第40話 捜索依頼
マリアの『次元収納』の中に残っている魔鉄も使い、追加の洗濯機を大小それぞれ12台製作し商人達に納品した。
けっこう高価な物だと思うんだけど、そんなに簡単に売れるものなのかと商人さんに聞いてみたところ、お金に余裕のある人は大型と小型二台とも購入するのだとか。
『リムーブリンクル』でのシワ取り機能も『ドライ』での乾燥機能も、どちらも使いたいとの理由だった。
セット販売したくて機能を分けた訳じゃないんだけどな……もし新型を作る場合は大型も小型も、両方の機能を付けて製作した方が良いかもね。
肥料の売行きも相変わらず順調らしく、こちらも200袋ずつ追加で卸した。
そういえばクロードさんに、私に対する『御触れ』の件でお礼を言ったら、教会のラナーさんから御触れを出すべきとの書簡が届いたかららしい。
ラナーさん良い仕事をしてくれたね!
そうだ!きっと教会でも洗濯機は使うだろうし、大型と小型どちらも寄付する事にしよう。
その件をクロードとドドガに相談したら二つ返事で了承をもらえたので、完成した洗濯機を『次元収納』に入れてマリアは教会へと来ていた。
「おお!お久しぶりです虹の聖女マリア様!皆さん!こちらが虹の聖女様のマリア様ですよ!ご挨拶を」
今日はラナーさんだけじゃなく、他のシスターさん達も数名いるようだ。
「皆さんこんにちは、マリアと申します。ラナーさん、突然ですが皆さん洗濯は教会で行っていますか?」
「洗濯ですか?はい、教会の裏庭で自分達で行っておりますよ」
「実は私『聖女商会』という商会を立ち上げていまして、今日はそこで製作している洗濯機をお持ちしたんです」
「『聖女商会』については存じております!あの肥料の効果は、まさに奇跡だと噂されていますからね。ですが洗濯機とは?」
『聖なる肥料』の噂は届いていたようだけど、洗濯機の件はまだラナーさんの耳には届いてなかったようだね。
説明するより見た方が早いのでと提案し、マリアは教会の裏庭にラナー達と行き、『次元収納』から出した洗濯機の説明とデモンストレーションを行った。
ラナー達は虹の聖女様が突然『次元収納魔法』を使用し、未知の『超便利な魔道具』の効果を示したことで、目を白黒とさせていた。
「この二台の洗濯機、教会に寄付したいんですけど場所はここで平気ですか?」
「「「「「寄付ぅぅうう!?」」」」」
「こ……こんな高価な物を頂いてしまってよろしいのですか?」
「勿論ですよ。それにラナーさん、御触れの件とても助かりました。ありがとう御座います」
ペコリと頭を下げるマリアを前に、ラナーだけでなく他のシスター達もあわあわと右往左往している。
「大変素晴らしい物をご寄付頂き、本当にありがとう御座います。私達はいつも虹の聖女マリア様の味方です。何かお困りの事があれば、いつでも教会にいらして下さいませ」
マリアは洗濯機だけでなく、金貨も1枚寄付して教会を後にした。
「ラナー様、あの方が虹の聖女マリア様なのですね」
「そうです。女神カリナリーベル様と直接お会いになり、このグライド大陸だけでなく、ソウラリアのために尽力するようにと使命を御受けになった聖女様……それがマリア様です。皆さんいいですね?私達もあの御方のために力を尽くすのです!」
「「「「「はい!!!!!」」」」」
こうしてまた、自分の知らない所で狂信者が増えるマリエであった。
───◇─◆─◇───
今日は嫌がるクロエちゃんを説得して、一日お休みを与えている。
クロエちゃんはまだ14歳だし、『聖女様担当』となった事で毎日気を張った生活を続けているだろう。
明らかに疲れが見て取れたので、マリアの「これは命令だよ」との一言で休んでもらった。
この日マリアは、教会以外にもう一カ所行きたい場所がある。
それは薬屋だ。
この街で泊まった宿の『星空亭』で食事をしている時に、マリアに話しかけてきたレオナという女性、彼女は星空亭の隣の薬屋の娘だと言っていた。
マリアはこの世界の薬についての知識を吸収し、薬だけじゃなくハンドクリームや美容製品なんかも作りたいと考えているのである。
「ここだ。『薬屋みどり』って店名なんだね。そう言えばレオナさんの髪色は緑色だったな」
マリアは『薬屋みどり』の看板が掲げられた店のドアを開ける。
こんにちは~と言いながら入店したのだが、何やら様子がおかしい。
店内の壁際の棚には、所狭しと薬やポーションらしき物が並んでいるのだが、カウンターにいる男女が深刻そうな雰囲気だ。
女性に至っては涙を流している。
あれ?この二人の髪の毛も、レオナさんと同じ緑色だね……もしかしてご両親かな?
「あの、どうかされたんですか?」
マリアが声を掛けると、女性が涙を拭いながら震える声で応える。
「あら……みっともない所を見せてしまいごめんなさいね……あ……その異国の服は、もしかして虹の聖女様ですか?」
「あ、はい。レオナさんにここが薬屋だと教えてもらったので来たんですが……何かあったんですか?」
「聖女様はレオナと知り合いなんですか!?実はそのレオナの事で……」
マリアはレオナと知り合った経緯を話しつつ、何があったのか詳しく聞くと、この二人はレオナの両親。
早朝から薬の材料をレオナが採取しに出掛けたのだが、いつもならとっくに帰宅しているはずの時間なのに、一向に帰って来ないのだそう。
二人は冒険者ギルドに、レオナさんの捜索依頼を出そうと話していた最中だったらしい。
危険な魔獣が存在している世界だもんね。日本で多少帰りが遅いといった話とは訳が違う。
「分かりました。レオナさんの捜索は私がしましょう」
「「聖女様がですか!?」」
「私は冒険者でもありますから。それにレオナさんとは会ったことがあるので、私なら必ず見つけ出せますよ」
二人はマリアの言葉の意味が理解できずポカンとしていたが、真剣な表情で頭を下げる。
「聖女様!お礼は必ずします。娘を……どうかレオナを見つけて下さい!レオナを連れ帰って下さい!」
マリアはコクリと頷くと、両親からレオナがどの辺りへ採取に行ったかを聞き、急いで店を、そして街を出たのであった。
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