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第5話 はじめての冒険者ギルド① 魔獣の正体

 驚く『自由の翼』の面々を前に、彼らの持ち物であろう木製のリヤカーをチラリと見やり、マリアは交渉を開始する。



「手持ちがあるのであれば、街へ入るための小銀貨5枚を私にいま頂けませんか?そしてそのリヤカーにハイオークを載せて、運んで欲しいのです。そして一緒にハイオークを売りに行って下さい。その場で売れた金額の半分をお渡しします。如何でしょう?」



 ジン達のようなEランク冒険者の稼ぎは少ない。


 リヤカーは採取物を出来るだけ多く運べるように、『自由の翼』みんなでお金を貯めて購入した物だ。


 ハイオークの買取り金額は、少なく見積もっても小金貨5枚、その半分となると小金貨2枚と銀貨5枚。


 ジン達にとってはかなりの稼ぎとなるので、断る理由はなにもなかった。



 マリアは交渉・契約成立の悦びよりも、こっちの世界でもリヤカーで通じるんだなぁと、どうでも良い事を考えているのであった。




      ───◇─◆─◇───




 道中は特にこれといったイベントもなく、あっさり街の前まで到着したのだが、街を囲んでいるこの城壁のようなもの……高さは10メートルはあるだろうか。


 かなり堅固に見える。


 魔獣のいる世界なら、当然のことなのかもしれないね。まぁ攻め込んでくるのは、魔獣だけとは限らないだろうしね。



 リヤカーからはみ出るハイオークに、門兵さん達が驚いていたけど、この街を拠点としている『自由の翼』の皆が諸々説明すると、私は小銀貨5枚を払ってすんなり街へと入る事ができた。


 ぱっと見た感じでは木造の建物が多く、石造りの建物がちらほらとある。


 歩いている人達の雰囲気的に安全な街のようだ。


 しかし……人間しかいないな。エルフや獣人は希少種族なのだろうか?



 キョロキョロしながら歩いていると、冒険者ギルドという建物に到着した。ここでハイオークを買い取ってもらえるらしい。


 二階建てで横に長く、周囲の建物に比べるとかなりの大きさだ。


 入口は二つあり、建物正面の左側に普通サイズの扉、中心に倉庫にあるような大きな横開きの扉がある。



 ジン達から買取りだからこっち側から入るぞと、大きな横開きの扉の方へと誘われる。


 中はかなり広い空間で、正面にカウンターテーブルのようなものが見え、ギルド職員?らしき男性が二人立っている。


 冒険者ギルドの建物は中で繋がっている作りで、見た感じでは左側はクエスト受注などを行う場所なんだろう。


 あちらのカウンターには受付嬢のような女性が数人見えるし、冒険者らしき人達が大勢いる。


 そして右側は……ああ、そっち側は魔獣を解体するスペースか。



 マリアが興味深くギルド内を見ていると、ジンがギルド職員に話しかけた。



「おやっさん!ハイオークの買取りを頼む!」


「ああ?ジンか。お前らまだEランクだろ。ハイオークじゃなくてオークの間違いだろ?」



 決して馬鹿にしている訳ではないが、訝し気な態度でこちらに近づいてくる一人のギルド職員。


 40代後半くらいであろうか?赤毛の短髪、髭が似合いハイオークに負けない筋肉を身に纏っているのが分かる。


 リヤカーからはみ出すハイオークを目にした瞬間、その職員の顔は見る見るうちに驚愕へと変わった。



「おいジン……此奴を殺ったのはお前ら『自由の翼』なのか?」


「いや、俺達は採取クエストをしてたんだけど、急にこのハイオークが現れて、そこの女の子が倒してくれたんだ……」


「馬鹿野郎!!此奴はハイオークなんかじゃねぇ!!()()()()()()()()()()()()()だ!!デカさは同じでも、ハイオークには体中にこんな模様はねえーんだよ!それくらい冒険者なら勉強しとけアホンダラがっ!!」



 ギルド職員の怒声が響き渡り、ギルド内にいる全ての人達の注目が集まる。


『自由の翼』のメンバーは、青い顔で立ち尽くすのみだ。


 怒声の主であるギルド職員の目がマリアを捉えると、今度は何とも言えない困惑の表情へと変化する。



「……嬢ちゃんが、このオークジェネラルを倒したってのは本当か?あぁすまない。俺はこのギルドの買取り・解体の責任者でガンツって者だ。嬢ちゃんは武器を持ってないようだし、魔法メインの冒険者なのか?」


「ご丁寧にどうもガンツさん。私はマリア。冒険者ではありませんが、確かに私が素手で倒しました」


「「「「「「…………」」」」」」



 一瞬の沈黙の後、多くの冒険者たちがいるギルド内の左側から、様々な声が聞こえはじめる。



「おいおいオークジェネラルって脅威度Cはある魔獣だろ?」

「ふん…あんなガキが素手で倒せる訳ねぇだろうが!ハッタリだよ」

「見た事もない服装だし異国の子なのかな?」

「誰かギルマス呼んで来い!」

「嘘でもなんでもいいけどあの子すごく可愛いな……」



 ギルド内がざわざわとする中、勢いよくギルドの扉を開く者が現れた。

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