第45話 基礎化粧品② 化粧品の効果
レオナから多数の薬草とガラス容器、そして薬草を練ったりする道具一式を受け取り『次元収納』へ仕舞うと、マリアとクロエは『薬屋みどり』を後にし露天巡りをしながら帰宅する。
「お店と他のお客さんが困らない量を全て売って下さい」
と、お決まりの言葉でどんどん買い物を続けるマリアであったが、本当に魔獣肉の串焼き屋が多い。
でも味は悪くないからそこは救いだね。
伯爵邸に帰ったマリアは、さっそく作業場で『基礎化粧品』の製作に取り掛かった。
同じ化粧品であっても、効果がより高いものも製作できるのだが、今回は全て最も効果の低いもので揃えることに決めた。
効果が低いと言っても、地球の化粧品より効果は高いと『叡智』さんが答えてくれたからだ。
何せ製作には様々な薬草の素材に魔力を加えるのだから、ファンタジー補正が掛かって当然なのだろう。
マリアは『叡智』さんが示す比率で薬草を混合させながら、どんどん製作を進める。香りづけのための薬草も練り込む。
ちなみにジェルパックに使用する素材の一つが、見た目がアロエそっくりな事にマリアは少し感動した。
ただアロエの果肉よりも、ムニュムニュモチモチとしており、すでにちょっと感触の硬いジェルのようである。
あれ……容器はともかく、この作ってる化粧品ってけっこう複雑だよね?もしかして……
(『叡智』さん……もしかして化粧品自体の複製って出来ないかな?)
《マスターが現在作成中の物は複製不可と判断》
ですよね~。
しまったなぁ……これはレオナさんをもっと深く巻き込むしかないか……
(ちなみにこの化粧品って、私以外の人の魔力でも同じ物を作れる?)
《マスター以外の魔力でも問題なく作成可能と判断》
うん決まり!レオナさんに相談してみよう!
マリアが化粧品を作っていると、作業場には『聖なる肥料』を作りにメイドさん達が何人かやってくるが、化粧品を気にしつつも肥料作りに専念してくれているようだ。
うんうんみんな真面目だね。
みんなが喜んでくれるように、良い物を作るようにするからね。
化粧品の試作品が完成したのは翌日の夕方だった。
勿論しっかり食事も睡眠もとったよ。
試作品は洗顔クリーム(クレンジング効果付き)、化粧水、美容液、乳液、ジェルパックだ。
『叡智』さん曰く、魔力の効果もありどれもお肌に優しく、パッチテストをする必要もないらしい。
いや魔力すごすぎでしょ。
伯爵邸の全てのメイドさんに試作品を渡し、使い方を説明する。
まだ使ってもいないのに、皆キラキラした表情をしているね。でもクロエちゃん?14歳のクロエちゃんには、そんなに効果を感じられないかもしれないよ?
この日の夜から試作品のテストを始めてもらったのだが、伯爵邸には翌朝から喜びと驚きの声が溢れかえるのであった。
「マリア様見て下さい!お肌がぷるぷるに!」
「私の肌ってこんなにモチモチしてたの……」
「心なしかお肌が輝いている気がします!」
「どれも良い香りですし毎日使いたいです!」
「マリア様ー!私のほっぺぷにぷにですよー!」
いや、クロエちゃんのほっぺはいつもぷにぷにしてて可愛いよ?
一日だけじゃ心許ないし、暫くの間は感想を聞かせてもらう事になったのだが、更に翌々日になると驚きの効果が現れた。
慢性的な肌荒れに悩んでいたメイドさんの一人が、肌荒れしていたなんて嘘かのように綺麗な肌へと変化していたのである。
これには当の本人だけでなく、長年悩みを聞き続けていた他のメイドさん達も、声をあげながら涙を流した。
「マリア様……本当に……本当にありがとう御座います……これで私……玉の輿を狙えます!」
うん……逞しいことは良い事だね。
何はともあれ、これで『基礎化粧品』第一弾は完成だね!
おっと容器の量産が必要だ。
マリアは洗顔クリーム、化粧水、美容液、乳液、ジェルパックそれぞれに対応するガラス容器を選定すると、『スタンプ』の魔法を応用して容器に使用方法や順番、聖女商会のマーク等を描いていく。
さらに聖女商会のオリジナル化粧品として、『ラグジュ』というブランド名を冠した。
それぞれの商品は、毎日使用して六十日間は使える量が入っているが、目玉商品も用意することにした。
七日間分お試しセットである。
メイドさん達の意見では、どんなに長くても三日間使用すればその良さに気が付くはずだと熱弁されたので、一週間も使えば確実にリピーターとなってくれるだろう。
価格も抑えたお得なセットにするので、手にも取りやすいはず。
マリアは七日間分お試しセットを二つレオナに届けに向かい、三日後に感想を聞きに来ると告げ、追加の薬草と割れたガラス類を受け取り帰宅した。
追加の化粧品を製作していると、クロードから嬉しい報告があった。
「マリア殿!あの肥料で実った作物の収穫が始まっているそうだよ!」
「え?もう収穫するまでに育ったんですか!?」
どうやら作物全てではないようだが、一部は収穫可能なほど実り、さらにどれもこれも上質なデキらしい。
クロードからの報告を受け、なぜかマリアよりもウンウンと大きく頷くクロエであった。




