第10話 女神カリナリーベル再び① 相変わらずですね
スマホポーチに入らなかった魔石を手に持って歩くるのは良くないと、ギルドマスターのアイザックさんが革製の小袋をくれた。ありがたい。
冒険者ギルドを後にし、『自由の翼』の面々に教会まで案内してもらったマリア。
ジン達は宿に戻って見たこともない額の臨時収入の使い道について話し合うそうだ。
危険の多い冒険者稼業な訳だし、今よりも良い武器やら防具が買えたりしたら良いね。
皆と別れ教会の前に立つマリア。
この世界でこれが大きい教会なのか小さい教会なのかは分からないけど、ちょっと飛行機のような形と言うか……地球で言うならダナン大聖堂に似た形で二回りほど大きくした感じだ。
孤児院が併設されてるのかと思ったけど、どうやら教会のみの施設のようだね。
しっかりとした石造りであることから、この街の神に対する信仰心が伺える。
扉をゆっくりと開き中に入ると、荘厳な景色が目に飛び込んできた。
カラフルなステンドグラスはないものの、幻想的な光が教会内に射し込んでいる。
左右にズラリと並ぶ教会ならではの木製の長椅子。主祭壇の奥には女神像のような物が見える。
ふむふむと教会内を眺めながら歩みを進めていると、優しい声の女性から話しかけられた。
「こんにちは。異国の方でしょうか。本日はお祈りですか?」
おお!なんというありがちな修道服!でも深い青色がメインで生地も相当良さそうだ。
30代後半に見えるこの女性はただのシスターって訳じゃなく、もっと偉い立場の人かもしれない。
「お祈りではないんですが、カリナに教会まで来てくれと言われまして」
「はて……今は私以外は出払っているのですが、うちにはカリナという者はおりませんよ?」
「あぁすみません。カリナリーベルに言われて来たんです。私って聖女らしいので」
「……カリ!女神カリナリーベル様!?せっ聖女様!?ちょちょちょちょっとお待ちください!」
バタバタと取り乱しながら教会の奥の部屋へと駆け込んでいく女性。
暫く待っているとこれまたありがちな丸い水晶玉を持って戻って来た。
「はぁはぁはぁ……申し遅れました。私はラナー。司教の立場を頂いております。ようこそ御越し下さいました聖女様」
司教!やっぱりそれなりの立場の人だったか。
「私はマリアです。ラナーさんは私が本当に聖女なのか疑わないのですか?」
「ご存知ないようなので説明させて頂きます。我々アイリス教は女神カリナリーベル様をご神体としており、アイリス教の教会が建てられると女神カリナリーベル様より祝福を賜ることが出来ます。その祝福により教会内では一切の嘘が吐けなくなるのです。」
なんてファンタジー!そんなチカラを目の当たりにすればこの世界でのカリナへの信仰心はとんでもないものなんだろう。
と思いつつも確認は必要だ。
試しに私の名前はカリナですと言おうと試みるが、口が上手く動かせず話すことが出来ない。
「すごいチカラですね。いま自分で確認しましたが確かに嘘を吐くことは出来ないようです。その水晶玉はなんですか?」
「この水晶玉は……聖女様だけの物と言われております。と言いますのも、私は他の聖女様にお会いしたことがなく、マリア様が私にとって初めての聖女様なのです。この水晶玉は祝福を賜る際に現れ、教会の外には絶対に持ち出す事が出来ない不思議な物なんですが、実際の用途は私には分からないのです。聖女様が触れる物とされてはいるのですが……」
色々と説明してくれているが、頑張って興奮を抑えているのが一目で分かる。
水晶玉に触って欲しくて仕方ないのだろう。
「分かりました。触れてみれば良いのならさっそく触れてみましょう」
ゴクリと喉を鳴らすラナーを気にすることなく、マリアがそっと水晶玉の上に手を置くと……
水晶玉の中心から優しい光が溢れてくる。
ラナーの「おお!おおおおお!」と言う声がどんどん遠くなり、マリアは真っ白な空間の中へ。
「きゃー!マリアちゃん待ってた!待ってたよー!!」
背後から聞こえるテンションの高い彼女の声が、なぜか疲労へと変換されてマリアの肩にどっしりと乗ってくる気がする。
女神カリナリーベル……ほんのり空中に浮かび、くるくると楽しそうに回転している。
「そりゃ右も左も分からない世界なんだからカリナの言う通りに行動しますよ。それより大切なことの確認をしたいんですけど、私って自由に地球へ転移できるんですよね?地球って魔法が使えない環境のはずでしたけど、あっちに行った後こっちの世界に転移できるんですか?」
「うん!それは大丈夫!だって創造神様があの場でOKしたことだし、マリアちゃんは地球でも魔法を使えるようになってるよ!あ、地球の神にも了承は取ってあるけど地形を大きく変えちゃうような魔法は控えて欲しいってさ!」
創造神!?地形を変える魔法??
最初にカリナと一緒にいた男性は創造神だったんだ……創造神って最上位の神様だよね?創造神も少し怯えるような地球の神様って本当に何者なんだろうか。
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