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テンセイシャに脅されています  作者: 桃野ヒロキ


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第10−2話 切り開いた運命のその先で②

若干のざまぁ要素?があります。

苦手な方ご注意ください。

美しいオーレリアを見上げながら、ナディアは自らの敗北を悟った。

 彼女は、セオドールに手を取られて、そのままナディアの横を通り過ぎていく。


 行ってしまう、私の大好きな(キャラ)が――。


「あ、あ、待って……、セオ様……」


 震える手を必死に伸ばす。

 ナディアの切なる声が届いたのか、セオドールがピタリと足を止めた。


「ああ、そうだ。君の処罰を先に伝えておこうか」


 言葉に反し、セオドールは優しい笑みを浮かべたまま、ナディアを見下ろした。


「しょ、処罰……?」

「君には、悪役令嬢オーレリア・ミアンゼルムと同じ末路を辿ってもらう」

「あ、え……?」

「美味しい毒を用意しておいてあげようね」


 セオドールの笑みが、すっと引いていく。


「以上だ」


 再び歩きはじめたセオドールが、ナディアを振り返ることはなかった。



「シ、シルヴァン! お願い、助けて!」


 ナディアは、体を引きずるようにして近くにいた魔術師の少年に縋りついた。

 シルヴァンは表情こそ乏しいが、心を許した相手には笑顔を見せるし、情にも深い。

 彼ならナディアを哀れに思って、守ってくれるに違いない。

 そう期待を込めて彼を見上げていると、彼は膝をついて彼女の顔を覗き込んだ。そして、スチル通りの笑顔を浮かべてくれた。

 ナディアが胸を撫で下ろしたその時、シルヴァンが口を開いた。


「あなたのお守りから解放されると思うと、とても晴れやかな気分です」

「え……」

「演技をしていたのは殿下とお嬢様だけじゃありません。攻略対象(ぼくたち)全員ですよ」

「そ、んな……」


 ぐらぐらと世界が揺れる。

 絶望が歩み寄ってくる気配に、ナディアは必死に周囲を見回した。


「アシュレイ様! カイル様!」


 礼拝堂の壁にもたれかかっていた二人を見つけ、咄嗟に名前を呼んだ。

 ナディアと目が合ったアシュレイは、ふ、と微笑み、ゆっくりと拍手を送る。


「中々に愉快なお芝居でしたよ。一流の劇作家だって思いつかないでしょうね」

「そ、そのセリフ……」


 好感度がゼロの時に言われる言葉だ――。


 アシュレイの隣に立つカイルへ、恐る恐る視線を移す。


「……。」


 彼は、好感度をあげないと口を利いてはくれない。だから、彼の大好きな小動物を可愛がって、好感度をあげたはずなのに……。


「ナディア」


 振り返ると、レオンハルトがすぐ後ろに立っていた。

 彼は、女性には優しい騎士であり、セオドールの次に好感度上げを頑張った相手だ。

 最後の希望を込めて伸ばされた手を、レオンハルトが優雅に受け止める。


「レオ様……」


 ホッとしたように愛称で呼んだとき、レオンハルトは残酷な言葉を告げた。


「牢までのエスコートは、俺が引き受けてあげる」

「あ……」


 慌てて引っ込めようとしたが、手首ごとがっしりと掴まれた。

 レオンハルトは、獰猛な本性を隠さずに、ニヤリと浮かべる。


「おい。逃げようなんて考えんなよ?」


 作中でも上位に入る、お気に入りのセリフ。

 ようやく聞けたというのに、今は全身が勝手に震えてしまう。


「いや、助けて……」


 必死に抵抗するが、レオンハルトは意にも介さない。


「ははっ、ずいぶんとお転婆なお姫様だね」


 愉快そうに笑い、ナディアを引きずりながら歩き出した。


「誰か、お願い……」


 ナディアが目から、涙がこぼれた。


「私を助けて!!」


 彼女(ヒロイン)の叫びに応えるキャラは、誰一人として現れなかった。


次回がようやく最終話です。(こちらも二分割で投稿いたします)

20時ごろアップいたします。



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