エピソード5 聖遺物戦争 Age35
幾つも転がる岩の塊が塵となって消えて行く。
「クソ!クソ!」
俺はただひたすら地面を殴り続けた、守れなかった、リズも!レイも!クーアも!
「大佐、ラードア国民を守らなければ行けません」
「そうだな」
俺はすぐに天竜へ跨り飛び立とうとした瞬間、頭上にロケットが向かってくるのが見える。
「なんだ、軌道を変えた……テオ?」
深く俯いているせいで顔色が伺えない、そのまま両手の火炎を消し地面に2本剣を突き立てた。
「………のせいだ」
顔を俯いたままぼそりと何かを呟く。
「は?」
「お前のせいだ!」
テオの髪は燃え盛り、左手の炎を強く放射し右足の剣で切り込んで来た、俺はナイフを取り出し受け流す。
「確かにそうかもな、俺が銃を作らなければこんな事にならなかっただろう」
一瞬のうちに他3人は炎で吹き飛ばされ、俺は避けきり拳銃を取り出し打つが、左右に器用に炎を出す事で全て避ける。
「だったらリズの為に死ね!」
日車の様に体を回転させ切り込む、刃は拳銃に触れ粉砕させパーツが地面にばら撒かれる。
「だが悪魔の支配から救った!そのおかげで人口は増えるようになり文明は発展した!」
「勇者が居た!今まで通り守ればよかったんだ!」
俺は両足の連撃をナイフで捌き火炎放射を躱しながら怒鳴り返す。
「その結果がどうだ?数千年にかけて何度も悪魔に攻め込まれただろ!それを俺は魔草の森を焼き払う事で元を絶った!事実悪魔になっていない動物を壁外で見れるようになっただろうが!」
今度は空を飛び回り闇雲に刃を滑らせる、それも全て受け流す。
「だったらなんだ!何をしたっていいと言うのか!?使徒を殺し魔王竜と悪魔の神を呼び出しても!」
「そうだ!俺はこの世界を救ってみせる!前の世界では出来なかったように!」
「前の世界?」
テオの眼前に手榴弾が舞い込む、それからすぐに乾いた爆発音とともに強力な風圧によって地面に叩きつけられ立ち上がろうとした瞬間、青白い刀身が喉仏を撫でた。
「ははは、負けたよ、やめやめ」
「分かってくれたなら良かっ
瞬間無数の木の槍が俺に伸びた、それをテオが焼き尽くし俺もナイフで粉砕する、続いて2つの気配がこちらに向かってくる。
「メイ!」
腹から血を流したメイが俺の前に駆けつけレイピアで何かを受け見えない何かを蹴り飛ばす。
「クソ!」
クレアが姿を現し木の幹に掴まると引き摺られ退避する。
「八つ当たりしてごめんよアミラ、元はと言えばこいつが悪い」
テオは前に居る木の玉座に座りし悪をねめつける。
「邪魔するんじゃねえよ」
「迎えに来れば何を吹き込まれたのですか」
「リズが死んだ、お前のせいで…………」
「そうですか…………
俯くイラの右頬に巨大な橙色の毛むくじゃらな拳が飛び込む。
「またお前か!」
吹き飛ぶイラの前にアウリスが現れる、クレアがナイフを手に取るがアウリスは目もくれず凄まじい速度で通り過ぎる。
「メイ!」
出血が続き顔が青くなり膝を着くメイをその大きな身体で抱きかかえ竜に乗る。
「メイの手当をする!帰るぞ!」
「おう」
飛んで行くアウリスを見送り、俺達とテオは再びイラの方に向き武器を構える。
「こんな事してる場合じゃありませんテオ、リズが死んだのは仕方の無い事です」
「なんだと?お前!」
両足を地面に突き刺し炎を全力でイラに向かって噴射するが木の壁で防がれる。
「待ってください!私のせいで他の脅威が現れてしまいました、リズの事も重ねてお詫びいたします、ですが手を貸してください、あなたの力が必要なのです」
「ふざけやがって、そいつらを倒したら俺はあんたを殺す、分かったか!」
「甘んじて受けいれます、行きますよクレア」
テオは俺を見て頷くとイラの方へ睨みつけながら前へ進む。
「はい」
再び木の玉座に座ったイラはイラつきながら腕を組むテオとクレアを傍に乗せると移動し始める。
「俺達はあのクソツリーを調べたら燃やしてやる、何がしたいのか知らないが戦争なら俺達の迷惑がかからない程度で勝手にやってろ」
「今のを見ればわかるでしょう?スプリガンは燃えずらいですよ、貴方の故郷の木と同じように」
そういって木製の足を蜘蛛のように地面を潜らせ這わせると瞬く間に消えて行った。
「スプリガン?」
――
境界線の空、規則的に直線を保ちながら鳥はこちらへ飛んでくる。
「今からここは私達の指揮下に置かれました」
優しげで美しい女性が等間隔に金細工の縁で飾られたレンガが丸く隔てられたバルコニーから顔を出す。
「なんだお前達!」「馬鹿者この方達は使徒だ!」
2人の兵士へ優雅に近づき、純白のドレスと髪を揺らす。
「貴方はギース様の後任でしょうか?」
「ええ、そうよ私シエラ」
「先程の無礼申し訳ありま
兵士は頭を下げるなり開けた胸元を凝視する矢先肩に人差し指を置かれると、強制的に膝をつかされ今度は額に指を置くと為す術も無く地面にひれ伏せさせた。
「悪いと思っているなら跪いて足を舐めなさい」
シエラはブーツを片足脱ぐと地面に仰向けに寝転がる兵士の鼻をくっつけた。
「はいへん、もうひあけおあひま「ひい!!」
足が少しずつ兵士の顔にめり込んでいき、陥没し続け遂には石畳にヒビが入った 、もう1人の兵士はゆっくりと潰れた頭と流れる血を見て怯えた声を上げる。
「おい!お前は天使の指示に従い配置に着け!」
「はいい!!」
男の大声と共にもう1人の兵士がそそくさに逃げて行く。
「あらイレクじゃない」
「脳漿を足にこびりつけているようじゃルリエ様に失礼だろ」
イレクはそう言うと濡れたタオルをシエラの足元に投げ付けた。
「ありがとってこれワインじゃない」
「水が見つからなかったが酒樽はあった」
その時辺りで爆発音が響いた、鳥から隕石が飛来しているのをシエラは足を拭きブーツを履きながら見る。
「始まったわね」
「そうだ、遊んでいる場合じゃない、行くぞ」
「ええ」
これから、一体どんな壮絶な戦争が起ころうとしているのか。
――
「何事だ!」「悪魔が来た!」「天使と使徒2人が来たと報せだ!我々にも希望がある!」
「着いたか」
人々が火と爆発やビームから逃げ惑う中ラルガは列車の扉を開けながら呟く、そして続々と能力者達が降りてくる。
「ニアが波状攻撃を仕掛けてる、俺達は城へ向かうぞ!」
「悪魔だ!」
兵士達が銃を撃つ、だが前に緑色の障壁が現れ弾丸は火花となった、ラルガ達は全員互いの手を繋ぐ。
「消えた?」「どこに行った?」
兵士達は背後に転移された事を気付くことなく喉元を切られた。
「お前の能力は便利だな、ラルガ」
「今は俺が長だお前呼ばわりするな、魔力は温存させなきゃならん、だが俺の魔力はそろそろなくなりそうだ」
「そうなのか」
ラルガは空を飛び交う脅威を見上げ、溜息をこぼす。
――
「お、そろそろぶっ壊れんだろ」
何発も攻撃魔法で壁や城に撃った為、辺りはもう瓦礫まみれのぼろぼろになっていた、その開けられた穴から何かが飛び出してくる。
「うおっ!」
矢が飛び込み鳥の悪魔が一体撃ち落とされる。
「まじかよ、天使かよ!」
ニアは急旋回し天使の矢を躱す。
「あいつらはええ!」
下に川があるのを見やるに乗っていた鳥を減速させ天使に腹を見せるように方向展開させると乗り捨てる、鳥は天使にぶつかり何体か地へ道連れにした。
「イラ、まだ来ないのか!」
空を投げ出されたニアは両手を胸にクロスし、その瞬間サメ型の悪魔が丸呑みし何処かへ黒い水の底へ泳いで行った。
――
「爆撃は何とか出来たようね、盾持ちは城を囲って、弓持ちはラードア内を飛んで索敵して」
「人間の兵と俺達はどうする?」
「あいつらは天使の奴隷が関の山よ、私達はここでどっしり悪魔共が死ぬまで構えてればいいのよ」
「まあ宝玉の護衛が命だしな、それでいいだろう、それじゃ隣のお菓子屋さんに行ってもいいか?美味そうな匂いがするんだ」
「待って、私も行く!」
――
天使達が列を成し立ちはだかり大盾で壁を作る。
「馬鹿めアミラに爆弾で一気に殺されたからって盾なんか持ってやがんの」
「銃は効かないだろうがこいつはどうかな?」
丸刈りで筋肉質のオークが太い両手を地につけると土から無数の黒い針が飛び出し天使を串刺しにした。
空から無数の矢が飛び数人が倒れる中ラルガはテレポートし避け、1人のゴブリンが空に両手をかざし橙色の楕円形をした膜を張り矢を弾く。
ドワーフが高速で移動しメイスを手に腕を伸ばすだけで天使達の兜を粉砕して回った。
「天使共は大した事ねえな!先進むぞ!」
「聖遺物は俺達のモノだ!」
聖遺物戦争は、まだ始まったばかり。




