エピソード7 カサエス竜騎兵 Age35
「君達勇者には使命がある、この世界を我々の物にする、まずはルリエのみならずグリード様を脅かす存在を排除する!」
「うおおおおおおおおおお!!!!」
武器を手に勇者達は雄叫びを上げる。
「アミラ・レッドバードを殺せ!銃などあんな物は必要が無い!」
「あのクソエルフ気に入らなかったんだ、丁度いい」
「人類に、救済を!」
イラの顔色に一切の曇りは無くまるで神話のメシアの様だった。
――
勇者が城から出た瞬間、町中に銃声が鳴り響いた。
「まずいですね大勢の勇者が魔草対策部隊を狙っている」
「内戦勃発か、こんな疫病が蔓延してる水面下で」
争いは何時如何なるときにも起きうる、ましてや武器が超能力ならなおさら起きやすいのだろう。
レイはまだ誰かを助けているのかは分からないが、まずはドワーフを地下基地に避難させた、そのため逃げ遅れてしまった兵士がいる。
「クーア、念の為国民をゴーレムで守ってくれ、力の無い者を傷付けるような事はしないはずだが」
テオも覚醒したしクーアも時間の問題かもしれない、覚醒は個人差があり過ぎて予測が付かない。
「アミラ様、家に近付いている者が現れました」
「よしゲインズ、行くぞ」
――
「本当にこんな所に居るんですかね」
「ここに出入りしているのを見たんだ、俺はグリード様の手下、波動の魔術師!アミラ・レッドバード!今すぐ姿を現せ!」
ゴーグルを付けた筋骨隆々の大男はそんな事を叫び勇者達は取り囲む。
「居たぞアミラ、観念しろ」
中に入ると暖炉を背にして椅子に腰掛け威圧的な態度で待っていたマイクロビキニ姿の標的は姿を現す。
「さーて、ザンドラの為に死んでもら
ゴーグルは近付くと肌に蜘蛛の糸が引っ掛かるのが気が付いた時には、小屋ごと吹き飛び炎が巻き上がった。
「やはり自分が作った隊長人形は本物と遜色無かったようです」
遠くから見ていたゲインズは自慢気な様子で作戦の成功を喜んでいる。
「ひとつ聞いていいかゲインズ」
「はい!なんです?」
「あの人形でファックしてないだろうな」
「えファッキュー?してしてませんよ!」
「…………OMG」
爆風が晴れると、木っ端微塵になった小屋の跡にはモヒカン男が佇んでいた。
――
「なんだと!勇者が爆破に巻き込まれて壊滅しただと!!」
コッドは肘掛を叩き壊し怒鳴り上げる、横からダクトテープが現れる。
「お前はルー、いやラウルか、何の用だ」
コッドは受け取ると取れた肘掛けをグルグル巻きにして直しながら問いかける。
「私がやります」
「ああ任せた」
コッドはラウルにテープを差し出すが受け取らない。
「いいえ、あの勇者殺しの始末をです」
――
「おいヒョロヒョロエルフ!その綺麗な顔面叩き潰してやる!」
「それはもう御免だ」「え?隊長の顔面ぶん殴った奴がいるんですか!誰で
俺はRPGをぶっ放す、あの爆発で死なない奴が居たのは知っている、それならばプランBだ。
「おらよ!」
モヒカンは弾頭を掴み投げ返してきやがった、近くで爆発し吹き飛ばされる、地面に叩きつけられるが幸い砂だっため助かったが、耳鳴りが止まらない。
その隙にモヒカンが俺に殴り掛かる、避けて距離を取り銃弾を浴びせるが弾かれた。
「まじかよ」
爆発が効かなかったのはこの為か、表面だけなのか、それとも体内全体までなのか。
「お前、鉛の弾は喰った事はあるか?」
「は?ねえよ!」
飛びかかるモヒカンの口にフラッシュハイダーをぶち込んだ。
「あがっ!」
「召し上がれぃ!」
全弾口の中にぶち込むが、貫通した手応えがない。
「ううわ、まっず!ぺっぺ」
モヒカンは膨らんだ口いっぱいの薬莢を盛大に吐き出した、体内までも魔法が通っているようだ、ケツの中に爆弾をぶち込んでも殺せない、かなり厄介な敵だ。
「クソ」
「殺す!!!」
すぐそこまで拳が飛んでくるが、ゲインズが盾で防ぐ、盾がひび割れ粉砕する。
「馬鹿な!これはミスリル製だぞ!」
「俺様は無敵の勇者だ!お前の脳髄ぶちまけてや
モヒカンは何か言いかけるが、痙攣し始め倒れる。
「なんだ……これ!…クソ!こんな所で!」
無敵とやらは状態系の能力だろう、あれらは常時魔力を消費する為、覚醒までの時間が早まったのだろう。
「チクショウ!動け動け動け動け動け動け動け動け動け!!!!!!
モヒカンの願いは届かず頭をぶち抜かれた。
馬鹿め、俺なら攻撃を受けたり殴る瞬間のみ能力を発動させる。
「隊長!他の戦っている隊員の援護もしましょう!」
「そうだ
ゲインズが急に抱きつきそのまま飛び込んだ。
「どうした!」
俺の髪に鼻を当て息を荒くする顔をどけ飛んだ地点を見ると、ぽっかりと穴が空いていた。
「ラウル!」
彼はルーゲンの弟だ、あらゆる物を破壊できる金色の物質を作り上げる使徒に似た様な力を持っていて、地面を巨大な半円形の波動によって大きく抉ったようだ。
「お前も失うべきだお前自身も!」
兄を失った憤りを燻らせ、この戦乱を機に俺を殺しに来たのか。
ラウルは光の針を無数に構築させこちらに降らせる、俺はナイフの柄を強く握った。
――
「ちょっと待ってアミー」
俺がザポネからザンドラへ発つ際、船に乗る間際天崎に呼び止められた。
「ナイフか、忘れてた」
竜族との戦いの後ザポネの技術によってナイフを改造してもらう為貸してたのだ。
「これ見て」
天崎はそう自信ありげな声で囁き周りを見渡してからナイフの柄にあるボタンを押すと、何と柄が伸び槍となったのだ。
「おお!スペツナズナイフか!」
「ちょっと違うけどね、役に立つといいね」
「ありがとう」
――
伸びたナイフを回し針の雨を潜り抜け、ラウルの元まで詰め寄る。
「兄さんの仇だあああああ!!!!」
光の槍と剣を出し、俺の攻撃を受け流し剣を突く。
「なっ!」
だが俺が拳銃を取り出し腹を撃ち抜く方が早かった、武器は消えラウルは倒れる。
「確かにルーゲンは俺がラードアに行ったせいで死んだかもしれない、だがもうこれ以上多くの人を失う事は許してはいけないはずだ、共に止めようこの戦争を」
――
「コッド・マグナス!」
「来たなアミラ…負けたかラウル」
拘束されゲインズに銃を突き付けられているのを見て、戦況を察する。
「お前達情報の扱いが下手くそだな、誰がどんな能力を持っているかさえ知っていればいくらでも対処出来る」
「あなたを殺せば全て解決よ」
イラが手をかざすと周りの茨が一斉に俺達の方に向き、コッドが両手から雷を出し構える。
「そこまでよ」
巨大な火の玉が現れ、天崎達が現れる。
「竜騎兵部隊が勇者達を制圧した」
「竜騎兵?」
「私は天竜だ、そなたについて話はよく聞いている」
「そうか、よろしく」
緑髪の女性が俺の前に現れる、身体だけでなくいろいろでかいな。
「元は竜族の者だった栄竜と意見が食い違い追放されてしまったがそなたが倒してくれたおかげでザポネに戻る事が出来た、私が竜族達を従え天崎達と共に竜騎兵を結成した」
赤く伸びた目尻は優しく俺を見つめ手を差し伸べられ、握手を交わす。
「良かったねアミー」
天崎は少しにやけている。
「うーん?何が、魔法と銃でザンドラは分裂する事になるだろうコッド、お前と私が別のやり方で国を統治しよう」
「アミラ、この世界を統べる力は銃ではない」
コッは手から雷を放った、俺はナイフを伸ばし地面に突き刺す。
「何!」
雷は槍に集中し攻撃を喰らうことは無かった。
「避雷針だ」
コッドの胸に撃つ、そのまま真後ろに倒れ伏せ、血を吐く。
王冠が彼から外れ転がる、周期的な金属音がそれを止める時、彼の体が光として窓へ飛び去った。
「神話の世界か、俺は退化を許さないぞイラ」
次銃口が向いたのはイラ。
「エルフがそれを言うのはかなりの皮肉ね」
茨を延ばし突き刺そうとする、俺が引き金を引くより速い、転がり避ける。
「イラ、お前は次なる時代に必要無い」
机に隠れ、玉座の裏にて隙を待つ。
「神の成り損ないめ、結局哀れな欠陥品よ」
イラの放つ言葉の意味は分から無いが茨で竜騎兵達を圧倒する様は何処か強さと憎しみがこもっている、それを証明するのはこの血に滾る誰かの熱だ。
彼女が大勢の敵を攻撃するべく無数の茨が展開してくれたため、水源を狙う必要も無く頭を狙う、だが鉄と金で王座が熱を帯び始める事で熱さに手元を狂わされた。
「ジェイク!飛び込んで!」
天崎の金切り声の次溶けた鉄が零れる、前に狐火が現れ俺は飛び込み天崎の元へワープする、俺を燃やそうとしたのは。
「テオ、どうしてだ」
「僕は勇者だ、帝王を信頼していたのにあなたは殺した」
テオはそのままイラの元へゆっくりと歩む。
「お前にはリズが居る、リズはどうなる?」
「男の子ならリオ、女の子ならライザ」
彼は目に涙を浮かべ早口でそう唱える、イラ達は茨の玉に包まれ何処かへ飛んで行った。
――
あれから2年、ドワーフの方たちの協力によって血清が作られ、疫病は完全に収まった。
だがそれでも国民の半数以上はレイの能力を賛同した、救った数ではドワーフの方が圧倒的に多いのに。
超能力と銃、東と西で国は分断されたがアルドラはこちらが手に入れた。
西側諸国の命名は最初アメリカだったが、イギルの強い意志を感じた為カサエスに決まった、ここから新たな、激動の時代がいよいよ始まるのだ。
ここまで読んで頂きありがとうございます!長らく投稿してない間も前話を読んでくれている人が居たので本当に嬉しい限りです、もっと早く書けるように頑張ります。
シーズン3からは更に銃と魔法の戦いが激化します、気になる方はブクマと出来れば評価をお願いします、広告の下にある星マークを1番右を押して全てを光らせてください、評価してくれたら無敵になれるかも、10秒間だけ




