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たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


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第84話 一流でいいんですか?

 翌日、マリアの講義を行う広場には、大勢の教師と生徒が集まっていた。



 あれ?これって……学園の教師と生徒、全員参加かい!まぁ良いけど。



「皆さんこんにちは。本日は最初の授業ですので、前半はこれから行う事の説明や、質疑応答とさせて頂きます。なぜこんな事を自分がしているのか……それを理解した上で行う方が、吸収スピードが全く違うからです。よろしいですか?」


「「「「「イエッッッサー!!」」」」」



 ……軍隊かな?



「まずはそれぞれのクラス毎に分かれてもらいます。教師の方達も、まずは教師のみで集まって下さい。さらにクラス内で剣術を専攻している生徒、魔法を専攻している生徒に分かれて下さい。ここまで大丈夫ですか?」



「「「「「イエスッッボスッ!!」」」」」



 ……気合いが入ってるってことかな?



「剣術を専攻している生徒は無手、または学園が貸し出している短杖を持ってもらいます。魔法を専攻している生徒は、木剣を持ってもらいます」



「「「「「え!?」」」」」



「そうですね……集中力のことも考えて、15分交替にしましょう。15分交替で、剣術グループは魔法グループから、魔法について教えてもらう、魔法グループは剣術グループから、剣術について教えてもらってください。ここまでで質問はありますか?」



 疑問を持ったまま進めても、余り意味がないからね。こういった事に関しては遠慮なく聞いてもらいたい。


 お、あの手を上げてる生徒は……



「サイラス君でしたね?質問をどうぞ」


「あの……僕たちは一流の剣士や魔法使いになるべく、この学園へ来ました。剣士が魔法を……魔法使いが剣術を覚える意味はあるのでしょうか?」



 尤もな疑問だね。一流を目指すのなら、一心不乱に一つのことに集中すべきだと、確かに私も思うよ。でもここに集まった生徒たちは、グライド大陸中の優秀な者たちだ。あのケンリー君だって、実際のところ素質はある。



「サイラス君の疑問は当然のものですね。一流を目指すのであれば、これまで通りのやり方で問題ないでしょう。でも勿体ないですね」


「勿体ない……?」


「はい。目指す先がただの一流なんて、勿体ないと思うんです。私が教えることは、一流ではなく、超一流へ向かうための方法です」


「「「「「ちょ!超一流!?」」」」」



 マリアの言葉を聞いた教師や生徒は、ゴクリと喉を鳴らす。



「昨日も言いましたが、ここにいる皆さんは可能性の塊です。自分で自分の可能性を狭めるのは勿体ない。剣士が戦場に出て怪我をし、回復ポーションも無い状況になったらどうします?逃げ回りますか?もし回復魔法が使えればすぐ戦線復帰できますよね。魔法使いも同じです。魔力が切れたら何も出来ない役立たずなんて思われて、悔しくありませんか?」



 生徒たちがざわざわとし始め、マリアはさらに続けた。



「攻撃魔法を駆使し、自分や仲間の傷を癒しながら、時には剣に魔法を纏わせ戦う剣士……非力な魔法使いだと侮って襲い掛かる者たちに、颯爽と抜き去ったショートソードで、剣士顔負けの剣技を揮い、時には格闘術まで見せる魔法使い……あ~、かっこいいなぁ……まるで英雄だ~なんて言われちゃうんだろうなぁ」



 その場に集まっている、教師や生徒たちの空気が変わるのが分かる。



「一流の剣士だ魔法使いだ~なんて、そんな所で満足して欲しくありません。誰もが到達できる訳なんてありませんが、目指すのは自由です。超一流の『魔剣士』を」



「「「「「魔剣士!?うおおおおお!!」」」」」



 完全に熱気ムンムンとなった場を、満足そうに眺めながらマリアはさらに続けた。



「互いに教え合う行為にも意味があります。皆さんは教えられる事には慣れていますが、教える事には慣れていませんよね?教えるという行為は、自分の技術や考え方の再確認ができる上に、教えた相手の反応や考え方など、自分には無いものを得られる機会となるのです。自分の技術が絶対だ~なんて考えず、柔軟な思考を養ってください」


「「「「「おおおおおお!」」」」」



 さらに質疑応答を続けようとしたのだが、皆早く訓練に移りたいようだったので、ここまでとなった。



 何もなく教師同士、生徒同士で教え合うなんて事になれば、プライドが邪魔をし上手くはいかなかっただろう。


 だがマリアから事前に意味を聞いていた皆は、素直に受け入れる事ができた。


 意外だったのが、生徒たちよりも教師たちの方が生き生きと、楽しそうに教え合っている事だろう。



 うんうん。教師たちは一流の実力を持ってるんだもんね。誰かに何かを教えられるなんて、久しぶりだったんじゃないかな?



「いいですか!最初から満足に剣を扱えないのは当然です!剣を握る感覚、剣を振る感覚を忘れないようにして下さい。魔法は適正の無い属性についても、しっかり学んでください!不得意属性から得たものが、得意属性に活かされることもありますよ!」



「「「「「ィエスッッマムッッ!!」」」」」



 ……どうでも良いけど私の呼び方、統一しよ?




 熱弁をふるうマリアの後ろには、直立不動でビシッと敬礼を続けるクロエがいた。

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