夕焼け色の君
「もういやだ!!!!!!!」
彼女はよぼよぼと立ち上がったかと思えば海に向かって叫んだ。そして彼女の瞳からこぼれ落ちた雫が頬を伝って砂浜を濡らした。
「ごめんなさい」
急な大きな音に驚き体をビクつかせている私を見た彼女は罪悪感に駆られたのか崩れ落ちるように座り込みそう言った。
「どうしたの」
縮こまった体を抱き寄せ、風にさらされた彼女の髪の毛に触れてそう言うとしばらく彼女は泣いていた。
「もう、、すべてに、疲れたの、こうやって面倒な事をしている自覚があるの、疲れた、もう、自分にも、」
彼女のふわふわとした髪の毛に触れ、世界と自分に疲れたと言う彼女に正直いうと欲情した。
「面倒じゃないよ、というと君は信じないだろうな。」
「面倒に決まっているもの。」
「そうだな、きっと私は君のことが好きなんだよ。この世の中に、自分に疲れてしまった君も愛おしく思っているんだよ。」
「信じられない。」
「信じなくてもいいさ。まぁ、何かあったら、いや何も無くてもいいからさ、私の元へきてハグをしよう。」
私の胸で静かに瞳を濡らし続けている彼女の頭をなで、私は欲を満たした。
「ごめんなさい、ごめんなさい、」
「大丈夫だよ。」
私が己の欲に溺れているだけだとは彼女は夢にも思っていないようで謝り続けた。可哀想で可愛い彼女を見て微笑んだ。
「何に謝っているのか、なんて聞くのは無粋なんだろうね。」
「もう、ごめんなさい」
「大丈夫だよ。私と共にいる時はもう思考するのをやめてしまおう。」
「止めれるものなら、やめたいの。」
「そうか、それは申し訳がないことを言ったようだ。ごめんね、考え無しだったよ。」
「そんなことを言わせたかった訳ではないの、ごめんなさい。」
「そうだね。まぁきっと大丈夫さ。君は何に疲れたんだい。話したくなったら話しておいで。」
「言いたくないような出来事が日常なの、」
「そうか、それはしんどいな。そんな日常が非日常になれば君はいいのかい。」
「そうなればどんなにいいだろう。」
「どういった日常なんだい。」
「引かれたくないから言いたくないかもしれない。」
「そうか、それはいい事を聞いた。嫌いな奴から引かれたとしてもどうでもいいだろう?ならば君は少しでも私に好意があるのかな。」
私の胸に顔を埋めていた彼女が勢い良く顔をあげた。泣き疲れたであろう彼女の頬がさらに赤く染まった。目を丸くした彼女が愛おしくて微笑んでいると恥ずかしくなったのかそっぽう向かれてしまった。
「ねぇ、私のことが本当に好きなら、確証がほしいな」
夕日に照らされた横顔とひどくいじらしい彼女の発言に思わず唾を飲み込んだ。
「ふ、そうだな。」
私は砂の付いた彼女の手を取り、薬指に口づけをした。