エピソード2 神の裏切り Age10
「ちゃんと狙って、息を殺し、森と同化するの」
俺は木の上から弓の弦を引く、鹿の角が生えた熊は木の葉に隠れた俺達に気付かない。
指を放す、矢は熊のこめかみに突き刺さる。
「ブオオオオオオオオオ!!!!」
熊が此方へ突進してくる、もう一度矢を放ち腹へ命中させると倒れ、完全に動かなくなった。
「やったわね、それじゃパパ呼んでく
俺は木から降り草を払い除け、ロープを地面から取り出し握る。
「そうだった、この子熊運べるんだった」
グリシアは掌を顔に当て呟いた、どうやら俺は困らせてしまったようだ。
――
村へ戻ってきた、遠くでクレイがクマを肩に掛けている。
「おーい!グリシアー!アミラー!って」
「運搬用カゴを作りました、本当は車輪が欲しかったのですが」
この森の木はかなり丈夫で質がいい、黒檀の様に硬いのにヒノキの様に加工しやすい、そのためこの村の家の素材として利用され、木の上に建てて橋で木々に繋がれている、こんな建築でも数千年も持つんだからやっぱり優秀な材木だ。
「しゃりん?ていうかいくら俺でも10歳で熊なんか運べねえぞ !」
俺は今10歳、知識を付けた後は筋トレに励んだのだ、この熊を運んでるカゴで岩を載せ体に括り付け森中を走り抜け、鍛錬に鍛錬を積み重ねこの肉体を強化した、異世界にはどんな敵が出るか分からないからな。
「そうだアミラ、丁度いいしばーべきゅう?しようじゃないか」
「そうですね、焚き火を持ってきます、村の皆でやりましょう」
最後にBBQをしたのは何時だろう、ガキの頃父さんと母さんでやった時か、ずっと任務が忙しくて妻と息子のジャックと一度もやっていない、あの時自爆なんてしなきゃ良かったな、だけどこうして新しい家族や村の皆とやっている、それでもやっぱり恋しくて淋しい。
この体でもいい、もう一度あの世界に戻れたら。
――
ふと川を見やると、毛先が青く翠色の綺麗な短い髪に黄金の瞳の美しい少女がいる、それは水面に映された俺の今の姿である。
俺は魔暦2000年、10月1日に生まれた、魔暦と言うのはかつてグリードと言われる悪魔の怪物が神を殆ど根絶やしにした日から始まったらしい。
「エルフ達は神と協定を組んだから、この大地で暮らす事を許されたの」
「へえ」
生き残った神はルリエ、悪魔の手にかかった人類を根絶やしにし大地の奪還と復讐を誓ったという。
400年前エルフは悪魔と戦う事と魔草に近づかない事を条件とし不可侵協定を結んだらしい、だから視力の良いエルフは魔草を見つけると別の森へと転々と暮らした。
魔草というのは物凄く危険な草で紫色に光る胞子を体内に取り込む事で理性を持たず強い力を持つ悪魔になってしまうと言われている、病気みたいなものだろうか。
だが1部は人の姿のままで、かつ強力な魔法を使える魔法使いになる、だけど魔法も使いすぎてしまえば悪魔痕と言われる刺青の様な物が皮膚に現れ、それが広がるとやはり悪魔になるらしい。
とグリシアが教えてくれた、あまり説明説明だと退屈過ぎるよな。
「母様、私は森から出られないのですか?」
「…………貴方はこの村の宝なのよ、いずれパパに何かあったら貴方が村長になるの、皆貴方に期待してるのよ」
エルフは元々文明を嫌うが、魔暦元年から特に別種族から魔草から離れるべく森に暮らすようになった。
困ったな、軍隊を復活させる夢があるのにな、まあ俺が居なくなっても困らないだろうし置き手紙でも書いてくか。
行くとしたら鉄製品を作れる程度の文明がある国が良い、ラードア王国か、でもあそこはかなり遠い、ザポネも島国ですぐに行けない、だとしたらザンドラ帝国か。
すると突然外から光が指した、家を出ると空中から丸い光の円が浮かんでいる、すごく眩しいが何故か目は痛くなかった。
「おい!神の輪だ!」
誰かが歓喜の声を上げる、何かが来るのか?
「ルリエ様だ!」「本当に!?」「初めてだぞ!」
村民が全員外から現れ空を見た、俺も見るとそこには白いレオタードを着た水色の長い髪の女性がつむり目で両手を広げ浮いている、凄く美しい。
「ルリエ様が来たということはグリードの殺し方が分かったんだ!」
「それは本当か!」
何だ、胸騒ぎがする、凄く危険な予感がするが何故か分からない。
その瞬間、ルリエの周りから円中にまだらに金色の何かが光る、それが見えた時には村の皆は全員金色に輝く光の槍によって串刺しになっていた。
俺はひたすらに木々を飛び森から逃げた、どうして、どうして神が協定を結んだはずのエルフを殺したんだ?どうしてだ。
「転生者は逃げました、殺しますか?」
白髪で糸目の優しげな顔立ちの牧師が、天使の羽でルリエにまで羽ばたき淡々とそう言った。
「生かして観察します、彼は我々の目的に貢献出来るかも知れません」
ルリエは祭壇まで下に降り、真っ白な大理石を撫でる。
この世界は敵が悪魔でなく、神なのか?
――
あれから三日三晩ザンドラへ歩いた、いくら前世でのサバイバルスキルが会ったとしても、ナイフも持たずにしかも神様に追われながら生きるのはきつい、異世界の植物もキノコも知らない物ばかり、水も食べ物も無く体がやせ細り唇が渇き裂けていても歩き続け、とうとう倒れてしまった。
足音が近づく、2人だな。
「おい、エルフのガキがいるぞ」
「しかも女だぜ、こりゃ高値で売れそうだなぁ、ヒヒヒ」
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