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たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


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第41話 遭遇

 レオナが採取に向かったのは、ジン達の冒険者パーティー『自由の翼』と出会った草原だ。



 マリアは『聖なる身体操作』で全身を強化し、超スピードで向かう。


 さらに『サーチ』を展開していた。


 レオナとは一度会ったことがあるので、『サーチ』で確実に判別することが可能だ。



 草原に到着し捜索するが、いろんな魔獣の反応はあるけど、レオナの反応はまだ無い。


 マリアは草原の奥にある森を見つめながら、「あっちの方が薬草類は豊富そうだね。可能性はあるか」と呟き駆け出した。



 森の奥は草原と違い、魔獣の反応がかなりある。


 今は魔獣の相手をしている暇はないので、避けながら移動していると、マリアの『サーチ』にレオナの反応が引っかかった。



「見つけた!でも反応がちょっと弱い気がする」


《ターゲットの生命力低下を確認。危険な状態と推測》



『叡智』さんが不吉なことを言うので、マリアはさらにスピードを上げる。


 だがマリアの『サーチ』には、レオナの周囲をぐるぐると高速で回っている魔獣の存在も捉えていた。



 マリアの脳内に『ワイバーン亜種』と表示されている。



 ワイバーンは近いうちに討伐したいと思っていた魔獣だけど、今はそんな場合じゃない。


 とにかくレオナの反応のもとへと向かうと、そこは一本の大木の根本だった。根本には人がギリギリ入れそうな穴が空いている。


 この中にレオナさんがいるようだね。



 マリアは穴の中に体を潜り込ませると、『ライト』の魔法で周囲を照らした。


 穴の内部はそこそこ広くなっており、女性が一人横たわっている。



「レオナさん!!」



 マリアが倒れているレオナに近づくと、レオナの肌は見えている大部分に火傷を追い、右腕に至っては肘の上の所から千切れかかっている。


 レオナの周囲に空のポーション瓶のような物が散乱している事から、治せなくてもなんとか持ちこたえていた状況なのだろう。



 マリアは『ヒール』ではなく、中級治癒魔法『ハイヒール』を行使する。


 キラキラ輝く緑色の光がレオナの全身を包み込むと、全ての火傷が癒え、千切れかかっていた腕も綺麗に完治した。



(私の魔法って、強化されてるとは言えすごいね)


《マスターは別世界での医療や、人体構造の豊富な知識があり、それらが組み込まれる事でハイヒールの効果が高まっています》


(レオナさんは気絶したままだけど、命の危険はもうないかな?)


《はい。失った血液も適正量に戻り、正常な生命反応です》



 良かった!こっちの世界は地球よりも命が軽いものなのかもしれないけど、知り合いが死んじゃうのはやっぱり嫌だからね。


 それにしても血液まで戻るって、私の治癒魔法って本当にすごいんだね。



(ところで『叡智』さん、これやったのあの『ワイバーン亜種』かな?)


《火傷は『ワイバーン亜種』が放つ火球によるものと推測》



 ほほ~う……



 ワイバーン亜種……女性の肌に火傷を負わせるとは、いい度胸じゃないか。



《マスター、ワイバーンの素材は傷を最小に確保することを推奨》


(……分かってるよ『叡智』さん。魔法袋の素材に使いたいからね)



 マリアはレオナの周囲に『バリア』の魔法を使用し、木の穴から外へと出る。


 獲物であるレオナさんが身を隠したから、空の上をぐるぐる旋回しながら探してるってことだね……



 でも残念だったね。



 穴から出て来たのは、あなたに『確実な死』を与える聖女だよ。



 それにしても本では見たけど、ワイバーン亜種ってかなり大きいね。見た目はもう完全にドラゴンだし、拡げた羽の先から先まで20メートルくらいありそうだ。


 惹き込まれるような金青色の体で、尻尾も太く棘のような物が何本も見える。


 人も余裕で乗れちゃう大きさだな……よし!乗るか!



 あの能力も使ってみたかったし丁度いい。


 マリアは空を旋回するワイバーン亜種を見ながら呟いた。



「転移!」



 そう呟くと、マリアはワイバーン亜種のさらに上空へと転移する。そしてワイバーン亜種の背中に向かい更に転移した。


 背中に異物が現れたことに気が付き、「ギギャアァァァス」と不快な鳴き声を上げるが、マリアは構わず背中にしがみつく。



 見た感じ、こいつの皮膚は相当堅そうだね。だったら……


 マリアは自分の右拳に『バリア』を纏わせ、ワイバーン亜種の背骨があるだろう場所に怒りの一撃を叩き込んだ。



『メギョグボギャッ』と身の毛のよだつような音と同時に、「ンギャオ!」と情けない声をあげながらワイバーン亜種はどんどん高度を下げ、森から少し離れた草原に墜落した。



 墜落前に草原へと転移したマリアが、ゆっくりとワイバーン亜種に近づくと、息も絶え絶えながら大口をグバァっと開け、マリアへと向けてくる。



《マスター、火球を放つ確率90%です》



『叡智』さんの言葉の後すぐに、ワイバーン亜種の口から小学校の運動会で、大玉転がしに使われる玉サイズの火球がマリアへと放たれた。


 迫りくる火球を見てもマリアは全く動じない。


 火球がマリアへ着弾するほど迫った瞬間……



「無駄です」



 と言いながらマリアは『バリア』を纏わせた右拳で、火球を上空へと弾き飛ばしたのだった。


 そして弾き飛ばした次の瞬間には、マリアはワイバーン亜種の喉元まで移動し、顎に強烈なジャンピングアッパーを一撃!



 完全に命を絶たれた巨体は、ズズンと音を鳴らしながら沈むのであった。



 ワイバーン亜種を『次元収納』に収め、レオナのいる場所へ転移するマリア。



「よし!これで依頼完了……いや、家に帰るまでが遠足。レオナさんを送り届けるまでが今回の依頼だね」




 レオナを背負い街まで転移と考えたマリアであったが、さすがに転移してる所を見られたら大騒ぎになるかもしれないと思いとどまり、街の近くまで転移し、そこからは歩いて『薬屋みどり』へ向かうのであった。

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