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たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


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第95話 小細工

 肥料が大量に捌けるかもしれないと思い、ゲスタスは上機嫌だ。



「この肥料は、ロートリンデン王国で話題になっておりまして、本当は小金貨5枚での販売なんですが……聖女様が相手ですからな!一袋、小金貨3枚で如何でしょう!」



 え?小金貨5枚で売ってるの?確かに私達が設定した、販売価格の小金貨1枚は、あくまでロートリンデン王国内での販売価格。ロートリンデンで肥料を仕入れた他国の商人が、自国で幾らで売ろうが文句は言えないけど、ちょっと高過ぎないか?



「この肥料は、ロートリンデンから仕入れたんですね?仕入れ先の商会は一ヶ所ですか?」


「ええそうですとも!はるばるロートリンデンから仕入れた品です。仕入先は……そうですな。一つの商会からですな」


「なるほど……その仕入先の商会名は?」


「……聖女様は妙な事を気にされるのですな。商会名は……うちの大番頭が担当している事ですので……はて、なんと言ったかな……」



 うーん……この大店が、偽物を掴まされた可能性も考えていたけど、この商会主の言動と態度を見る限りでは、レオナルドさんの言う通りクロっぽいなぁ。


 マリアは深い溜息を吐きながら、口を開いた。



「この肥料、偽物ですよ」


「んな!?……如何に聖女様といえども、今の発言は看過できませんぞ!何を根拠にそんな事を言い出すのですか!!」


「根拠ですか……たくさんあり過ぎて……説明しますが、まずは大番頭さんを呼んで頂けますか?」



 ゲスタスが渋々といった様子で大番頭を呼ぶと、怯えたような表情の男がやって来た。



「あなたが大番頭さんですか?あなたがこの肥料を、ロートリンデンから仕入れたんですね?」


「え……は……はい……」



 うん、嘘だね。


 嘘が暴かれる事を恐れているのが、ありありと現れているよ。



「そうですか。では大番頭さんはこちらへ」



 マリアが大番頭を自分の方へ呼び寄せると、大番頭の両脇に兵士がガッチリと陣取る。


 どちらが主犯か分からないけど、ゲスタスと大番頭の人は、離しておいた方が良いだろうからね。



「では、どうしてこの肥料が偽物なのか説明します。まず、この肥料の正式名称は『聖なる肥料』ですが、本物の麻袋のサイズは完全に統一されています。そしてロートリンデンの一つの商会から、3,000袋も仕入れる事は不可能です」


「ちょっ!ちょっと待って下さい聖女様!私はこれでも、この王都一の商売の達人と自負しております!麻袋のサイズもそうですが、商品の流通量など、聖女様には分からない事ばかりでしょう?さすがにイチャモンが過ぎますぞ!」


「……あなたは私が虹の聖女だと知っているようですが、私が聖女商会の商会主だとは知らないようですね」


「聖女……商会?」


「はい。この『聖なる肥料』は、聖女商会が生産・販売している商品です。特定の商会へ卸していますが、一ヶ所の商会が、他国の商人に3,000袋も販売するなんて、確実に不可能な数字なんです。ちなみに本物はこちらになります」



 マリアがそう言いながら、『次元収納』から『聖なる肥料』を10袋ほど取り出すと、周囲からどよめきが聞こえる。『次元収納魔法』に驚いた声だ。



 この麻袋を最初に作った時に、『スタンプ』の魔法で小細工をしていたんだよね。聖女商会の商品に描かれているマークには、全てこの細工がしてある。



「本物の袋に魔力を流すと、こうなります」



 マリアが本物の『聖なる肥料』の袋に魔力を流すと、袋に描かれている聖女商会のマークが、虹色に光り出した。


 兵士にお願いし、本物と偽物に同じように魔力を流してもらうが、偽物の方のマークが光る事はなかった。



「さて、このようにゲスタス商会で売られている肥料は、まったく効果の無い偽物なんですが、本当にロートリンデンから仕入れた物なんでしょうか?」


「くっ……いやいや聖女様!仮に偽物だったとして、どうして効果が無いなどと分かるのですか?それはおかしいでしょう!」



 それは確かにね。


 見ただけで効果があるか無いかなんて、普通は分からない……普通はね。



「それはねぇ、その偽物に効果が無いってぇ、私が見破ったからだよぉ」



 ぷるんと大きな胸を揺らしながら、セレスが声を上げた。



 ここ、ヘリオルス王国では、『緑の聖女』であるセレスは、マリア以上に有名である。


 そしてセレスが植物に精通した、特別なチカラを有している事は、もちろん広く知られており、あらゆる植物を一目見ただけで、効果・効能を見抜く事ができるという事は、周知の事実であった。



「な……『緑の聖女』様だと……」



 このゲスタスって人、どうやってこの場を乗り切るのか、一生懸命考えてるって顔だね。


 まぁ、これだけギャラリーが集まっているし、なんとか取り繕わないと、大変な事になっちゃうもんね。



「ねぇレオレオぉ、これってぇ、主犯はどうなっちゃうのかなぁ?」


「……セレス殿……民たちの前でその呼び方は……いえ、そうですね……聖女様の関わる商品の偽物を製造・販売、さらに聖女商会には、ロートリンデンの貴族もいると聞きました。外交問題になる事も考えられます。主犯は……極刑でしょうね」




 あらぁ……私としては、今後ヘリオルス王国で聖女商会の支部を出した時に、ゲスタス商会とは一切取引をしない!って程度で良いんだけど……どうなるゲスタス!?

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