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たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


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第56話 呪われた地② 新魔法とそこに存在したもの

 マリアに不安はなかった。



 正確にはこの異世界ソウラリアでも、謎とされているような場所へ入れるかもしれない……そのワクワクが不安に勝っているのだ。


 そしてマリアは新しいオリジナル魔法を行使した。



『サンクチュアリ』



 そう呟くと、マリアを中心に半径10mほどの、白色とも金色とも感じるような光が広がった。


 高さは5mほどある円柱状の光の領域。その光は美しいが決して眩しくはなく、不思議な光景だった。


 その光の中はまさに『聖域』である。



 長時間ずっと黒い霧の呪いを観察していたマリアは、その余りにも広範囲の呪いを解呪するのは難しいと見て、自分を呪いから守る領域を創り出すことに切り替え、黒い霧の内部を探索することにしたのである。


 マリアは『次元収納』からスマホを取り出すと、現在の時間を確認する。



(今は……こっちの時間だと午前九時頃だね。夜までには帰らないと、クロエちゃんがぷんぷんになっちゃうからなぁ)



 時間を確認したマリアはスマホを『次元収納』へと仕舞った。



 マリアが歩き出すと、その展開された『聖域』も同時に動く。


 展開された光が黒い霧に触れると、霧は光の中に侵入できず奥へと追いやられるのが見えた。



 よし!この魔法を使用した状態なら、呪いの影響を受けずに進めそうだね。


 そうしてマリアと展開した『聖域』がすっぽりと黒い霧の中に入ると、あらゆる方向から黒い手が襲い掛かってきた。


 黒い手は光に触れると一瞬で霧散していくが、知能がある訳ではないのか、何本も何本も諦めずに同様の行為を繰り返してきた。



 マリアは黒い手のことを気にするのはやめ、『サーチ』を同時使用し辺りを探索しながら進む。


 辺りには何も感じられない。


 草木は確認できるが、それ以外の生物の反応は一切ない。


 この黒い霧の中に入れば即座に喰われてしまうのだろうから、当然のことなのだろう。



 マリアはペースを上げて前へと進みだす。


 この黒い霧は外側から見て相当広範囲に拡がっていたため、普通に歩いていたのでは内部を十分に探索するのに、何日掛かるか分からない。


 魔獣は存在しないし、襲ってくる黒い手はすでに無害と言っても良い状況のため、マリアはスキル『聖なる身体操作』で全身を強化し、木や岩にぶつからないスピードで移動を開始した。


 本当は全力で走りたいのだが、黒い霧のせいで『聖域』の範囲外は視界が悪いのだ。



 一体どれほどの時間走り続けたのだろう。


 出来る限り広範囲を探索したいので、マリアは常に直進していた訳ではないし、ほぼ景色も変わらずずっと霧の中にいるため、時間感覚が狂ってしまう。



 マリアがスマホで時間を確認しようと考えた時だった。


 展開していた『サーチ』に、黒い霧の中には存在しないと思っていた、魔獣の反応を検知したのである。


 だがその反応は、これまで見た事もない巨大な反応だった。


 この霧に奥にとてつもない大きさの魔獣がいる。


 魔獣はこの黒い霧の呪いにより喰われてしまうはずであるが、そんな中に魔獣が存在するという事は、その魔獣こそがこの呪いの原因である可能性が非常に高い。



 マリアの『サーチ』は脳内に探知した魔獣等の名前が表示されるが、その巨大な魔獣は『unknown』と表示されていた。


 これはつまり、まだマリアがこちらの世界で情報を得ていない魔獣であるという意味だ。


 立ち止まったマリアはスマホで時間を確認すると、溜息交じりに呟いた。



「帰ろ。もう夜の七時だ。これ以上遅くなったらクロエちゃんが怖い……」



 本当は巨大な魔獣が気になって仕方がないのだが、もし近くまで行ったら戦闘になる可能性も考えられる。


 あれほどの反応を感じる魔獣をすぐ倒せるとは思えないし、可愛いクロエを怒らせたり悲しませたりもしたくない。


 マリアは近くにある大木に『スタンプ』で聖女商会の印を描いた。


 次に来る時は『サンクチュアリ』を使用した状態で、この大木の印をイメージして転移すれば良いだけだ。



 しかし私が見た地図には『呪われた地』に指定されている土地すべてが『unknown』みたいな表記だったけど、私みたいな特別な探索魔法を使える人があの魔獣を検知して、それで『unknown』って地図に書いた訳じゃないよね?


 まぁそんな事はどうでも良いし、考えても無駄だよね。



 マリアは巨大な魔獣との邂逅を先延ばしし、クロエの待つ伯爵邸へと帰還した。



 王都へ向けて出発するまでまだ少し時間はあるけど、地球での用事もあるからあの大きな魔獣の件は王都から戻ってからだね。


 ずっと昔からあそこにいるんだろうし、ちょっと後でも急にいなくなるなんて事はないだろうしね。




      ───◇─◆─◇───




 この後、マリアは転移で地球へと戻り、重要な新薬の件も含め様々な案件を片付けた。


 何故か大統領の傍にいた人が号泣していたけど、もしかして新薬を待ち望んでいたのだろうか?もしも役立てたのなら嬉しいな。


 時間的には数日間を要したのだが、毎晩転移で伯爵邸へと帰って寝ていたため、クロエに怒られる事はなかった。



「私が不在の間ありがとね田代。新薬の件も終わったし、次の大きな案件はもう少し先だね。また私は暫く出掛けるけど、このメモに書いてある物を二日以内に用意できるかな?」


「お嬢様を失望させない仕事をするのが私の役目ですから。こちらのメモにある物を二日以内に用意ですね……目算で数千万円は掛かると思いますが……」


「問題ないわ。集めた物は全てうちの所有する地下倉庫に入れておいて。生ものは冷蔵室の方によろしくね」




 こうしてマリアは地球で集めた大量の物資を『次元収納』へと仕舞い、異世界ソウラリアへと戻るのであった。

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