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第8話 はじめての冒険者ギルド④ 身分証ゲット

 マリアは前向きに話を進めることにした。



「まず私の事ですが、遠い異国からやって来ました。取り急ぎの目的は、この街の教会に行くことです。冒険者になるのは面白そうだなと思っているのですが、冒険者になることによって生じる、デメリットはありますか?」


「基本的に冒険者は自由なんだが、デメリットか……そう言えるのか分からんのだが、冒険者ランクは上からS、A、B、C、D、E、F、Gの八段階があり、国からの依頼や緊急性の高いクエストにS、Aランクの冒険者は強制召集が掛かる場合がある。まぁこれは滅多にない!数年に一度あるかないかだ。それとS、A、Bランクの冒険者には指名依頼が入ることがあるが、断ってもらっても問題ない。E、F、Gランクの冒険者は、30日間クエストを受注・完了させないとギルド登録を抹消され、一年間は再登録が出来ない。お前さんがもしも冒険者になるなら、俺の権限でCランクスタートにするがどうだ?」


「登録したその日にランクCにするんですか!?」



 ギルドマスターの発言にジークが異を唱えた。



「なんだ?マリアの強さはランクCには不十分だと思うのか?」


「いや違いますよ!ギルマスはバトルジャンキーだから失念してるかもしれませんが、ジン達から聞く限りでは恐らく魔獣や採取物、冒険者の基本的な事もマリアちゃんは知らないんですよ?しかもまだ幼い。そんな子をいきなりランクCになんてしたら、他の冒険者たちからやっかみも受けるでしょうし、逆にマリアちゃんが可哀想ですよ!」


「んぐぐぐ……確かにお前の方が冷静な判断が出来ているな……」



 ギルドマスターとジークがやいのやいのやっているが、Cランク冒険者とは一人前の冒険者と呼ばれる指標である。


 今日のギルド内での出来事を知っている冒険者であれば、思う所があっても文句を言う者はいないかもしれない。


 だが事情を知らない者にとっては、登録初日にランクCを与えられるなど、確実に気に食わない存在となるだろう。



 登録抹消のリスクが無い、ランクD以上が望ましいのだが、30日間も猶予があるなら、何かしらクエストを達成できるだろうと考えているマリアには、どうでも良い話である。


 むしろそんな事よりも、ギルマスとジークのやり取りを見ながら、マリアは全く別の事を考えていた。これはあの()()()()を言う場面なのでは……と。


 そう。



(お願い!私のために争わないで!)



 である。



 だがこれはあくまでも、ある程度の関係値がそれぞれにあればこその台詞なのでは?ここで私がこの台詞を言っても、私の自己満足で終わってしまう可能性が高いのでは?


 などとマリアは考えているのであった。



「分かった!マリアが冒険者になるなら、ランクEスタート!これでどうだ?」



 あ、さよなら私の、お願い!私のために争わないで! またいつの日か。



 こうしてマリアは、ランクE冒険者となった。


 冒険者登録は、発行されたギルドカードに手書きで名前を書くだけだったのだが、こっちの世界の文字はちゃんと書けるようになってて一安心。


 でもこんな商店街のポイントカードみたいなので良いのだろうか?偽造し放題では?


 異世界あるあるの便利な物じゃないのかぁ……じゃあもちろん銀行機能みたいなものは、付与されてないってことなのかな?



「あの、銀行……お金を預けたりする所って、どこへ行けば良いですか?」



 私の発言を受け、他の全員がキョトンとしている。


 なんとこの世界には、銀行のようなものは存在していないらしく、お金は完全に自分で管理する必要があるらしい。そうか……銀行がないのか……


 銀行について考えていたマリアは「あっ」と声を発すると、ジン達の前に金貨3枚を差し出した。



「これ、約束のお金です。状態が良かったようで、金貨6枚で買い取ってもらえました。なので半分の金貨3枚をお渡ししますね」


「「「「えっ!!!!」」」」


「ききききき金貨っ!?しかもささささ3枚もっ!?」



『自由の翼』のマキナが、とても良いリアクションを見せてくれる。



「ちょっと待ってマリアさん!僕達は小金貨2枚と銀貨5枚くらいの報酬のつもりでお手伝いしたんだよ!?そそ……それが金貨を3枚もなんて……」



 久しぶりにコルトの声を聞いた気がする。


『自由の翼』の面々がコクコクと頷くが、ここは譲る訳にはいかない。



「いえ、私と皆さんが交わした契約は、あの魔獣の買取り額の半分をお渡しするといった内容です。紆余曲折あってたまたま高く売れましたが、だからと言って契約を反故にすることは、絶対にあってはなりません。これは正当な報酬ですので受け取って下さい」



 面白いものを見るように「ほほぅ」と呟くギルマスに、『自由の翼』の面々が不安そうに目をやると、ギルマスはコクリと頷き、ジークは感心したような表情の後、お前ら見せびらかして盗まれたりするなよと、一言注意する。


 プレセアが震える手で金貨を手にする。どうやらプレセアは『自由の翼』の金庫番のようだ。



 さぁ、冒険者ギルドでの用事は終了!これでようやく教会に向かえる。



 こんなにも自分のペースで物事が進まないのは、マリアにとってかなり久しぶりであったが、せっかくの異世界だし、こういった状況も楽しむべきかもしれない、と思うマリアであった。

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