閑話 ある日の地球 祝儀
「今日も良い仕事っぷりだったな!おつかれさん」
「え!?しょっ、所長!お疲れ様っっス!!」
「あっはっは。いきなり話しかけてすまんな」
「所長に声をかけてもらうのは初めてだったので、なんか焦っちゃいました」
「うちで仕事を始めてもう三年かな?君はお嬢様の紹介でうちに来たんだろ?仕事してる様子はずっと見ていたんだよ」
「はい!そうっス!まさか自分がこんな大手の建設会社に就職できるなんて……お嬢様には本当に感謝してます」
「そういえば、どういった経緯でうちを紹介されたんだい?」
「……恥ずかしい話なんスけど……」
「ん?君が構わないなら聞かせてほしいな」
「……自分、当時は毎日バカばっかやってて、あの時もツレと改造した単車で、街中を走り回ってたんス」
「あっはっは!若い頃ならそういう事もあるな」
「ぅス。そしたら俺らの前に中学生くらいの女の子が現れて……」
「お!お嬢様の登場かな?」
「そうっス。そんでたった一言……「うるさい」って……」
「ふんふん、それで?」
「……自分ら本当に馬鹿で……ツレの一人がお嬢様に殴り掛かっちまって……」
「ほう……中学生の女の子に殴り掛かるのは駄目だねぇ。それで?」
「っス……。それで……ツレがボコボコにやられちまって……俺らただその光景を見てる事しか出来なくて……そしたら……ツレを半殺しにしたお嬢様が俺らの方を向いて……俺らもボッコボコにやられて……」
「あっはっはっは!いやすまない。でもまぁ相手が悪かったね」
「ツレの中には喧嘩自慢の奴もいたんスけど、一発で気ぃ失ってたっス……で、そのあと全員正座させられて……」
「道端でお説教されたのかい?」
「あ、いえ、どうしてこんな事をしてるんだって聞かれたっす。でも自分らも正直なんでこんな事をしてるのか……俺らみたいな半端者を雇ってくれるまともな会社なんてないし、仲間と騒ぐくらいしかやる事ないって……」
「なるほど。その当時の君たちを否定する気はないよ。若気の至りってのは誰しもあるものだからね」
「っス。そしたら、時間は有限だ!まともな会社に就職できるのなら、自分自身のために一生懸命働けるかって聞かれて……もしそんなとこがあるんなら、自分ら真面目に働くって答えたんス」
「ふむ。それがきっかけだったんだね」
「ぅス。お嬢様がその場で電話をしはじめて、そしたらすぐに軍人みたいなムキムキの男が来て……」
「ああ、田代さんが来たんだね」
「自分らどこかに攫われるのかと思いましたよ……そんで田代さんに俺らの今までのバイト経験とか、どんな仕事をしたいかとか色々と聞かれて……」
「で、田代さんが君をうちに連れて来たんだね。君の当時の友人達も、みんなうちの関連会社で頑張ってるようだね」
「はい!全部お嬢様や田代さんのおかげっス!こんな自分も、来月には一児の父になるなんて……自分でも信じられないっスよ」
「それは君が頑張った結果さ。そうそう、実はその田代さんから預かった物があってね」
「田代さんから?え?なんスかその分厚い封筒……え!?これ……」
「お嬢様からのご祝儀だろうね。それと田代さんから、お嬢様の言葉も預かっているよ」
「お!お嬢様はなんて!?」
『時間は有限、これからは自分自身だけじゃなく、家族と幸せになるために頑張ってください』
「だとさ。君の結婚のこともお子さんのことも、お嬢様は知ってたんだろうね」
「お嬢様……所長、お嬢様って本当に何者なんスか……?」
「あっはっは!私も詳しくは知らないんだよ。それにね……」
「……それに?」
「知ってしまったら、消されるかもしれない……なんてね!」
「……冗談に聞こえないんスけど……」
「まぁ、我々にとって女神のようなお人だよ」
「っスね……めちゃくちゃ喧嘩の強い女神っスね」
「せっかくだ!このまま一緒に飲みに行かないか?」
「はいっス!お供しますっス!あ、近くのガールズバーなんてどうスか?」
「あそこか!?でも君……大丈夫なのかい?」
「実はあの店で自分の嫁の妹が働いてるんス。嫁公認で飲みに行けるんで大丈夫っス!」
「それなら安心だ。じゃあタイムカードを押して行こうか」
「はいっス!」
「「いざ!『ガールズバー S E I J O 』へ!!」」




