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第7話 はじめての冒険者ギルド③ 勧誘

 冒険者ギルド内は、マリア以外の全ての人間が唖然・呆然といった様相であったが、ある人物の登場で再起動する。




 ギルドマスターの登場である。



「お前ら騒ぎは終わりだ!ガンツ!さっさとオークジェネラルの査定をして、そのお嬢ちゃんに金を渡してやれ!『オーバーカース』の二人!お前らはグレブダ連れて宿にでも帰れ!抜刀した件は既に罰を受けたと見なし、不問にしてやる。ジークと『自由の翼』、それと金を受け取ったらお嬢ちゃんも俺の部屋に来てくれ。話が聞きたい」



 見事なスキンヘッドに、ガンツに負けず劣らずの体躯。


 左頬には大きな古い切り傷があり、声の大きさも相まってなかなかの迫力である。


 ガンツと同年代だろうか。



「とりあえず俺達は先にギルマスの部屋に行ってるよ」



 ジンがマリアにそう告げると、『自由の翼』の面々とジークは、ギルドの二階へと続く階段に消える。


 なるほど、あの人がギルドマスターか。もっと早く出てきて欲しかったなと思いつつ、マリアは小さな溜息を吐いた。



 ギルマスの登場により、冒険者たちはマリアをチラチラと見つつも、大人しくなっている。


 マリアの前では、ガンツが他のギルド職員を伴ってオークジェネラルの査定をしているのだが、何度も感嘆の声をあげていた。



「こんなに状態の良いオークジェネラルなんてなかなか見れんぞ……肉の上から心臓を一撃かよ……胸に打撃による窪みがあるだけで、他は全くの無傷だ。嬢ちゃん魔石はどうする?魔石も買取りでいいのか?」


「魔石?」


「あぁ、魔石を知らねぇのか?魔石っつうのは加工して魔道具の材料になったりするんだが、魔獣や鉱山から取れるんだ。見た目も宝石っぽくて綺麗だからよ、売らずにコレクションしてる冒険者も多いって訳よ」


「魔道具ですか……なるほど。初めての魔獣討伐でしたので、今回は魔石は売らずに持ち帰らせて頂きます」



 ガンツはニカっと笑いながら「ちょっと待ってろ」と言い、オークジェネラルの身体から魔石を取り出し、カウンターの奥へと向かって行った。



「嬢ちゃんすまん!こっちへ来てくれ!」



 ガンツに声を掛けられマリアがカウンターへ向かうと、ガンツは琥珀色で人間の拳サイズのオークジェネラルの魔石と、金貨を6枚渡してきた。



「オークジェネラルの本来の買取り額は金貨4枚。魔獣全てに言えることだが、普通はどうしたって傷だらけの状態で買い取りになる。つまり傷だらけが前提の買取り額なんだ。だが嬢ちゃんの持ってきた此奴は状態が良過ぎる。これを金貨4枚で買い取っちゃあ、ギルドが儲け過ぎちまうって訳だ。だから今回は金貨6枚。問題ねぇか?」



 私はまだここの冒険者ギルドしか知らないけど、どうやらここは……少なくともこのガンツさんは、正直な仕事をしてくれるようだ。


 マリアの中で静かに好感度爆上がりである。



 魔石と金貨を受け取ると、ガンツがそのままギルドマスターの部屋の前まで案内してくれた。


 ギルマスの部屋へ通されると、正面の椅子にギルドマスターが座り、右側の三人掛けサイズの椅子に、『自由の翼』の四人がギュウギュウになりながら座り、左側の三人掛けサイズの椅子にはジークがゆったりと座っていた。


 マリアがジークの座る椅子へ腰かけると、ジークは立ち上がり頭を下げる。



「ジン達から改めて詳しく話を聞いた。マリアちゃん…でいいか?俺の不始末で危険な目に遭わせて本当にすまなかった!そして弟達を助けてくれたこと、心から感謝する!」


「ん?弟さん…?」



 ジークによると『自由の翼』のジンは同じ村出身の実の弟で、他のメンバーも子供の頃から知っている間柄とのこと。


 そう言われると、ジンとジークの顔は似てるかもしれない。


 ジークにはパーティーを組んでいる仲間がいるけど、長期休暇中で他の仲間は故郷に帰省中。


 暇そうにしていた『オーバーカース』の三人と臨時パーティーを組み、ハイオークの群れを討伐するクエストを受けたらしい。



 事前情報でハイオークは四体との話だったのでジークが二体、『オーバーカース』の三人が残り二体を相手にするつもりが、実際にはオークジェネラル一体が、ハイオーク四体を率いている群れだった。


 戦いの中で、ジークがオークジェネラルの武器を破壊することが出来たのだが、ハイオークを倒している最中にオークジェネラルが逃亡してしまったらしい。


 そう告げると、再びジークはマリアに頭を下げる。



「ええと、頭を上げて下さいジークさん。素晴らしい経験が出来て私はとても満足していますし、ジークさんがオークジェネラルの武器を壊して下さったおかげで、楽に討伐することが出来ました。私の方こそお礼を申し上げます」



 ペコリと頭を下げるマリアを見て、ギルマス、ジーク、『自由の翼』の面々は引きつった笑みを浮かべている。


 武器がどうとか関係ないのだ。


 こんな可愛らしい少女がオークジェネラルを倒すことなんて、普通は考えられないのだから。



 話を変えるべく、ギルドマスターがゴホンと咳払いを一つ。



「マリアよ。俺はここのギルドマスターのアイザックだ。冒険者同士は色々と詮索するのはマナー違反なんだが、正直お前さんが何者なのか聞きたくて仕方がない……ああいいんだ。答えたくないなら何も言わなくていい。だが一つだけ提案があるんだが……お前さん、冒険者にならないか?」



 ギルドマスターの突然の提案に、マリアは暫し思案する。


 今後どうなるか分からないけど、しばらくこの街に滞在するかもしれない。


 ギルドカードがあれば身分証として使えるし、街の外へ出掛けて帰ってきた時に、門で小銀貨5枚を払う必要がなくなる。


 クエストを受注すれば、お金を稼ぎながらこっちの世界のことも色々と体験できる……




 それもまぁ悪くないのかもしれないと考えるマリアであった。

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