第30話
今川軍の撤退という形で幕を下ろした信長の初陣であったが、その結果は周りの国にも知れ渡る。
〜駿河ノ国〜
今川義元。
「ぐぬぬぬ。指揮を取っていたのは信秀の息子だとはな。”信長”と言ったな…名は覚えた。今川に喧嘩を売って、このままでいられると思うなよ。」
既に自国に帰還していた義元は、戦の結果を知り激怒していた。
すぐにでも兵を送り込みたかったが、北条氏康と武田信玄との和睦はあれど、あまり領地を広げては逆に隙が生まれるのも確か。
「当初の目的は達した。まずは松平家に使者を送れ!こちら側に引き込む!」
「はっ!!」
この時の義元は、武田家の動きを最も警戒していた。
それもあって三河の先、尾張まで本格的に侵攻するのを控えた。自領が手薄になれば何が起こるか分からない。
「この屈辱…必ず。」
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〜美濃ノ国〜
斉藤道三。
「ハハハッ。信長が噂通りの優秀な子だと調べはついていたが。初陣で数の不利をものともせず今川軍を撤退とはな。」
普通の初陣では考えられない。
そんな不利な戦に出陣させるのもおかしいのだが、出陣させたということは信秀が大丈夫だと思ったからともとれる。
「元服も迎えた。そろそろ帰蝶を嫁がせてもいいかもしれんな。その前に一度会っておきたいものよ。どんな怪物なのか……ハハハッ。」
道三は、娘の帰蝶を呼んで信長の事を話した。
この時代の女性は政略結婚などは普通にある。もちろん帰蝶自身も覚悟はしていたし、将来嫁ぐ先を選べないのは分かっていた。
それでも父の道三が話した信長の事は、気になって仕方なかった。
(私も…一度お会いしてみたいです。)
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〜甲斐ノ国〜
武田信玄。
「クハハハッ。」
部下から報告を受けた武田信玄は笑っていた。
「今川は”信長”という倅に逆に助けられたな。最近の今川義元は少々目に余る…領地をこれ以上広げたならワシらが動いておったわ。のぉー勘助。」
「はい。しかし…面白い若者が出てきましたね。これ以上、今川が調子に乗らないように尾張には頑張ってもらわないと。」
「そうだな。これで少しは大人しくしているであろうよ。その間にワシらは……。」
「はい。上杉ですね。」
武田信玄。
”甲斐の虎”と呼ばれた彼の率いる武田軍は当時最強と言われ、その武勇は日ノ本に轟き、名を聞いただけで恐れさせるほどだった。
信長の初陣をキッカケに周りの大物達も動き出す。それはのちに大きな波となり、信長に重大な試練を与えていくことになるのだが、まだ先の物語。
これで第2章が終わりになります♫
皆さんどうでしたか?
第3章を見たい、気になると感じたら、いいね、感想頂けると嬉しいです♫力になりますので。
続きは少し時間を空けさせてもらいます。




