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第19話 聖なる仲間?

 その後の昼食は和やかに進み、マリアは与えられた部屋へとやってきた。



 日本で言えば一泊5万円は取れそうなとても良い部屋である。


 伯爵邸には立派なお風呂もあったのだが、トイレはやはりボットン便所であった。


 どこかのタイミングで、日本が誇る快適なトイレを作る必要があるなと、マリアは静かに闘志を漲らせる。



 余談ではあるが、伯爵には奥さんと10歳の娘がいるのだが、今は奥さんの実家へ帰省中らしい。


 決して喧嘩中とかではないぞと、一生懸命クロードは言っていたけど、別にそんなこと疑ってないのだがと思うマリアであった。



 マリアは部屋の中に置かれている花瓶へ近づくと、咲き誇る花の中で元気をなくした花に『ヒール』をかける。


 しばらく『ヒール』を維持しているとほんのり、だが確実にその花は生気を取り戻したように見えた。



 ベッドにごろりと横になり、自分なりの予想や可能性を思い描きつつ、頭の中で(こうなる気がするんだけどなぁ)と呟いた瞬間だった。



《はい。概ねマスターの予測通りとなるでしょう》


(え?)



 突然頭の中に聞こえてきた声に、ビクリとなり身体を起こすマリア。


 部屋の中には誰もいない。



(……私に話しかけたあなたは誰ですか?)


《私はマスターの中に存在する『聖なる叡智』です》


(え?スキルって自我があるんですか?)



 すでにマリアは冷静である。


 なぜならここは異世界。


 ファンタジーあるあると割り切ればそれほど驚く事ではない。



《いえ、自我を持つスキルは私だけだと認識しています》


(そうなんですね。『聖なる叡智』さんは具体的にどのようなスキルなんですか?)


《私はマスターが地球とソウラリアで得た知識や能力を統合し、集約された知識や能力内で可能となる事を提案・回答する事が可能です》


(なるほど……私はいま地球で言う●●を、聖女の使う【豊穣】と同等の効果があるよう作りたいんですが、ソウラリアにある物とか魔法を使って作ることは可能ですか?)


《聖女の【豊穣】を実際に見た事がないので明確には答えられませんが、書物で得た【豊穣】の効果と同等の●●は作成不可です。ただし地球上に存在する●●の、約100倍の効果を持つものの作成は可能です》



 100倍……十分すぎる効果だ。



(それを作るためには魔法が必要だと思うんですけど、魔法以外にも必要な物があるはずです。それは私の知識の中にありますか?)


《はいマスター。『ザザ草』の葉の部分が必要となります》



『ザザ草』はさっき読んだ書物の中に確かにあった。


 荒れた土地でもその草だけは生えていると言う、所謂どこでも見かける雑草である。


 雑草なので売れるわけでもなく、草原に生えてる大半の草はこの『ザザ草』だ。



(『ザザ草』の『葉の部分』ですか……なるほど。使用する魔法を魔道具に落とし込みたいのですが可能ですか?)


《魔道具制作に関する知識が無いので回答不可です》


(確かに魔道具の知識が私には乏しいですね……複数の魔法が必要だと思うのですが、ヒールと●●と●●を同時に使用する必要があると思います。これは複数人で対応するしかないでしょうか?)


《マスターであれば『創造神の加護』と、スキル『聖なる魔力操作』を使用し、一人で行使できるオリジナル魔法の発動が可能です》


(ではそれぞれの魔法の比率は--)




 その日は夕食に呼ばれるまで、頼れる仲間と語り合うマリアであった。




      ───◇─◆─◇───




 伯爵邸の別室では主であるクロードと、家令のサンジュが対面に座り紅茶を飲んでいた。


 二人は雇い主と使用人という関係ではあるが、よく二人きりでこうした時間を楽しむ間柄である。


 ほぼ毎回クロードの愚痴をサンジュが聞く時間なのだが、今日は虹の聖女マリアについて小声で大盛り上がりだ。



「司教であるラナー殿が直接来た時は本当に何事かと思ったぞ」


「先触れもなく来て物凄い剣幕で門番に詰め寄ったらしいですからね~」


「マリア殿が女神カリナリーベル様と直接お会いしているとも言っていたな」


「教会内でそう仰ったようですし、あのとんでもないお力……まず間違いないでしょう」


「そうだな。それにしても聖女って……もっと横柄な態度だと思っていたよ」


「マリア様はまさに身も心も聖女様なのでしょう。歴史上最高の聖女様かもしれませんぞ」


「うむ。もう陛下なんて関係ない!マリア殿がいたいだけ当家にいてもらおう!」


「それはさすがに不敬ですぞ旦那様!」


「「わっはっはっは」」




 マリアの攻撃的な部分をまだ見ぬ二人は、ご機嫌なティータイムを過ごすのであった。

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