表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/115

第53話 限定商品② たたき台

 自分のお役目は一体なんなのかと、ラナーが身を乗り出しながら待っている。



「悲しい事ではありますが、このポーチが()()として回収される場合もあると思います。そしてその遺品が家族の手に渡ったとしても、中身を確認できないのでは残された家族が可哀想です」



 もしもポーチを遺していった冒険者に家族がいたら、家族を支える大黒柱だったら、金庫代わりに使っていたら……中身は当然残された家族の手に渡るべきだ。


 だから私はカリナに()()()をお願いをした。



「残された家族の誰かが遺品のポーチを持ち、教会の水晶に触れながら自分は家族である、犯罪行為によってこのポーチを入手した訳じゃないと宣言することにより、そのポーチはその家族へと持ち主登録が変更されます。カリナに了承は得ているので、教会側が水晶の使用について許可をくれれば問題ありません」


「なんと……それが先ほどカリナリーベル様に許可を頂いた内容だったのですね!素晴らしい!」


「ん?え?先ほどカリナリーベル様に許可って、どういう事なんだラナー殿」


「アイザック様、虹の聖女マリア様は女神カリナリーベル様と、教会の水晶を通して直接お会いされているのです。女神の名に誓い、私ラナーが事実であると保証します!」


「なんてこった……いや、女神様の許可付きなんて絶対にこの件は通すぞ!安心しろマリア!」



 うむうむ。嘘の吐けない教会で宣言することが、犯罪防止にもなるからね。それにあの教会の水晶って、もう少し役目があっても良いと思う。聖女のための物じゃ出番が少なすぎるでしょ。


 教会側にはラナーさんから教皇様に、すぐ書簡を送ってもらう流れになった。


 教皇様が断ったら、女神カリナリーベル様への反逆と捉え断罪しますなんて言い出すから、ラナーさんは怒らせちゃいけない人なのかもしれない。



 ここからはギルドと教会の上層部の判断を早めるために、三人で『魔法ポーチ』の販売価格など、たたき台について話し合った。



 まず『魔法ポーチ』の販売価格は金貨50枚。


 聖女商会からギルドに卸し、ギルドから冒険者への販売となるが、冒険者だからと言って誰でも購入できる訳ではない。


 購入できるのはランクC以上の冒険者から。これは低いランクでも購入できてしまうと、商人が従業員等を使い冒険者登録させ、『魔法ポーチ』を買い漁る可能性があるからだ。



 また、冒険者へポーチが一つ売れる度に、ギルドから教会へ金貨5枚が支払われる。事前に対価を渡しておくから、遺族がポーチを持って来た場合はよろしくねって事だ。


 さらに遺族が教会でポーチの開封を行った場合、中身の一割相当の金額を教会へ寄付してもらう。もともと聖女専用の水晶を使用させてもらう訳だし、このくらいは教会へ収めてもらわないとね。



 本当はもっとランクの低い冒険者から、価格ももっと安くと提案したのだが、ランクの低い内から楽をさせ過ぎると、逆に将来危険な目に遭う可能性がある……価格を安くしすぎると性能との乖離(かいり)が大きすぎる……という事で却下されてしまった。


 それに真面目に頑張れば手の届きそうな価格にしておけば、一つの目標にもなるし良いだろうと……『魔法ポーチ』を買うために無茶をして……なんてならなければ良いけどね。



 教会側はほぼ何もせずとも勝手にお金が入ってくるし、何より女神カリナリーベル様のお墨付きって訳だから問題はなさそう。


 問題があるとすれば、大陸中の冒険者ギルドにどうやって『魔法ポーチ』を運ぶかだよね。


 商人には売らないのに、商人に運んでくれとは言えないもんね。



「運搬の件なら問題ないぞ。冒険者ギルドには専門の運搬部隊があるからな」


「え?そんな部隊があったんですね」


「余り知られてはいない事でな。他人に任せられないギルドの重要な物を運ぶ部隊で、御者から護衛まで全て元冒険者ランクB以上の専任の者達が行う」



 なるほど!冒険者を引退した人達のための仕事も用意してるんだ。


 魔獣の討伐に比べたら安全だろうし、体力が落ちた者でも御者なら十分働けるもんね。冒険者ギルドって冒険者たちのことをちゃんと考えてるんだなぁ。



 それにしてもアイザックさんもラナーさんも、すでにこの案件が通ったかのように盛り上がってるけど、私が考える便利なものはまだまだこんなものじゃないんだよなぁ。



「お二人とも、この件よろしくお願いしますね。この件の次は、冒険者や教会だけじゃなく、()()()()()()()()()()()()()()を提供する予定ですから……」




 そう微笑むマリアを見つめ、アイザックとラナーは静かにコクリと頷くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ