第31話 初めてのクエスト受注③ 報酬と魔法袋
冒険者ギルド内は騒がしいので、マリアは改めてギルドマスターの部屋へと通されていた。
私とアイザックさんが出された紅茶を飲んでいると、強めのノックの後にガンツが入って来る。
どうやら今回の採取物や魔獣の報酬を用意してくれていたらしい。
「嬢ちゃん待たせたな。これが魔石と今回の報酬の金貨12枚と小金貨7枚、銀貨5枚だ。本来はもっと少ないんだが、嬢ちゃんが狩った魔獣は相変わらず状態が良いから、少し色を付けておいた。問題ないよなアイザック?」
「ああ問題ないぞ。オーガは手足以外は綺麗なもんだったし、オークとハイオークに至っては目立った傷は何もなかったからな」
ほんの数時間で日本円にしたら130万円弱ほどの稼ぎだ。
おまけで討伐したオーガの分がかなり大きかったようだね。
ちなみに通常の買取りだとどうなったのかも見せてもらえたが、以下の通りだった。
・ポラン草 小銀貨2枚×112 小金貨2枚 銀貨2枚 小銀貨4枚
・ママラン草 小銀貨5枚×97 小金貨4枚 銀貨8枚 小銀貨5枚
・キュリップの花 銀貨1枚×91 小金貨9枚 銀貨1枚
・オーク 小金貨1枚×三体 小金貨3枚
・ハイオーク 小金貨5枚×一体 小金貨5枚
・オーガ 金貨2枚×四体 金貨8枚
約23万円くらい上乗せしてくれているんだが良いのだろうか?
こりゃ冒険者ギルドにも何か貢献してあげないといけないなぁ……などと考えつつマリアは魔石と報酬を『次元収納』へと仕舞う。
「しかし……本当に『次元収納魔法』が使えるんだな。御伽噺で存在は知っていたが、使い手を見るのは初めてだ。なぁガンツ?」
「ああ、『魔法袋』だって持ってる奴はそう多くねぇってのに『次元収納』なんて……嬢ちゃんが聖女様じゃなかったら、色んな奴に狙われてたかもしれねぇな」
「ガンツさん、聖女はそんなに安全な立場なんですか?」
「ん?そうだな。基本的に聖女様っつうのは、世界の守るべき宝だと言われている。だから滅多な事がない限り大丈夫だとは思うが……世の中には不届き者が必ずいるもんだ。気をつけるに越したことはないな」
それもそうだね。私が聖女だって知らずに近寄ってくる人もいるだろうし、こういった世界なら盗賊とかもいるんだろうしね。
あ、そういえばカリナが魔法袋がどうとか言ってたな……
「ところでアイザックさんかガンツは魔法袋を持っているんですか?」
「おお持ってるぞ。ちょっと待ってろ」
アイザックさんが自分のデスクの方へ行き、引き出しの中を漁り始めた。
しかしそこそこ広いギルマスの部屋なのに、ゴリゴリマッチョが二人いると変な圧迫感があるな。
「あれ?ガンツー。俺の魔法袋どこにやったか知らないか?」
「はぁ……んなもん俺が知る訳ねぇだろうが!ちゃんと整理整頓しとけ!」
この二人ってかなり仲が良いのね……
「おおお!あったあった!これだこれ」
アイザックさんは小さな巾着袋のような物を手にすると「ちょっと待ってろ」と言いながら袋の中に手を突っ込み、巨大な大剣を取り出して見せた。
「この魔法袋はその中でも最高峰のやつでな、容量はそうだな……この部屋の半分ってところか」
今いる部屋の半分となると大体六畳くらいか。天井まで三メートルくらいあるし、けっこう収納出来るね。
「それってお金で言うと、どの程度の価値があるのもなんですか?」
「そうだな……このレベルとなると『国宝』と呼んでも良いくらいの代物でな……まぁ白金貨100枚以上だろうな」
え……1億円以上の価値があるの?いくらギルマスの部屋の中とは言え、もう少し厳重に保管しておいた方が良いのでは?
「魔法袋には三種類あってな、俺のは最高峰のレベル3と呼ばれる物、レベル2の物だと容量はこの半分。レベル1だと大体三分の一程度になるな。それでもレベル2で白金貨70枚以上、レベル1でも白金貨50枚以上はする」
「アイザックの言葉に補足すると、その価値はあっても滅多に市場に流れる事はないんだ。まずそもそもの数が少ない。ダンジョンや遺跡みたいな場所から偶然見つかる程度の物だし、見つけられるような人間はそれなりの実力者だから、金に困ってる奴も少ない。自分で使った方が日々の稼ぎも増えるからな」
なるほど……カリナの言う通り魔法袋を量産して売り出せば、一気に大金持ちって訳だ。
マリアはアイザックから渡された魔法袋を手にし、隅から隅まで観察している。
(『叡智』さん、この魔法袋って今の私に作れたりする?)
《マスターのスキルと魔法があれば、素材さえあれば可能です。素材は竜種の物を推奨》
ああクロードさんの家で読んだ本に竜種の魔獣も色々と載ってたな。
(それってワイバーンとかっていう飛竜でも作れそう?)
《ワイバーンの素材を使用した場合、レベル1程度の物であれば作成可能です》
よし!もし作ることになったらまずはワイバーンを討伐して、レベル1の物からにしよう!
そこから30分ほど、アイザックさんとガンツさんの冒険者時代の話に花が咲いたのだが、マリアにとっても興味深い内容が多かったため、とても楽しい時間となった。
さて、伯爵邸に帰ったらお留守番してるクロエちゃんの頭を撫で撫でしないとね!
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