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第4話 はじめての魔法とお金の価値

 いま私は興奮していた。



 人生で初めて目にする『魔法』が理由だ。


 私がゴブリンだと思っていた魔獣は、ハイオークだと四人から説明され、足に怪我を負っていたプレセアという女性を、コルトっていう男性が魔法で回復させる様子を、見せてもらう事になったのだ。



「我に女神の慈愛と癒しの力を……『ヒール』」



 コルトという男性がそう呟くと、その手は薄い緑色に優しく発光し、プレセアの足の傷がゆっくりと塞がっていくが、完全には塞がらない。


 見た目以上に傷が深かったようだ。



「ごめんねプレセア。僕の魔法じゃこれが限界だよ。あとは街に戻って治療してもらおう」


「あ、ちょっと私にやらせてもらっても良いですか?」



 自己紹介もまだ済ませていないのだが、目の前で行使された魔法を見た瞬間にマリアは理解した。


 自分もこの魔法を使うことが出来ると、感覚で分かってしまったのだ。



 マリアが先ほど見た魔法をイメージしていると、頭の中に何やら魔法陣のようなものが構築されていく。



「ええと、我に女神の慈愛と癒しの力を……『ヒール』」



 コルトが使用したヒールよりも、キラキラとした光を帯びた緑色に輝く現象がプレセアの足を包み込み、一瞬で傷は癒えたのだった。



 そして訪れる沈黙。



 マリアは自分が初めての魔法を使ったことに静かに感激しつつも、頭の中ではものすごい速度で思考を繰り返している。


 地球での知識と異世界で初めて触れた魔法、そして様々な可能性。あらゆる事を掛け合わせながら思案を巡らせる。



 四人の男女は、マリアから少し距離を取り円陣を組む。


 どうやら会議が始まったようだ。


 このとんでもなく強い謎の美少女は冒険者なのか?魔獣の知識が無いようだしそれはないだろう。あのヒールはなんだ?効果を見る限りハイヒール以上だぞ?でも詠唱はヒールのものだったよ?とにかく俺達を助けてくれたんだし礼を尽くすべきだろう……


 などなど。


 聴力が強化されているマリアには全て聞こえているのだが、マリアは何も気にしない。


 自分のことを美少女と評価されたことに対しても、特に何も感じない。それがマリアなのである。



 お、どうやら緊急会議は終了したようだ。



 彼らはマリアへお礼を述べると、それぞれ自己紹介をしてくれた。


 ジンはこの冒険者パーティー『自由の翼』のリーダーで、全員同じ村出身の18歳。冒険者ランクはEだと言われた。


 その知識が無いと伝えると、冒険者ランクは上からS、A、B、C、D、E、F、Gの八段階あり、Cランクになって初めて一人前と言われると教えてくれた。


 ジン達はランクEらしいし、駆け出しって訳でもなかったようだ。



 ハイオークはDランク冒険者なら六人以上、Cランク冒険者なら二人以上で、安全に討伐できるくらいの魔獣だったらしい。


 マリアにとって、今はどんなことでもこの世界の情報はありがたい。この人達を助けて良かった。



 ジン達は治癒薬、所謂ポーションを作るための、薬草採取のクエストの最中だったらしい。


 マリアは自分の事を話そうと思ったのだが、違う世界から転移して来たことは言わない方が無難だろうと思いつつ、嘘も吐きたくはない。


 なので自分は遠い異国から来た。名はマリアだと告げ、詳しくは話せないが教会に行きたいと、目的だけ話すことにする。


 ジン達は助けてもらった恩もあるからか、特に追及することもなく受け入れる構えのようだ。


 と、ここでマリアは自分がこの世界のお金を持っていない事に気が付く。



 この大陸のお金を持っていないと告げ、お金の価値について聞いてみる。


 銅貨やら銀貨やらお約束の硬貨が存在しているらしく、どんな物がどれほどの硬貨で購入できるのか詳しく聞いてみたところ、大体の価値が分かった。



銅貨1枚=10円


小銀貨1枚=100円


銀貨1枚=1000円


小金貨1枚=1万円


金貨1枚=10万円


白金貨1枚=100万円



 日本での感覚と照らし合わせるとこんな感じか。ジン達は金貨や白金貨なんて見た事ないけどなと、自虐的に笑っている。


 どうやらマリアが行こうと思っていた街を、ジン達は拠点にしているらしいので、同行の許可をもらう事にした。


 そんな話の中で街に入るためには、入口で小銀貨5枚を支払う必要があるとのこと。


 ジン達は拠点登録している冒険者カードを持っているため無料らしい。



 さてどうしたものかと思っていると、冒険者パーティー『自由の翼』のマキナが口を開いた。



「いやマリアちゃん、そこで倒れてるハイオークを売れば小金貨5枚にはなるはずよ?倒したのはマリアちゃんだし、そのハイオークを売ったお金は全部マリアちゃんのものって事で、皆も文句ないわよね?」



『自由の翼』の皆がコクコクと頷くので、その様子を見たマリアはもちろん笑顔でこう答える。



「お断りします」



((((えええええええええええ!?))))



さすがに心の中の叫び声までは、マリアには分からないのであった。

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