表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/105

第13話 狂信者ラナー

 私はラナー。



 この世界の唯一神であられる、女神カリナリーベル様を信仰しているアイリス教の司教です。


 カリナリーベル様など存在しないと宣う不敬な団体が、数年前から信者を集めているなんて噂もありますが、大方テキトーな神をでっち上げて信者からお金を毟り取るような、下衆な輩達なのでしょう。


 私はカリナリーベル様へ、日々祈りを捧げております。


 私如きの祈りでも、いつか女神様のもとへと届き、天に召された際にきっと微笑みを賜れると信じてきました。



 ところがです!



 女神カリナリーベル様から賜れるお慈悲は、突然やってきました。



 教会に訪れた、異国の服を身に纏った一人の少女。


 女神様の祝福により嘘を吐くことが出来ない教会内で、彼女は自分は聖女だと話したのです。



 私は大急ぎで、聖女様のために存在すると言われる水晶玉をお持ちしました。


 彼女が水晶玉に触れると、彼女はなんとも神々しい光に包まれたのです。


 時間にしてみればほんの数秒だったと思います。


 彼女を包み込む光が消えると、彼女は左手の甲に七色に輝く聖花の紋章を示しながら、ご自分は虹の聖女だと仰ったんです。



 私が読んだことのある聖女にまつわる文献では、聖花の紋章は必ず、一人の聖女に対して一色。


 七色に輝く聖花の紋章を持つ聖女様が、過去におられたとすれば、確実に世界中で話題になっているはずなのです。



 つまり、目の前にいる彼女は、世界初の虹の聖女様という事です!


 こんな奇跡の瞬間に立ち会えるなんて……女神カリナリーベル様は、なんというご慈悲を私に……



 この奇跡を、早くアイリス教の教皇様へお伝えしなくては!ご領主様へも急ぎお知らせすべきですね!



 彼女は宿がまだ決まっていないと仰るので、オススメの宿をご紹介させて頂きましたが、ふと彼女はとんでもない事をお話されたのです。


 なんと……女神カリナリーベル様と、直接お会いしてお話をされていると……



 何度も言いますが、教会内では嘘を吐く事は不可能なのです。


 彼女の話している内容は、すべて真実なのです!



 青天の霹靂と言えばよろしいのでしょうか……教会にあるカリナリーベル様のご神体の石像ですが、彼女のお話を詳しく聞き、より正確なお姿の像へと作り変える必要があります。



 このような世界初の栄誉を賜れるなんて……



 彼女、いいえ。虹の聖女マリア様は、教会への寄付だと金貨1枚を私へ握らせ、静かに紹介した宿の方へと向かわれました。


 金貨1枚なんて大金を頂けたことに、少し驚いてしまいましたが、それよりも別のことが私の頭の中にあります。



 マリア様は、女神カリナリーベル様のことを親し気に、『カリナ』とお呼びになっていたのです。



 如何に聖女様であろうが、例えば国王様であろうが、カリナリーベル様をそのような愛称でお呼びする事は許されません。



 恐らく世界初の虹色の聖花の紋章を持ち、女神様と直接会い、その女神様を親し気に愛称で呼ぶ……



 マリア様は、普通の聖女ではないのかもしれません。


 もしかしたらもっと……もっと尊いお方なのでは……



 私は小さくなるマリア様のお背中を見つめながら、心に決めたのです。


 私に数多くの奇跡を下さったマリア様。


 もしも私の目の前に、マリア様へ害なす者が現れた場合……全力で必ず『処す』と。



 こうしてはいられません。


 お役目を果たすために、私はもっと教会内でのチカラを付けなくてはなりませんね。




 女神カリナリーベルと()()()()()()()を得たラナーは、ニヤリとした笑みを浮かべるのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ