第48話 マリアの武器① 誓い
クロードから聞いた『呪われた地』に興味津々のマリアであったが、あの日から暫くの間は、レオナと一緒に『基礎化粧品』の量産に取り掛かっていた。
各商会へ卸す条件として、化粧品や容器の材料をこの街以外から集めて来て欲しいと伝えたところ、四商会とも即座に行動に移しどんどん材料を持って来たからである。
こうなったらマリア達もせっせと化粧品を作るしかないので、フル稼働で働いた。
これ国内全てに販売となったら、さすがに人を雇わないとだな……
そして暫くの後、四商会による領内での『基礎化粧品』の販売がスタートしたのだが、やはりと言うべきか、初日から売れまくったらしい。未だにこの街でも新規客が毎日来るってレオナさんが言ってたし、みんな美容に飢えてたんだね。
ようやく落ち着いた。
報告では『聖なる肥料』で実った作物も、どんどん収穫されているらしい。うんうん素晴らしいことだ。
さて、明日はちょっと出かけないとな……
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各商品の製作が落ち着いたある日、早朝からマリアはクロードの所有する鉱山へと来ていた。洗濯機を作るための魔鉄の在庫が無くなりそうだからである。
近くに鉱員の姿は見えないが、明らかに最近掘り出されたであろう、新たな土の山があちらこちらにある。
オリハルコンがとれたとクロードさんに報告したから、きっとその後で鉱員にまた掘らせたんだろうね。でもクロードさんの様子を見る限り、オリハルコンはとれなかったんだろうなぁ。
でもこの土の山にはオリハルコンもそうだけど、超細かい様々な鉱物が含まれてるんだよねぇ……勿体ない勿体ない。
マリアは例のごとく、放置された新たな土の山から『聖なる錬金術』で錬成を進めていった。
本日の成果は以下の通りである。
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鉄:インゴット×162本
魔鉄:インゴット×105本
銀:インゴット×61本
金:インゴット×13本
ミスリル:インゴット×6本
オリハルコン:インゴット×1本
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この前錬成した時にキロバーに満たなかったものを合わせて、の成果だ。
前回よりも少ないけど、目的の魔鉄は手に入れたし十分だね。
こうして意気揚々と帰宅するマリアであった。
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「なに?儂の鍛冶道具を使わせてほしいって、いったい何を作るつもりなんじゃ?」
帰宅したマリアはドドガの工房へと来ていた。
「私専用の武器を作ろうと思いまして。この街の武具屋さんも見に行ったりはしたんですけど、どうもピンとくる物が無かったんですよね」
「ええぞ!儂もマリアがどんな武器を作るのか見てみたいからな!で素材は何を使うんじゃ?」
素材はとりあえずこれを!と言いながらマリアは『次元収納』からミスリルのインゴットを取り出した。
「ミスリルか!マリアはワイバーン亜種を屠っちまうんじゃから、それくらいのレベルの物は持つべきじゃな」
鍛冶と錬金術の組み合わせは、ドドガさんが魔道具を製作している所を見ていたから、私にも出来るはずだ。
マリアはドドガの一連の仕事を思い返しながら、ミスリルを自分の考える姿へと形成していく。
炉の熱を感じ、ハンマーを揮い、魔力を流し込む……16歳の女の子がする作業とは思えないのだが、マリアは意外と楽しいものだなと感じていた。
そして約一時間後……ミスリル製のロングソードが完成した。
見た目は華美な装飾などもなく一般的なロングソードだが、ミスリル特有の青白い輝きが目を惹く。
マリアは完成したロングソードをビュンビュンと何度か振ると、剣に付与魔法を施していった。
「初めての作品としては、まぁこんなものですかね」
「いや……たった一時間かそこらでミスリルの剣を鍛えられる職人なんて、他におらんぞ!それに何か付与を施しておったようじゃが?」
「切れ味向上・自動修復・素材強化を付与してみました」
「ブッ!!マリアよ……そりゃもう国宝レベルじゃぞ……しかしマリアが使うにしては、ちぃとばかしデカくないか?」
「この程度で国宝になっちゃうんですか?初めての剣作りだったので、練習として普通のロングソードにしてみたんです。なので次が本番です」
マリアはそう言うと、ミスリルのロングソードを『次元収納』に仕舞い、入れ替わりで本番用のあの素材を取り出した。
ゴトリと置かれた数本のインゴットを目にし、ドドガは呼吸を止めるほど硬直してしまう。
目の前にあるのは、伝説の鉱物とさえ言われる物に特徴がそっくりなのだ。
いや間違いないだろう。
ドワーフの中でも希少種とされる、グレートドワーフのドドガだが、昔ドドガは師匠とも呼べる錬金鍛冶師から、一度だけ小石程度の『ソレ』を見せてもらった事があるのだ。
「マ……マリアよ……儂の勘違いでなければじゃが……それは……」
「これですか?オリハルコンですよ」
(やっぱりぃぃぃぃぃぃいい!マリアの『次元収納』はビックリ箱かい!いやもう国の宝物庫並みじゃろ!!)
ドドガは何とか声をあげずに、頭の中でツッコミまくる事に成功していた。
「そうだ!鍛冶道具を貸してもらったお礼に、一本ドドガさんに差し上げますね」
ニコリと微笑みながら伝説の鉱物を差し出すマリアを前に、この日ドドガは誓うのだった。
「儂、一生マリアについてく!」




