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たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


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第93話 聖女のチカラの使い道

 セレスは目の前のテーブルに置かれてある、花瓶に手を翳しながら呟いた。



『グリーン・タイム』



 すると花瓶の中の草花がどんどん成長……いや、テーブルを覆い尽くすくらいの量と大きさに変化し、うねうねと動いている。


 マリアは見た瞬間に理解した。


 セレスが使用したこの『緑魔法』は、自分には使う事が出来ないと。



 きっとこの『緑魔法』って、聖女が持つ聖魔力を使っているから、聖魔力が無い私には使う事が出来ないんだろうね。


 あれ?魔法名は言ってたけど、詠唱はしてないよね?



「すごいですね!これ……植物を進化?変化?させて、さらに操作できるって感じなんでしょうか。それに無詠唱だったと思うんですけど、無詠唱で魔法を使用することに対して、やっぱり驚かれたりしますか?」


「ん~、変化が正しいのかなぁ。そぉそぉ!動かすことが出来るのぉ。でも時間が経つと元の状態に戻るんだけどねぇ。緑魔法って私にしか使えないからぁ、無詠唱でも聖女の特別なチカラだと思われててぇ、特に驚かれたりはしないかなぁ」



 なるほどね!他の誰も使用する事ができない属性だから、魔法ってよりも聖女のチカラだと思われてるのか。だったら無詠唱でも、そんなに驚かれないかもね。



 暫くすると、テーブルを埋め尽くしていた植物は、シュルシュルと元の状態へと戻っていった。



「緑魔法は私だけしか使えないけどぉ、後は他の聖女と同じチカラしか持ってないよぉ」


「セレスさんの緑魔法すごいですよ!そうそう!その聖女のチカラについて、聞きたかったんです」


「えぇ?マリアちゃんも同じ聖女なのにぃ?」


「はい。実は訳あって、私は聖女特有のチカラが一切使えません。豊穣・退魔・封印のチカラが無いって事です。その代わり……」



 マリアはそう言いながら、無言で手の平から火球を出した。



「「完全無詠唱魔法!?」」



「はい。私には聖女が本来持っている、聖魔力がありません。その代わり、通常の魔法を完全無詠唱で使用する事ができます」


「……こいつは驚いた!高ランク冒険者の一部にも、無詠唱魔法を使える者はいるが、完全無詠唱なんて聞いた事ないよ!これって初級火魔法の『ファイヤーボール』?いや、それにしてはもっと威力がありそうに見える……」


「これは『ファイヤーボール』なんですが、私が使用する魔法はどれも、威力や効果が上がるようなんです」


「えええぇ!マリアちゃんの方がすっごいじゃぁん!いいないいなぁ!聖女固有のチカラなんてぇ、【豊穣】以外は意味ないしねぇ」



 ん?意味がない?



「それってどういう事なんですか?」


「ん~、【退魔】と【封印】ってぇ、『()()』に対して有効なチカラらしいんだけどぉ、『悪魔』なんて何百年も現れてないんだよねぇ」



 ……『悪魔』?なにそれ?てかセレスさんのその発言、()()()になってない?大丈夫だよね?



「『悪魔』って初めて聞きました。魔族とは無関係なんでしょうか?」


「ん~、私より長生きしてるニーナが詳しいかもぉ」


「……長生きとか言うな!私だって実際に『悪魔』なんて見たことはないが、大昔に魔族は『悪魔』の仲間なんじゃないかと言われ、ひと悶着あったらしいぞ。だが最後に『悪魔』が現れた時に、他の種族と共に魔族も『悪魔』と戦い、その疑いは晴れたらしい」



 なるほど……ソウラリアには、まだまだ私の知らない歴史があるね。



 それから『悪魔』について、さらにニーナさんから色々と聞いてみたけど、これまで『悪魔』が出現したのは歴史上三回。それぞれ一体ずつ現れ、とにかく破壊の限りを尽くす存在らしい。


 そしてその『悪魔』を弱体化させるのが、聖女特有のチカラである【退魔】であり、弱り切った所で【封印】を施すらしい。



 ……ん?封印ってことは……ソウラリアのどこかに、今まで封印されてきた、三体の『悪魔』が存在してるって事だよね?嫌な予感しかしないんだけど……


 でも、もう何百年も新たな『悪魔』も現れてないって言うし、私の寿命が尽きるまで、特になにも無いだろう。無いよね?うん、ないない!



「マリアちゃん本当に良いなぁ。【豊穣】のチカラがあるせいでぇ、色んな所に遠征に行かされるんだよぉ。もっと自由な時間が欲しいよぉ~」


「そう言うなセレス。【豊穣】のチカラが無ければ、ヘリオルス王国だけでなく、グライド大陸の土地はどんどん痩せ細ってしまう」



 セレスが、たわわな胸を揺らしながらブーたれているが、確かに若い女の子なら、もっとやりたい事があったり、自由な時間が欲しいと思うのは当然だろう。



「街に帰った時に見かけたあの肥料……あれが効果のある物であれば、セレスの負担も少しは減ったのかもしれないんだがな」


「あぁ、あれねぇ。袋に聖花の紋章なんてあしらっちゃってさぁ、でも全然効果なんてないよあれぇ。あくどい商売しちゃってさぁ」



 ……え?肥料?袋に聖花の紋章?それって……



「あの……その肥料って、私の商会から売り出している、これの事でしょうか?」



 マリアは『次元収納』から、聖なる肥料を取り出して見せた。



「「『次元収納魔法』!?そしてあくどい商売してる親玉!?」」




 驚愕の声をあげる二人を見ながら、そこまでの長文を声を揃えて言えるなんて、本当に仲の良い二人なんだなぁと思うマリアであった。

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