ディは部長を見ている。

「えっ、本当ですか?」

 テーセも驚きながらも顔を輝かせている。

「うちでは扱いに困るという結論に達したよ。これ以上被害が出る前に異動させることにした」

 毎日のようにトラブルを起こしていれば当然かもしれない。

 とはいえ正式な異動は九月に発令されるようだ。第二データ処理部の面子もあるのだろう。すぐに異動させていては管理能力が疑われかねないから当然である。

「良かったな。存分に能力を発揮できるぞ」

 キョトンとしていたテーセの頭の上に手を置くとノルディックはワシワシと彼女の頭を撫でていた。

「本当に?」

「TDFはそういうところだからな。テーセも結果が出せるように頑張れよ」

「うん、見ていてよね」

 テーセは顔を綻ばせている。

 いい笑顔だ。

「ありがとうございます」ディは何度も頭を下げている。

「当然の処置だ。感謝されるいわれはないよ」

「それでも感謝いたします」

 うっすらと彼女は涙を浮かべているが、ノルディックは裏の駆け引きを想うと素直には喜べない。

 オガワとフェミングの間でどのようなやり取りがあったのだろうか?

「これにて退散してもいいでしょうか?」

 駆け引きが苦手なノルディックは訊ねていた。

「ああ、話は終了だ」フェミング部長は笑みを浮かべている。「端末のセキュリティチェックはさせてもらうがね」

 当然だろうな。防犯の意味もあり有耶無耶には出来ない。

 あとで言い掛かりを付けられないように記録を残し徹底的にやってもらうことにした。

「オガワ君によろしくと言っておいてくれたまえ」

「分かりました」知古な間柄なのだろうか?「伝えておきます」

「TDFはいい部署だよね。うらやましいよね」

 なんか胡散臭い笑みなので、気を改めるノルディックだった。

 派閥争いはまだまだ続きそうだ。


 通路に出るとテーセがすぐにノルディックの腕を取り抱き着いてきた。

 頬をこれでもかと擦り付けている。

「ありがとう、お兄ちゃん!」

「オレじゃない。フィオーレやディ、話を付けてくれたオガワさんに感謝しろ」

 ぶっきら棒に彼は言う。

「もちろんだよ。でもやっぱりノルデ兄が来てくれたから、安心できたんだよ」

「そのために来たんだから、それは良かった」

 ディの視線を感じながら、ノルディックは頷いていた。

 役目を果たせたようなのでホッと胸を撫で下ろしている。

 時計を見ると十五時半を過ぎ十六時近くになっていて、気か抜けてくると腹が減ってきた。

「さて、どこかで飯にするか」

 端末をポケットから取り出すとTDFに連絡を入れる。

 無事に終了したとフィオーレに報告するためだ。それが終わったら繁華街に出て三人で遅すぎる昼食にするつもりだった。もう夕飯か?

 まだペリシアが社食にいるはずだったけれど、TDFに戻ってしまうと、そのまま仕事への流れになってしまい落ちか無い気分になってしまいそうだったので、外で食事してから帰ろうと思ったのだ。

 残っているであろう仕事を考えるとリフレッシュしてから戻って残業なり徹夜に挑みたかった。

「お兄ちゃんのおごり?」

「いいぞ」

「それはダメです。いけません。私達がノルディに迷惑をかけたのですよ。私が出します」

「気にすんな」

「じゃあ、あたしが出すよ。それならいいよね?」テーセが白い歯を見せ笑った。

「嬉しいことを言ってくれるな」

「当然だよ♪ わたしも社会人だからね♪」

 嬉しそうにテーセは笑っていた。こいつはこうでないとな。

 端末がフィオーレに繋がる。

『終わったのかしら?』

「無事終了。今から戻るけれど、その前に飯にしていいか?」

『休憩していないの?』

「ぶっ通しでプログラムして、解決の方向に持って行っていけたよ」

『後顧の憂い無しなのかしら?』

「う~ん。どうだろう。あのフェミング部長は侮れないと思ったかな」

『それが貴方の感想ね。常務派の動きは調べる必要があるわね』

「手出ししてこなければいいかなとは思っているよ」

『楽観視は出来ないわね』フィオーレの声は笑っているようで、障害があればあるほど燃えるのかもしれない。自分と同じで。『分かったわ。そのまま戻ってこなくていいわよ』

「何で? 仕事が溜まっているだろう。アップデートもあるし」

『アップデート以外は終わるわ。全員が頑張ってくれたから』

「そ、それは礼を言わないとな」

『今日は仕事が終わったら、テーセの歓迎会よ』

「もう知っているのかよ!」

『オガワさんが嬉しそうに報告してくれたわ。だから頑張ってくれたご褒美なのよ。場所はノルに任せるわ』

「オレはそんなに詳しくないんだがな」

『それならディに気に入ってもらえるような店を探しなさいな』

「センスないのにハードル上げるなよ」

『よろしくね』

 そう言われて通信は切れた。

 ため息をついていると心配そうにディが訊ねてきた。

「TDFで何かあったのですか?」

「仕事が順調だから、テーセの歓迎会をするってさ」

「わたしの?」

 テーセはキョトンとしていた。

「もう伝わっていたらしい。歓迎してくれているみたいだぞ。飯にしながら会場を探せってさ」

「それならば良いところを見つけないといけませんね」

「やった~♪」はしゃぎながら第二データ処理部の入口を出ると、階段を飛び降りて着地している。喜びを全身で表現していた。「お兄ちゃんたち大好き♪」

「オレはそれが終わったらアップデートの作業をしないとな」

 TDF全体の仕事は滞りなく進んでいても、ノルディックが手かけているゲームの更新作業は終わっていなかった。

「手伝いますよ」

 ディがノルディックの顔を覗き込んできた。

「ありがたいが、無理するな。テーセがいるんだから」

「わたしも手伝うよ」

 耳さといテーセも手を挙げている。やる気は満々のようだった。

「頼むから本当の爆弾は作らないでくれよ」ゲーム自体がネットワークから消失してしまいそうで怖かった。

 そんなことはお構いなしにテーセはエアカーに乗り込む。

 さて、何を食べようかな。

 気合を入れるなら肉だろうか? ノルディックは悲観していない自分に苦笑するのだった。


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