III. 性のカラーパレット──「LGBTQIAK」ってなに?
私たちは今、「多様性(diversity)」という言葉が当たり前に使われる時代を生きています。
その象徴のひとつが、LGBTQ+を表すレインボーフラッグです。
この旗に描かれた6色の虹は、それぞれ「生命」「癒し」「太陽」「自然」「調和」「精神」を意味しており、多様な性の在り方を讃えると同時に、人間の本質的な価値を祝福するものでもあります。
まるで、「みんなちがって、みんないい」というメッセージを空に掲げているかのようです。
このレインボーフラッグは、単なる“旗”ではなく、「性とは本来、多彩で自由なものなのだ」ということを教えてくれる視覚的なメッセージでもあります。
Cf.出典:自分らしく生きる ttps://jibun-rashiku.jp/column/column-1236
「みんなちがって、みんないい」
余談ではありますが
──この言葉は、詩人・金子みすゞが残した有名な詩『私と小鳥と鈴と』の一節でもあります。
私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面を速くは走れない。
私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のように、
たくさんな唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。
彼女は大正時代、女性の社会的立場もまだ限られていた時代に、人間の存在そのものに「価値の平等性」を見出しました。
まさに、“ちがい”は劣等ではなく、個性であるという考え方は、現代の多様性の根底と重なります。
わたしの子供たち世代では、国語の教科書で必ず習う詩のようです。2000年代にはいってからのことでしょうか。時代を先取りする素晴らしい先進的精神をもった女性が、封建的な、しかも”男尊女卑”が当たり前の時代の日本にいらっしゃったということに敬意を表したいですね!
閑話休題──
さて、ここで少し視点を変えてみましょう。
「性」や「愛」を語るとき、私たちはつい、わかりやすい“赤”と“青”科の二択で考えてしまいがちです。
でも本当は、そのあいだにはたくさんの “色” がある。
赤と青だけじゃ全然足りない。
だからこそ、今こそ必要なのが――
「性のカラーパレット」という考え方なのです。
つまり、性とは“赤と青”だけで語るものではなく、本当は何十色もの絵の具があるパレットのようなもの。
LGBTQIAKという言葉は、そんなパレットの多彩さを示すラベルのようなものなのです。
昔むかし、「性」といえば「男」と「女」、それに「恋愛対象は異性」というのが“常識”とされていました。けれど、もし人間の性が“絵の具”だとしたら、私たちはずっと長い間、「赤と青」の2色だけで世界を描こうとしてきたようなものかもしれません。
でも本当は、性の世界にはもっとたくさんの色がありました。
それが今、少しずつ見えるようになってきたのです。
「LGBT」という言葉は広く知られるようになりました。
L=Lesbian(女性を好きになる女性)
G=Gay(男性を好きになる男性)
B=Bisexual(男女どちらも好きになれる人)
T=Transgender(出生時に割り当てられた性とは違う性で生きる人)
このあたりまでは、テレビや映画などでも描かれるようになり、だいぶ馴染みが出てきました。けれど実は、この「LGBT」だけでは表しきれない“性の多様性”があるのです。
最近よく使われるのが、「LGBTQIAK」という、さらに広がった表現です。
見慣れないアルファベットに戸惑うかもしれませんが、1つずつ見ていきましょう。
<QIAKの世界──まだ語られてこなかった性のカタチ>
Q:Queer/Questioning
自分の性を「定義したくない」または「まだ模索中」の人たち。
「みんなと違う」でOK。レッテルに収まりたくない人たちの自由な旗印です。
→例:パンケーキのトッピングを日によって変えたい人、みたいな感覚。
I:Intersex
生まれつき男女どちらの特徴も持っている身体をもつ人たち。
「身体の性」そのものが二者択一ではないという存在を教えてくれます。
→例:自然界でも雄と雌の特徴を併せ持つカタツムリや魚がいます。
また有名なところでは、長年世界のトップ・ファッションモデルとして活躍し、「インターセックス」だとカミングアウトしたハンネ・ギャビー・オディールがいます。ベルギーの小さな街コートトライーク出身ですが、モデルとして得た名声を活用し、インターセックスの基本的人権を訴えています。
A:Asexual/Allies
Asexual=他者に対して性的な欲求をほとんど/まったく持たない人たち。
Allies=性的マイノリティーを理解・支援する“味方”たち。
→例:恋愛しなくても豊かな人生を送る人、旅を一人で楽しむ人のように。
K:Kink
ちょっとニッチな性的嗜好を持つ人たち。
ただし、ここでは「同意があり、人を傷つけない限り性の自由は多様でOK」という意味合いで捉えられています。
→例:食の嗜好が甘党もいれば激辛好きもいるように、“楽しみ方”にも幅がある。
<性の三原色──なにで構成されているのか?>
「性的マイノリティーって結局なにが違うの?」と疑問に思う人も多いかもしれません。
性の多様性は、大きく3つの軸で整理すると理解しやすくなります。
・身体の性(Sex)
→ 生物学的な特徴(染色体、性器、ホルモンなど)
・性自認(Gender Identity)
→ 自分のことを「男」「女」「どちらでもない」などとどう感じているか
・性的指向(Sexual Orientation)
→ 恋愛や性愛の対象が誰なのか(異性・同性・両性・誰でもない等)
この三要素の組み合わせで、一人ひとりの「性のあり方」が決まっていきます。
まさに一人ひとりが違う“性のモザイク”なのです。
<性の自由が家族の未来を変えていく>
ここでふと、医療者としての視点に立ち返ってみます。
今まで「家族をつくる」といえば、異性間の夫婦が“自然に”子どもを産む、というのが前提でした。
けれど、多様な性のあり方が可視化されてきた今、「子どもを持ちたい」というニーズは、もはや異性愛者カップルだけのものではありません。
レズビアンカップルが子どもを望む
ゲイカップルが「親になる」未来を考える
トランスジェンダーの人が自分の遺伝子を残したいと願う
そんな希望にこたえるべく、生殖医療の最先端は今、急速に進化しています。
iPS細胞から精子や卵子をつくる研究、単為生殖(パートナーのいらない生殖)、同性間の遺伝的子どもなど、夢のような技術が現実になりつつあるのです。
<“愛のかたち”の進化が、“いのちのかたち”を変えていく>
「なぜ人は子どもを持ちたいと思うのか?」
「家族とは、遺伝か、育てることか?」
これは、LGBTQIAKの存在が問い直してくれた、現代のもっとも本質的なテーマかもしれません。
そしてそれに医療・科学が応えていく時代──
第二世代(2nd Generation)の物語は、この問いへのひとつの未来の答えとなるのです。
さあ、それではふたたび時間のたびに出かけてみましょう!