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サラリーマン、銀河を行く ~底辺から花形部署へ成り上がれ  作者: 無海 シロー


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閑話休題 其の弐 サプライズパーティー 7.5

 1.歓迎と送迎



「ねえフィオーレ、いいかしら?」

「何かあったのかしら? クリスはいいの?」

「今ひと段落ついたところ。今日はもう会議は無いし、部長もパーンパイプに行っているから、彼女は休憩させているわ」

「大丈夫そう?」

「慣れないから気疲れしているみたい。でも本当に大らかで嫌味なことを言われても気が付かないのか、許容しているようなのよね」

「大物ね」

「そうね」フェリウスは微笑む。「今日で三日目だけれど、私のようにはなっていないから優秀よ」

「フェリウスが隣にいてくれるからではなくて?」

「それもあるのかな。でも、私の話は聞いてくれるしメモも取っているわ。慣れるまで大変かもしれないけれど、続けられると思う」

「それは良かったわ。それで私に何用かしら?」

「私のTDF出社最終日に、クリスと私の歓送迎会が企画されているのでしょう?」

 歓送迎会や祝賀会などの宴席はフェリウスが率先して場所などを決めることが多かったけれど、今回は送り出される側になっている。今回取り仕切っているのがフィオーレだと聞き彼女の元にやって来たのである。

「皆、宴会が好きですからね」フィオーレは笑みを浮かべる。「その日は都合が悪いのかしら?」

「違うの。もうひとつ加えて欲しいことがあるの。部長には秘密で」

「パーンに? ああそういえばあの子の誕生日が近かったわね」

 パーンの誕生日は銀河標準で一月十八日の生まれになっていて、その日で目出度く十五歳の成人を迎えることになっている。

「本人あまりそういうのを気にしていないようだし、サプライズで祝ってあげたいなと」

「サプライズになるかしら?」

「ならないの?」

「あの子は妙に勘が良いし、その日を忘れていたとしても、ああそうだね、で終わりそうで」

「あ~、ありそう。なんか自分のことに関しては希薄なのよね」

「それでもやるの?」

「やっぱりお世話になったし、花束くらい渡したいわ」

「あれほど泣かされたのに?」

「もういい思い出よ」少し顔を赤らめている。恥ずかしいのだろう。

「残念だわ。あなたにはもう少していて欲しかったけれど」

「惜しまれるくらいが花ですよ」

「そうかも。それにパーンにはお世話になったと感じている子もいるから、サプライズのプレゼント選びは彼女達に任せてみようかしら」

「誰?」

「アリエーとディよ。二人なら喜んで話に乗ってきそう」

「そうでしたね。お二人とも本当に感謝していましたから、良いと思います」


「ねえディ。話は聞いているわよね?」アリエーは食事をしながらこっそりと隣に座るデュエルナに話しかける。

「はい。素敵なアイディアだと思います」顔の前で手を合わせディは微笑んだ。「素敵なものを選びたいです」

「何が良いかな」

「何が良いでしょう?」

「まあパーンの欲しいものなんて分からないから、私達の感覚で選ぶしかないけれど」

「アリエーはホーカルにプレゼントとかしているのでは?」参考にしようと訊ねてみる。

「ごめん。私は参考にならないかも。ホーカルにプレゼントしたのも一度きりなのよ」申し訳なさそうに身を縮める。「だって事前に、わざわざ送る必要もないって言われるのよ。先に釘を刺されてしまうと何もできないじゃない? 色々と考えたかったのに」

「こちらこそ御免なさい。私も男性に贈り物をしたことがないの」

「そっかあ」えっ、ノルディックには、無いの?

「アリエーはご家族とかには?」

「うち? スクルでは家族の誕生日を祝う時は狩りをしたかな~。猪が狩れたら本当にご馳走だったから、頑張ったわ」

「狩り? それがプレゼントになるの?」

「みんなで祝うのよ。ごちそうは大切なの」目の前のステーキを頬張りながら彼女は言う。「あとは石かな」

「石?」ディの目が点になっている。想像できないのだろう。

「鉱石みたいなものなの。翡翠とかエメラルドみたいな石が川から見つかるのよ。それを加工して自分なりの装飾品を作ってもらうのよ」儀式で身に着けるのだとアリエーは笑う。「でもこちらではそういうのは一般的ではないでしょう?」参考にはならないと申し訳なさそうだった。

「装飾品はいいかもしれないわ」

「えっ、今から作るの?」

「それでは間に合わないわよ。アリエーの様に儀式に使うものではなくて、ネクタイピンやカフスはどうかしら?」

「ああ大人っぽくていいかも、成人だものね」アリエーは手を叩く。「じゃあ、それを私達なりにアレンジしてみない?」

「どのように?」

 アリエーは耳打ちするとディは目を見張った。

「パーンは驚いてくれるかな」

「サプライズには出来ると思う」

 二人は笑い合うのだった。そしてその日の夕方に二人はアーケード商店街に出かけるのである。



 2.サプライズバースデイ



 先日バレーボール大会で祝勝会を上げた中華飯店が今回も会場だった。辛い四川料理も好きなフェリウスに合わせてくれたようである。

 椅子も用意されていたが、会場は広めのパーテーションにしてもらったので、各々グラスを持ち立食形式にもなっていた。

「クリス。頑張れそうですか?」

 優しい声だった。

 そうフェリウスが問うと、クリスは膝を屈め背中を丸めながら抱き付いてくる。

「頑張りますぅ。でも寂しいです」

 涙を流していた。酔うと彼女は泣き上戸なのだろうか?

 先に泣かれてしまってはフェリウスも泣き所を失ってしまっていた。

「大丈夫です」一歳年上の彼女の背中を優しく叩いて励ます。「私以上にちゃんとやれていましたよ。ただ今もですが訛ってしまうのは気になりましたが……」

「気を付けます~ぅぅ」鼻水をすすっているのでハンカチを出して拭いてあげた。

 大柄で瘦せ型なのに本当に子供っぽかった。

 初めて出来た弟子のようなもので、五日間だけではあったけれど、こんなに慕ってくれると、愛おしく感じられてくる。

 これからも見届けて上げられればいいけれど、フェリウスは秘書課での仕事が待っている。難しいだろう。

「先生の教えを受けて頑張ります」

「良かったわ」フェリウスはホッと胸をなでおろす。

 本当にTDFにすぐに戻されるのでは夢に出てきたほどである。

「先輩。ありがとうございます。先輩の薫陶を胸に受けて私はやり遂げて見せますから」

「あんまり気を張らないでね。クリスらしく大らかにやっていけばいいのですから」

「先輩ぃぃぃぃぃ」

「私も教えた甲斐があります。何かあったら、連絡を下さいね。力になります。まあフィオーレを頼れば大概は大丈夫だと思いますが」

「ありがとうございます~ぅ。先輩が頼りです」

「本当に大きな子供なのだから」クリスの背を優しく叩く。「でも教えることが出来て私もよかったです」

 右も左も分からない新天地に放り込まれ、フェリウスは苦労したのである。秘書課でやり方は全然通用しなかった。どれだけ打ちのめされただろう。教えてくれる先達もいない。一人でもがくしかなかったのだ。

 心細いはずのクリスの力になれたのなら研修期間を設けてもらい教え込んだ甲斐もあった。

「ランチとアフターティを楽しみにTDFにきますから、なにか大変なことがあったら聞きますから、社食に顔を出してくださいね」

「先輩~ぃぃい」感極まって注意したのにまた訛っている。

「私もクリスに会えてよかったですわ」


「宴も闌ですが」フィオーレは手を叩き注目を集める。「ここで七ヶ月以上部長の面倒を見て下さり、我々を支援してくれたフェリウスに感謝を捧げ花束を贈呈したいと思います」

 フィオーレはパーンを促す。

「貴方が一番、フェリウスを泣かせたのですからね。感謝の心を込めて花束を渡しなさい」

 パーンは、そうなのかなと首を傾げながらも、シンシマから大きな花束を受け取り、中央で待ち構えていたフェリウスの元に歩いていくと花束を贈呈する。

「ありがとうございます」パーンは微笑んだ。「フェリウスがいてくれて安心して背中を任せられました」

「私は相棒だったのかしら?」

「安心して心置きなく仕事が出来たという意味ではそうですね。フェリウスと出会えたこと神に感謝します」

「TDFに来た甲斐がありました。ありがとうパーン部長」

「それならば良かったです」

 彼女の目は潤んでいた。

 パーンからの花束を受け取ると隣に控えてくれていたクリスに受け取った花束を手渡すと、彼女から新たな花束をもらいパーンに差し出した。

「僕にもですか?」パーンはいきなり花束を手渡されキョトンとしている。「何かあるのでしょうか?」

「ハッピーバースデイ、パーン」

「ああそうでしたね。近かった」

 予想通りの反応が返ってきたのがおかしかったが、アリエーはディとともにパーンの前に進み出ると、用意したプレゼントを手渡すのだった。

「誕生日おめでう、パーン」

「あなたの未来に幸あれ」ディは微笑んでいた。

「ありがとうございます」あくまでも淡々とした表情のパーンだった。

「パーンに自覚は無いでしょうが、私達はパーンに感謝しています、こうして成長の機会を得たのですから」

「そんなことを考えていた訳ではありませんよ」

「そうだしても私達はパーンに感謝したいのですよ」

「嬉しくなかったかしら?」

「嬉しいですですよ」喜び方が分かっていない子供のようでもあった。それでも彼なりにはにかんでいたのかもしれない。

「パーン、開けてみろよ」

 シンシマにパーンは促されリボンをほどき小箱をける。

「これは……」

「私とディで選んだのよ。ちゃんと使ってよね」

 ケースに収められていたのはネクタイピンとカフスボタンだった。ネクタイピンには翡翠がカフスにはエメラルドがあしらわれている。高かったのではないだろうか?

 ただその翡翠とエメラルドには違和感もあった。一瞥しても分からないほどに細工が施されているようだ。

「よろこんで使わせていただきます。ところで、これ何か仕込まれています?」

「さすがね」ディは微笑んだ。「やっぱり取り扱い説明書は必要ないみたいよアリエー」

「会談とかでフェリウスから脅されたり、袖の下を要求されたって聞いたから、ピンにはカメラ機能。カフスには録音機能を付けておいたわ」

「スパイセットですか」パーンは目を丸くする。

「サプライズ成功かな」アリエーは手を叩き笑った。「因みに私とディからは祝福のキスも貴方に贈るわね。成人おめでとうパーン」

 両頬に二人からの祝福のキスを受けると、カメラのシャッターが切られまくるのだった。

「ありかとうございます。思い出深い誕生日になりました」

 パーンは小箱を見つめ微笑んでいた。

 本当に乗りが良く面白い人たちだった。



 〈第七.五話了 八話へ続く〉




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