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たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


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第58話 まったりとした一日

 クロードの王都邸に到着したマリアは、紅茶を飲みながらまったりしている。



 王都邸に常駐している執事やメイド達と挨拶を交わし、今はクロエ達オーレン組のメイドと、王都邸組のメイド達のキャッキャキャッキャした交流を眺めていた。


 私が気を遣わなくて良いって言ったのもあるんだろうけど、クロードさんが普段からこういった空気を許しているからだろうね。


 権力を持っても使用人達が常に笑顔でいれるよう配慮する、とても好感の持てる貴族だ。



 国王側へ私が王都に到着したと連絡を出したらしいけど、謁見はたしか四日後かな?


 本当はこれから王都散策に出掛けたいけど、クロエちゃんも旅の疲れがあるだろうし、今日はこのままゆっくりしていよう。




 マリアがソファーに腰掛けていると、部屋に騎士団長のジュラールが入って来たので、気になっている事を聞いてみた。



「ジュラールさん。スキルって誰でも持っているものなんでしょうか?」


「スキルですか?難しい質問ですな。と言うのも、自分がどんなスキルを持っているのか、隠している者がほとんどですから」



 ああそうか。スキルを知られない方が、有利に立ち回れる事もあるだろうし、何か特別なスキルを持っていたら、命を狙われる事だってありそうだもんね。



「そうなんですね。自分のスキルはステータスで確認してるんですか?」


「え?ステータスというものが何か分かりませんが、スキルはある瞬間にふと、自分がどんなスキルに目覚めたか頭の中に浮かぶんです」



 あれ?カリナが私に見せてくれたようなステータス画面って、他の皆は見れないものなの?でもまぁ、自分自身がどんなスキルを身につけたか理解できるのなら、別に問題はないのか。


 あ!もしかしてファンタジーあるあるの『鑑定』的な魔法が使えたら、他人がどんなスキルを所持しているのか、分かるかもしれないね。ただ私が読んだ書物にはそんな魔法なかったし、あるとしたら上級魔法なのかな?


 でもそれってプライバシーの侵害になっちゃうのかなぁ……




「ちなみにマリア殿、我々や冒険者のような戦いに身を置く者は、『身体強化』のスキルを会得する事が多いですよ」


「それって、勝手に覚えるスキルもあれば、環境によって覚えるスキルもあるって事でしょうか?」


「そういう事だと思います。ただし同じスキルでも、使用者によって効果は変わりますけどね」



 とても勉強になった。


 これまで読んだ書物には、スキルの事を書いてある物が無かったから、ジュラールさんがくれた情報はとても助かる。


 確認のため、相手のスキルを見抜くような、魔法やスキルがあるのか聞いてみたが、ジュラールさんの知識にはそういったものは無かった。



 少し残念に思ったけど、希望はまだある。王城の中には大量の書物が収められている部屋や、ファンタジーあるあるの禁書庫があるかもしれない!閲覧許可をもらえればスキルだったり、上級や特級の魔法知識も得られるかもしれないよね!


 こっちは多数の献上品を用意しているし、それくらいの許可はくれても良いと思うんだよなぁ。




 あ、クロエちゃんが『ナナちゃん』を所望している。


 本当に私の剣を磨くのが好きなんだね。あーあーそんな楽しそうな表情で。こんな無邪気な笑顔で剣を磨く14歳の女の子って、日本ではまず考えられない光景だよね。


 刃先で指を切ったりしないようにね?あらあら、剣身に息を吹きかけて拭き拭きするんだね?クロエちゃん可愛いなぁ。


 そういえば魔法の特訓に付き合うって約束したし、オーレンに戻ったらちゃんと実行してあげよう。



「クロエちゃんの魔法の特訓の件だけど、得意な属性とかあるのかな?」


「覚えていてくれたんですねマリア様!水魔法なら中級まで使えます!」



 え?私が言うのもなんだけど、14歳で中級魔法を使えるって、かなり凄いことなんじゃないの?もしかしてクロエちゃん天才か?



「でもそれ以外の属性は初級も怪しいくらいで……」


「水だけでも中級を使えるって凄いじゃん!それに水魔法は応用の幅が物凄く広いから、今から特訓が楽しみだね」



 書物を読む限りでは、この世界の魔法って実は、まだまだ発展途上だと思うんだよなぁ。


 水なんて使い方次第では、やりたい放題の魔法だと考えているんだけど……でも私のせいで、クロエちゃんが戦闘狂とかになっちゃったらどうしよう。


 バトルメイド……バトルメイドってなんかかっこいいな……良いかもしれない。



 でも一番は身を守るような魔法だよね!可愛いクロエちゃんの、安心安全な生活のサポートをしなくては!




 マリアはクロエの頭を優しく撫でながら、王都での一日目をゆっくりと過ごすのであった。

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