表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/116

第55話 呪われた地① 黒い霧

 クロエ成分を思う存分摂取したマリアは、気になっていた『呪われた地』へ赴くことを決めた。



 夜には帰るからと伝え、クロエも素直にお留守番を了解してくれた。


 マリアは例の『裏技』で、『呪われた地』へ向けどんどん移動していくと、いつの間にか伯爵領を出ていたらしく、遠くの方に黒いモヤモヤが拡がっているのが目に入った。


 それは本当に広範囲に拡がる黒い霧のようで、高さも30mほどはあるかもしれない。



 しかし本当に人の手が入っていないのだろう。土地は荒れ放題で、生えている草も背が高い。


 マリアは黒い霧の近くまで来たが、一旦その歩みを止めた。危険すぎると直感が言っているのだ。



(クロードさんは霧の中に入ると昏倒するって言ってたけど、アイザックさんは霧に喰われると言ってたね。これ以上近づくのは得策じゃないかな)


《マスターに同意。あの霧自体が強力な呪いで構成されていると推定》


(『叡智』さんもそう思うなら本当に危険なんだろうね。でも霧っていう割には、風が吹いていても全く動かないのは何故だろう?)


《恐らく霧状の()()()()()のようなものかと》



 なるほど、結界のようなものか。私もまだ知識のない、上級の解呪魔法でも無意味って言ってたし、さてどうしたものか……


 マリアが思案していると、遠くに魔獣の存在を確認した。



 あの魔獣、あれはオーガだね。ちょっと黒い霧に近づきすぎじゃない?いや……少し様子を見てみようか!


 マリアは静かにオーガへと近づくと、背の高い草に身を隠し様子を伺う。スキル『聖なる身体操作』で自分の体臭をゼロにしているため、オーガはマリアの存在に気が付く様子はなかった。

(いやそもそも私臭くなんてないし……)



 オーガは餌でも探しているのだろう。黒い霧の近くをウロウロとし、オーガの手が黒い霧に触れた瞬間のことだった。


 霧の中から『真っ黒い手』のようなものが何本も現れ、オーガは抵抗虚しく黒い霧の中へと引きずり込まれる。どうやらオーガにはあの黒い手が()()()()()()ようだ。


 霧に飲まれたオーガが中で暴れているのが見えるが、オーガの体がどんどん崩れていく。オーガは自分の身に何が起きているのか分からないのだろう。悲痛な叫びを残し、オーガは消滅してしまった……文字通り骨も残らず……魔石すら残らず。



 え……ガチでヤバいじゃんあれ……あれは黒い霧がオーガを吸収したってことなのかな?あれがアイザックさんが言ってた、霧に喰われるって事か……


 たしかにあんなのに中級光魔法の『ピュリフィケーション』をかけても、浄化なんて無理だろうね。そもそも浄化じゃなくて『解呪』の魔法が必要なのかな。


 マリアは書物で得た知識で、中級解呪魔法『ディスペル』を使用することは多分できる。


 さらにマリアの使用する魔法は、スキル『聖なる魔力操作』により通常よりも強力になっているのだが、それでもディスペルでは無理だろうと感じるほど、目の前の呪いは尋常ではなかった。



 今の自分ではどうしようもないと認めつつ、マリアは黒い霧から目を離そうとはしない。


 観察し、これまでの知識にない目の前の事象を、脳に焼き付けているのだ。


 そしてマリアはこの日から、黒い霧やそれに喰われる魔獣を観察し転移で帰る、翌朝また黒い霧の近くまで転移し観察する……といった行為を数日続けた。


 やはり魔獣にはあの黒い手を認識できていないようだ。



 そして黒い霧の前に立ったある日。



《マスター、もう十分かと推測》


(うん!何故か私にはあの黒い手が認識できたけど、あれが見えなかったらもっと時間が掛かってたね)


《現段階で成功確率94%です》


(それだけあれば大丈夫そうだね。じゃあいくよ!)



 マリアは今日まで、ただ黒い霧を観察していた訳ではない。地球で暮らしていた頃も映画や漫画、それ以外の様々な媒体で『呪い』というワードは目にしてきたが、自分が見聞きしてきた呪いと、目の前の黒い霧による呪いが余りにも乖離(かいり)していたため、黒い霧に対して完全に呪いだと認識・納得するのに時間が必要だったのだ。


 さらにマリアは同時進行で、黒い霧の呪いに対抗できるオリジナル魔法についても考えていた。



《マスターの持つ『解呪・御祓い』等の知識と『ディスペル』『ピュリフィケーション』を『創造神の加護』の力で融合します》



 マリアの頭の中で響く『叡智』さんの声を聞きながら、マリアは目を閉じ集中している。


 すると『スタンプ』で隠していた、左手の甲にある『聖花の紋章』が七色に輝き出した。



 徐々にマリアの頭の中に、初めて見る魔法陣が構築されていく。


 これまで幾つかオリジナル魔法を創ってきたマリアだが、魔法陣の構築がこれまでで最も遅いことから、相当強力且つ難しい魔法を創っている事が分かる。



 マリアの聖花の紋章の光が徐々に落ちついていくのと同時に、脳内で描かれていた魔法陣も完成に至った。


 静かに目を開けたマリアは考える。


 私の考える魔法は完成したね。後はこの魔法が目の前の呪いに本当に対抗出来るのか、自分の身で体験するだけだ。




 意を決したマリアは、新しいオリジナル魔法を行使した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ