閑話 ある日の地球 『M』
「大統領。コードネーム『M』との会食がキャンセルとなったようですけど、大統領との食事をキャンセルするなんて『M』とは何者なんですか?」
「……そう言えば君は『M』とはまだ会ったことが無いんだったな。これから言う私の言葉は他言無用だぞ?でなければ私は、ステイツの多くの人間から命を狙われてしまうかもしれない」
「他言無用……はい。神に誓って」
「神に誓って……か。『M』とは……神……または神に近しい存在だと私は思っている」
「なっ!……いえ……確かに今の発言は危険ですね。ですが大統領がそう思われる程の何かが『M』にはあるのですか?」
「『M』とは……日本人の幼い少女だ。ただし普通の少女、いや、普通の人間とは思えない」
「少女?人間じゃない?」
「君は半年前に壊滅した、大規模な麻薬組織のことは知っているね?」
「勿論です!なにせ大統領自らの指揮により組織の全ての拠点を割り出し、完全殲滅させたのですから!我々はあの興奮を忘れたりしませんよ!」
「……私じゃないのだよ」
「……え?」
「組織の全ての拠点を割り出し、情報提供をしてくれたのは『M』なのだよ」
「…………」
「更に組織のトップが潜伏している拠点に、我が国の特殊部隊を率いて自ら乗り込み、味方の死傷者無しで制圧してみせた」
「…………」
「続けるぞ?もう再来月には承認見込みの新薬の件だが--」
「ま、待って下さい……それは数年前から爆発的に拡がっている、感染したら1年以内での致死率100%だと言われている、あのウィルスの……?」
「そうだ。その新薬は服用すれば、ノーリスクで完璧にそのウィルスを死滅させる事ができる物だ。全ての試験をクリアし最終的な承認待ちだが、その場に『M』も立ち会ってもらう事になっている。この意味が分かるかね?」
「その新薬……『M』が……?」
「うむ。研究開発チームに加わってなどと言う、生易しいものではない。すでに完成された新薬の情報を、全て『M』が提供してくれたのだよ」
「……ウィルス自体を『M』が作り、新薬で利益を得ようとした可能性は……」
「ないな。何故なら彼女はこの新薬で得られる利益全てを放棄した。そして逆に条件を出されてしまったよ」
「条件ですか?」
「我が国の医療費は世界で見ても非常に高額だが……この新薬については感染した者に確実に薬が渡るよう、とにかく患者から金を取るな……とな」
「…………」
「どうした?泣いているのかね?」
「……先月……私の妻がそのウィルスに感染したのです……」
「……そうか……再来月には承認される。君の妻はきっと助かる!一緒に『M』に祈ろうじゃないか」
「「おお神よ!!」」
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