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たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


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第82話 変貌

 学園が休みの間、マリアとクロエは転移でオーレンへ戻り、聖女商会でマリアでないと出来ない作業を片付けていた。



「マリア殿?ヘリオルス王国の第一王子が王位を継いだと、国から報告を受けていたのだが……クロエがマリア殿がヘリオルスを滅ぼしたと言っていてね……冗談だよね?」


「クロードさん、クロエちゃんの話を真に受けたんですか?滅んでたら第一王子が王位を継げないじゃないですか。私は王城を潰しただけですよ」


「……王城を……つぶ……ハハハ、そうか!ハハハ……」


「まだエミリーちゃんには会えてないんですが、次にこっちへ戻る時には手紙の一つでも預かって来ますね」



 転移でヘリオルス王国へ戻るマリアとクロエを見送りながら、クロードはあの噂は本当だったんだ……と、マリアの規格外さを再認識するのであった。




      ───◇─◆─◇───




 この日マリア達は、学園が再開されるとの事で学園長室に呼ばれていた。



「あれ?久しぶりだねエミリーちゃん!どうして学園長室に?」


「お久しぶりですお姉さま!クロエ!学園長のご厚意で呼んで頂きましたの!」


「そうだったんだね!会えて嬉しいよ。エミリーちゃんはどのクラスでお勉強しているのかな?」


「私は初級クラスですの!闇属性の適正者は数が少ないので、学園への入学はすんなり出来るんですけど、必ず初級クラスからのスタートになるんです」



 なるほど!そういった理由があるんだね。あ……じゃあ古龍ゾンビの時にかなりの人数の闇魔法を使う人達を失ったから、もし帝国が関与してるとしたら、そういった意味でも大打撃を受けてるのかな……まぁどうでも良いけど。



「そういえば、エミリーちゃんはあの馬鹿おう……ケンリー君から嫌がらせとか受けなかった?大丈夫?」


「ケンリー?……あの不届き者のことですわね?私が天誅を下してから、特に何もありませんでしたわ。それよりもお姉さま!たった一人でヘリオルス王国を掌握してしまうなんて、さすがはお姉さまです!素敵すぎますわ!!」



 ん?あの性格のケンリー君が、エミリーちゃんに何も報復をしなかったの?解せぬ……それとエミリーちゃん?私はヘリオルス王国を掌握なんてしてないよ?ちょっと暴れただけだよ?



「お姉さまは学園の教師たちのためにいらしたのですよね?あーあ……私もまたお姉さまと鍛錬したかったですのに!」



 うーむ……プンプンしてるエミリーちゃんも良いなぁ……



「まだどうするかは何も決めていないよ。とりあえず暫くは先生方の授業方法や、エミリーちゃんたち生徒の授業風景を見させてもらうつもり。良いですよね?学園長」


「もっ!もちろんですマリア様!!もうマリア様の思うようになさってもらって!私の権限で全てを許可しますとも!!」



 それはありがたい。でもちょっと怯えているのはどうしてだろう?



 この日からマリアはクロエを伴い、初級クラス、中級クラス、上級クラス、特級クラス、全てのクラスの授業風景をじっくり見させてもらった。


 ……おや?良かった。心を壊してしまったかもと思っていたけど、それなりに強い心を持っていたようだね。



「お久しぶりですねケンリー君。()()()()()()()がありましたが、お住まいはどうしているのですか?」


「ははっ!お久しぶりですマリア先生!現在は学園の寮で生活しており、何も問題はありません!!」


「そうでしたか。それとここは中級クラスですが、ケンリー君は特級クラスだったのでは?」


「いえ!自分にはまだ特級クラスは早いと思い、諸先生方にお願いして自分に合ったクラスへ移動させて頂きました!!」


「自分自身を知ることは大切な事ですからね。そうそう!お城が無くなって、そこで働いていた従者の方達の生活は大丈夫でしょうか?もしお困りなら私が援助したいと、レオナルドさんに伝えてもらえますか?」


「大変なご慈悲をありがとう御座います!兄上……陛下が城の建て替えが済むまでの間も、十分な給金を出すと言っておられましたので、何も問題は御座いません!!」



 そっかそっか!さすがレオナルドさん。ケンリー君もすっかり心を入れ替えたようだね。



 学園長のエレノアさんに聞いたけど、授業がない時間にケンリー君は生徒一人一人、教師一人一人に謝罪行脚をしているらしい。


 そして謝罪された皆は許す許さないよりも、ケンリー君の余りの変貌ぶりに驚いているんだとか。


 うんうん。誰だって変わる事は出来るからね。間に合って良かったねケンリー君。




      ───◇─◆─◇───




「色々と見学して頂きましたけど……教師達の講師をして頂く件、どうでしょうか?」



 うーん……正直どの教師達も丁寧に分かりやすい授業をしていたし、剣や魔法の実力も一流と言って良いと思う。これまでのこの世界基準で言えばね。だから私の答えはこうだ。



「お断りします」


「ええええええ!?では……マリア様はロートリンデンに帰ってしまわれるのですか……」


「いえ、教師のみへの講師はお断りしますが、教師と生徒の講師であればお受けしますよ」


「え?それは……」


「教師達にだけ指導するなんて勿体ないです。せっかくたくさんの生徒がいるんですから、教師も生徒も関係なく、希望者には講義をしたいと思います」


「ええええええ!?そこまでの規模となりますと……マリア様へお渡しする報酬はどうすれば良いのか……」


「え?報酬なんていりませんよ?今回の件はエミリーちゃんの様子を見たかったのと、他の用事があったので、申し訳ないですがそのついでのようなものなので」




 この日から、寮で出されるエミリーの食事が豪華になった事を、マリアは何も知らない。

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