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たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


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第52話 限定商品① 性能

 アイザックとラナー、二人の対照的な反応を楽しみつつ、マリアは『次元収納』から()()()を取り出し、二人の前へ出した。




「マリアよ……この小さなバッグは?」


「私が作りました。『魔法ポーチ』です」


「『魔法ポーチ』?まさか……魔法袋のような物か!?」


「その通りです。魔法袋よりも容量は少ないですけど、そうですね……冒険者の方達が使っている大型のリュック、あれの大体四倍弱くらいの容量です」



 冒険者が使用するリュックで大型となると、その容量は80リットル程となるため、マリアが製作した『魔法ポーチ』は300リットル程の容量となる。



「なっ!……4~5人パーティー全員分の荷物が入ってしまうぞ!?」


「さすがはマリア様です!これが虹の聖女様のお力……」



 マリアは聖女商会での商品製作が忙しかったため、余り冒険者ギルドでクエストを受けていないが、本で読んだ知識ではこの世界には本当に大量の魔獣が存在する。当然討伐の依頼が冒険者ギルドに多数寄せられるが、それに伴い冒険者の死傷者もかなり多いのだ。


 その原因の一端が、荷物問題である。


 大型のリュックを背負ったままでは実力を出し切れないので、魔獣を前にした場合その場でリュックを地面に投げ捨てるが、その際に隙が生まれるのは当然であるし、逆に身軽にするためにリュックを持たず魔獣討伐に赴き、ポーション類をほとんど持っていなかったため、傷を癒せずそのまま……なんて事がけっこうあるらしいのだ。



 このままの状況があと十数年も続けば、冒険者の成り手がいなくなりそのうち魔獣に数で押され、この世界は滅茶苦茶になってしまうことだろう。


 と言う訳でマリアが冒険者のために製作したのが『魔法ポーチ』である。



「成程な……マリアが冒険者の事を思ってこれを作ってくれたのは理解した。だがそれがどうして悪巧みになるんだ?」


「悪巧みは少し言い過ぎかもしれませんが……このポーチは基本的に()()()()()()()だからです。冒険者以外、例えば商人等への販売は一切しません」


「そうか。多くの荷を運びたい商人達からすれば、このポーチを大量に確保したい……だが商人には売ってもらえないとなると……あいつらからすると、今の俺達の話は悪巧みになっちまうかもな」


「もしも普通に売りだせば、力ある商人がこのポーチを買い占めてしまう可能性がある……そういう事ですねマリア様」



 ラナーさんの言う通り。冒険者のために作ったのに、その冒険者の手に渡らなければ意味がない。



 と、ここまでは良い。



 まずはこの『魔法ポーチ』を、このグライド大陸にある全ての冒険者ギルドで取り扱ってくれるかだ。仮に全てのギルド支部じゃなくても、主要都市にあるギルドで扱ってもらえるならそれでも良い。


 私がこっちの書物で得た知識では、冒険者ギルドは完全な独立組織。国などに今回のことを提案しても余り意味がないのだ。一部国からの強制依頼があるものの、余りにも無謀な依頼等についてはギルドが突っぱねる事も出来るらしい。


 だから今回の件は、冒険者ギルド上層部と交渉する必要があるのだ。



「俺からするとこんな有難い話はないが……正式な()()()()()()で可否を取る事になるだろうな」


「マスター会議?」


「そうだ。グライド大陸の数ある冒険者ギルドの中で、選出された十人のギルドマスターによる会議だ。ギルド全体にとって重要な案件は必ずこの会議での可否を取る」


「ではまずその十人のギルドマスターの誰かと接触が必要だという事ですか……」



 アイザックはこの場で初めてニヤリとした笑顔を見せた。



「マリアよ。俺もその十人の内の一人なんだよ」


「え?王都のマスターでもないのにですか?」


「場所は関係ないんだよ!なんなら俺より辺境の地にいる奴だっているんだぞ!この十人は自分で担当する場所を決める事が出来るからな。自分の出身とかで勤務地を選ぶ奴もいるって訳だ」



 そういった理由があるんだね。


 この件についてはアイザックさんが「俺に任せろ!必ず通す!」と言ってくれてるし、このままお任せしちゃおう。


 でもまさかアイザックさんがそんな重要な立場の人だったなんて、私ってかなりラッキーなのかもしれない。それとも女神のお導きってやつかな?



「マリア様……今回の件と教会はどんな繋がりがあるのでしょうか?」



 おっとそうだったよね。私とアイザックさんばかり話しちゃってたけど、教会にも重要な役割があるんだよね。



「その件を話す前に『魔法ポーチ』の詳しい性能をお話させて下さい」



 バッグ中央に聖女商会のマークが描かれているこのポーチは横15cm、縦10cmほどのサイズで、裏にベルトループがあるため腰に付ける事もできるし、両サイド上部にある魔鉄製の輪に革紐などを通せば、ショルダーポーチとしても使える。


 購入時に自分の魔力を三十秒ほど流すと、バッグの裏に魔力登録した者の名前が刻み込まれ専用ポーチとなり、第三者が使用することが出来なくなる。盗難防止になるしね。


 ただし第三者でも二人まで、魔力を三十秒ほど流すとその二人も24時間だけポーチを使用する事が出来る。これはクエスト中にパーティー全員分の荷物を入れていた者に何かあった場合、ポーチの中身が誰にも取り出せないといった事を防ぐための機能だ。


 マリアの『次元収納』のように時間停止の機能は無い。と言うか今回使用したワイバーン亜種の素材では、時間停止の付与には耐えられない。



「よ……容量以外の点では魔法袋よりも高性能じゃないか……」


「容量が少ない分ほかで頑張りました。そしてここから話すことが教会が関わることになります」




 ラナーは虹の聖女マリアが起こす奇跡の続きを、目を輝かせながら待っていた。

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