第6話
今日から連載します♫
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加納口の戦いからひと月。
吹く風も冷たくなり、一般の家庭では本格的な冬支度が始まる季節。
「町の活気がない…。そして…男手が足りてないか…。」
吉法師は町を見ながら、小さな声でそう言った。
ここ那古野城周辺から戦に出陣したのは、およそ500名。その全てが戦死という結果になった。
もちろん、その中には家庭を持つ者もいる。残された者は夫がいない冬を越さなければならない。
「食料や薪なども配るのには限りがあるからな。今年は作物がよく育ってくれて良かった。」
ここにも戦の傷痕を感じる吉法師であった。
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その夜。
吉法師はひとり考えていた。
(前世の技術やスキルがあるからといって…いくら戦闘能力が高くても、数千•数万の敵に私1人では勝てない。)
転生してもらう時に3つのスキルを神様に授けてもらえた。ひとつは”身体強化”。その名の通り身体能力を上昇させる効果を持つ。しかし子供の身体と、前世よりも地球全体の身体能力のベースが低いせいか常時発動は出来ない。
「「「戦の無い世の中か…。」」」
決意したのはいいものの、果てしない道のりだと感じている。
前世では人と人では争いは起きていなかった。魔王を頂点とした魔族と人族との戦い。決して相容れぬ存在同士だった。
だが今は?
人と人同士。
話せば分かり合える。
無駄な命を散らせる事もない。
甘い考えだと分かっているが、戦いたくないのもまた事実。
それでも吉法師は戦力を集めなければ、奪われる事も知っている。
「よし。まずは”力”を更につける。そして信じ合える”仲間”を集めよう。1人では出来ない事もあるからな。」
この時、吉法師は前世の仲間達を思い浮かべていた。
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〜古渡城〜
吉法師の父でもある信秀も戦の後始末に頭を悩ませていた。
「斉藤道三に、斯波氏対応か…。して政秀よ。どうだ?道三の所へ行ってくれぬか?斯波氏の対応は私が受け持つ。」
「はい。お任せください。親方様。」
この時、那古野城から2番家老でもある平手政秀が古渡城に呼ばれていた。
内容は斉藤道三との和睦交渉。戦には敗れた形だが実状は織田信秀の戦力が大きく削られたのみ。斯波氏や他の織田家が健在な今は、すぐに斉藤道三が動く事はない。それでも将来を考え和睦に持ち込むのは急務とも言えた。
そして冬に入る季節。
平手政秀は1人…斉藤道三との和睦に動き出したのである。