第10−2話 切り開いた運命のその先で②
若干のざまぁ要素?があります。
苦手な方ご注意ください。
美しいオーレリアを見上げながら、ナディアは自らの敗北を悟った。
彼女は、セオドールに手を取られて、そのままナディアの横を通り過ぎていく。
行ってしまう、私の大好きな人が――。
「あ、あ、待って……、セオ様……」
震える手を必死に伸ばす。
ナディアの切なる声が届いたのか、セオドールがピタリと足を止めた。
「ああ、そうだ。君の処罰を先に伝えておこうか」
言葉に反し、セオドールは優しい笑みを浮かべたまま、ナディアを見下ろした。
「しょ、処罰……?」
「君には、悪役令嬢オーレリア・ミアンゼルムと同じ末路を辿ってもらう」
「あ、え……?」
「美味しい毒を用意しておいてあげようね」
セオドールの笑みが、すっと引いていく。
「以上だ」
再び歩きはじめたセオドールが、ナディアを振り返ることはなかった。
*
「シ、シルヴァン! お願い、助けて!」
ナディアは、体を引きずるようにして近くにいた魔術師の少年に縋りついた。
シルヴァンは表情こそ乏しいが、心を許した相手には笑顔を見せるし、情にも深い。
彼ならナディアを哀れに思って、守ってくれるに違いない。
そう期待を込めて彼を見上げていると、彼は膝をついて彼女の顔を覗き込んだ。そして、スチル通りの笑顔を浮かべてくれた。
ナディアが胸を撫で下ろしたその時、シルヴァンが口を開いた。
「あなたのお守りから解放されると思うと、とても晴れやかな気分です」
「え……」
「演技をしていたのは殿下とお嬢様だけじゃありません。攻略対象全員ですよ」
「そ、んな……」
ぐらぐらと世界が揺れる。
絶望が歩み寄ってくる気配に、ナディアは必死に周囲を見回した。
「アシュレイ様! カイル様!」
礼拝堂の壁にもたれかかっていた二人を見つけ、咄嗟に名前を呼んだ。
ナディアと目が合ったアシュレイは、ふ、と微笑み、ゆっくりと拍手を送る。
「中々に愉快なお芝居でしたよ。一流の劇作家だって思いつかないでしょうね」
「そ、そのセリフ……」
好感度がゼロの時に言われる言葉だ――。
アシュレイの隣に立つカイルへ、恐る恐る視線を移す。
「……。」
彼は、好感度をあげないと口を利いてはくれない。だから、彼の大好きな小動物を可愛がって、好感度をあげたはずなのに……。
「ナディア」
振り返ると、レオンハルトがすぐ後ろに立っていた。
彼は、女性には優しい騎士であり、セオドールの次に好感度上げを頑張った相手だ。
最後の希望を込めて伸ばされた手を、レオンハルトが優雅に受け止める。
「レオ様……」
ホッとしたように愛称で呼んだとき、レオンハルトは残酷な言葉を告げた。
「牢までのエスコートは、俺が引き受けてあげる」
「あ……」
慌てて引っ込めようとしたが、手首ごとがっしりと掴まれた。
レオンハルトは、獰猛な本性を隠さずに、ニヤリと浮かべる。
「おい。逃げようなんて考えんなよ?」
作中でも上位に入る、お気に入りのセリフ。
ようやく聞けたというのに、今は全身が勝手に震えてしまう。
「いや、助けて……」
必死に抵抗するが、レオンハルトは意にも介さない。
「ははっ、ずいぶんとお転婆なお姫様だね」
愉快そうに笑い、ナディアを引きずりながら歩き出した。
「誰か、お願い……」
ナディアが目から、涙がこぼれた。
「私を助けて!!」
彼女の叫びに応えるキャラは、誰一人として現れなかった。
次回がようやく最終話です。(こちらも二分割で投稿いたします)
20時ごろアップいたします。
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