第67話 教皇様との会談
王城から教会までの道のりを、わざわざ馬車で送り届けてもらってしまった。
でも断らなくて正解だったね。
馬車に乗って平民街に出たら、民衆たちの大歓声に迎えられ、さながらパレードみたいになってしまった。
教会の中の一室で、エルフお爺ちゃんの教皇様とラナーさんと私、三人での会談が始まった。
「ほっほっほ。マリア殿は大人気じゃな。改めて、儂はアイリス教の教皇、アレイスター・グリーンウッドじゃ。マリア殿の事はラナーから色々と聞かされておるよ」
「改めまして、マリアです。まさか教皇様とラナーさんが王都に来ているなんて、驚いちゃいましたよ」
「ほっほっほ。早速じゃがマリア殿、冒険者ギルドから販売する魔法ポーチの件、教会は全面的に協力するので、やりたいようにやって下され」
なんと話の早いことか!ラナーさんにも教皇様にも感謝だね!
でも……なんか二人とも、モジモジしているのが気になる。
「魔法ポーチの件、本当にありがとう御座います。それよりお二人とも、何か話したい事がありそうな雰囲気ですが?」
「……マリア様……実はマリア様より伺った、女神カリナリーベル様のお姿なんですが……像にしようにも、納得できる物が作れずに悩んでいたのです。何かお知恵を頂ければと……」
「なんだ、そんな事ですかラナーさん。分かりました!」
マリアはそう答えると、『次元収納』から大量の魔鉄インゴットを取り出し、『聖なる錬金術』で魔鉄を女神カリナリーベルの姿へと錬成する。
さらに『スタンプ』の魔法でパールホワイトの色を塗り、表面保護を付与した。
「おお……おおおお!これが本当の、女神カリナリーベル様のお姿……なんと可憐で美しい……マリア殿、この像を教会へ売っては下さらぬか?」
「いいえ教皇様。聖女の私が教会に置かれる女神の像で、お金を取るなんて出来ませんよ。こちらは寄付させて頂きます。あ、これ持って帰れますか?」
教皇様は自前の魔法袋レベル2を持っているらしく、問題なく持って帰れるようだ。「教皇様ずるいです!」と興奮しているラナーさんには、私がオーレンに帰ったら教会に同じ物を持って行くと伝え、落ち着いてもらった。
魔法ポーチで教会が得られるお金よりも、この二人にとってはカリナの像の方が、よほど嬉しそうだね。
それにしてもラナーさん、私が王都に行くのに合わせて絶対に来てくれって、教皇様に何通も書簡を出したらしい。
「その日の内に何通も届くもんじゃから、儂はラナーが怖くなったぞ……ほっほっほ」
「アイリス教にとって、マリア様との出会いは、何よりも優先するべきだと判断しました。教皇様を糾弾せずに済んで、私はホッとしています」
にこやかな笑顔でそう話すラナーさん、本当に怖いね……
いや、でも魔法ポーチの件、教会側があっさりOKしてくれたのは助かる。
教会トップを動かしてくれたラナーさん、ナイスだよ!
冒険者ギルドの方は、マスター会議で可否を取るってアイザックさんが言っていたし、十人もギルドマスターが集合するんじゃあ、もう少し時間が掛かるだろう。
あ、せっかく教皇様が目の前にいるんだし、あの件も話しておこうかな……
「教皇様、まだ先の話になるんですが、魔法ポーチとは別件で、教会に協力してもらいたい事があるんですよ。実は『銀行』という機関を創設したいと思っていまして--」
マリアは構想している銀行創設に関しての話を、教皇とラナーに聞かせる。
「なんと……そのような便利な事が、可能となるのですかな!?」
「マリア様は天才ですね!さすがは虹の聖女様です!!」
「まだ必要な魔道具も製作していませんし、あくまで構想段階ですが、可能だと思っています。創設する際は、また教会に力になって欲しいのですが、如何でしょうか?」
「ほっほっほ。そのような素晴らしい話、教会が断る事はありませぬぞ。実現すれば世界が変わりますなぁ」
よしよし、良い反応でよかった!まぁこっちの世界にとって、銀行の存在は良い話だろうし、断られる事はないと思ってたけどね。
そうだ!最後にもう一つ提案してみよう。
マリアは『次元収納』から鉄のインゴットを取り出し、『聖なる錬金術』で手乗りサイズの、デフォルメ女神カリナリーベル像を錬成した。
「マリア様これは……」
「このくらいのサイズであれば、自分の部屋に女神像を祀っておくことが出来て、信者の方達も喜ぶかと思ったんですが、どうでしょうか?」
「ほっほー!これは何とも素晴らしいですな!」
「この手乗り女神像を教会から販売すれば、教会に併設されている孤児院も、多少は潤うかなと思いまして」
「教皇様!すぐにでも販売に向け動きましょう!!」
ただの販売と言ったらちょっとアレだけど、孤児院のためって言えば、躊躇う余地なんてないよね。まぁ実際のところ本当に孤児院のためだし。
後にこの手乗り女神像は、グライド大陸を中心に爆売れするのだが、発案者ということでその利益の一部が、常にマリアへと渡ることになり、相変わらずお金がどんどん集まってしまうマリアであった。




