表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/116

第54話 裏技で視察

『魔法ポーチ』の件は一通り話がまとまり、ラナーさんは急いでアイリス教の教皇様に手紙を書くとかで帰っていった。




 私はその場に残り、アイザックさんにここの隣の領?である『呪われた地』について情報がないのか尋ねたのだが、危険過ぎて近づく者がほとんどいないため、詳しい情報は何も知らないとの事だった。


 でも一つだけ、アイザックさんは気になる事を言っていたんだよね。



「あそこは広範囲に黒い霧が広がっているんだが、絶対にその霧に近づくなよ?あの霧は生きてる……そして近づいた者を……喰う」



 生きてる霧に食べられる!?そんなファンタジーでしか体験できないような話を聞いちゃったら、やっぱり行きたくなっちゃうよね……


 国王に会うためにこの伯爵領を出発するまでまだ時間はあるし……ちょっと行ってみちゃおうかな?


 献上品はもう準備できているし、思いの外時間があるんだよなぁ。あ、一度地球に戻るからその時間は確保しておかないとね。



 う~~~ん悩むなぁ。


『呪われた地』にすぐにでも行きたいんだけど、もう一つ自分の目で見ておきたい事があるんだよね。


 それは伯爵領内で流通している『聖なる肥料』の効果を、ちゃんと自分自身で見ておきたいってことだ。



 一応効果はすごく出てるって、取引先の商会の人達やクロードさんからは聞いているけど、百聞は一見に如かずだからね。


 それに私はまだ、伯爵領内の街ってここしか知らない。しかもついさっきまでこの街の名前すら知らなかった……誰にも聞いてなかった私が悪いんだけどね。


 私の今いるこの街の名前は、領都『オーレン』だとアイザックさんから聞いた。



 よし!まずは明日からこの伯爵領内の農地を見て回ろう!肥料の効果がしっかりと見て取れるなら、大手を振って国王に会いに行けるしね!




      ───◇─◆─◇───




 と言う訳で伯爵邸に帰って、クロードさんやクロエちゃんにこの事を伝えたんだけど、馬車だと時間が掛かり過ぎるから、私一人で行くと提案したところ……


 またもやお留守番となってしまうクロエちゃんに、大反対されてしまった。


 そんなに悲しそうな顔をしないで!私には『()()』があるから、そんなに長い間不在にはしないよ……とは言えないのが辛い。


 私の『裏技』は転移を利用する方法だからね……私が転移できる事はまだ誰も知らないし。


 それにしても、床の上で大の字になりながら抗議するクロエちゃんは本当に可愛いなぁ。



 私はなぜかクロエちゃんに甘い。でも全く嫌な気がしない。


 長い時間の交渉の末、今度私が魔法の特訓に付き合う……という条件でなんとか了解を得られた。


 メイドに了解を取らなきゃいけない聖女って……でも私はクロエちゃんに甘々だから良いのだ。



 ちょっと出かける事を、ドドガさんやレオナさんにも伝えておかなきゃね。




      ───◇─◆─◇───




 翌日、領都オーレンを出たマリアは人気のない所まで移動した後、スキル『聖なる身体操作』で視力を最大限まで強化。そして視界に入っている一番遠い木の上に転移!


 木の上なら転移先の周囲に人がいても、見つかりにくいだろうからね。一応、探索魔法『サーチ』で周囲に人や魔獣がいないか検知しながら移動するけど、私のサーチでも半径1,000mくらいしか検知出来ないから念のためだ。


 この移動方法なら農地の状況を視認しつつ、馬車なんか使うよりもハイスピードで領内を見て回れるからね。



 村や街にも立ち寄って、作物の流通状況はチェックしておいた方がいいかな。魔獣に関しては基本的にスルーでいこう。あ……でも『ナナイロ』の試し斬りはしたい……いや今は領内の視察優先だね。



 マリアは順調に木の上から木の上へ転移を繰り返し、『聖なる肥料』の効果がしっかりと感じられる農地を確認していく。


 途中で見つけた村や街には全て立ち寄り、肉屋や八百屋、露店でいつものように「お店と他のお客さんが困らない量を全て売って下さい」と言い、出来る限りお金を落としながら移動する。



 教会や孤児院を見つけると、それぞれ金貨5枚を寄付しすぐに立ち去った。孤児院の環境は思いの外良さそうな事から、クロードはしっかり援助金を出すよう、各街の代官に言っているのだろう。


 領都オーレンから近い街や村には、すでにマリアが改良した街灯も普及し始めているようだし、治安向上も着実に進んでいそうだ。


 面倒ごとに巻き込まれそうな予感がしたので、立ち寄った街で冒険者ギルドを見つけても中に入ることは避けた。


 視察途中で二度、一般的な宿屋に泊まったのだが、オーレンの『星空亭』で出される料理が一番美味しいと思うマリアであった。



 うむうむ。隣領ギリギリの所までしっかりと見たけど、伯爵領内の農地にはしっかりと肥料が行き渡っているようだね。


 自分の目で確かめることが出来たし、これで伯爵領内であれば、ほぼどこでも転移で行くことが出来るようになった。



 こうしてマリアの伯爵領視察は、二泊三日で無事に終わりを告げた。


 本当はすぐに『呪われた地』に向け出掛けたいマリアであったが、帰宅後二日間はクロエを目いっぱい可愛がる日とする。




 表向きはクロエのためかのように見えるが、実は自分がクロエ成分を摂取したいだけのマリアであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ