第20話
竹千代が那古野城に来て10日が経った夜中。
信長は目を瞑り座禅を組みながら、集中していた。ここは城の離れ…竹千代を泊まらせてある建物がある。
「……来たな。」
そして…侵入者を感知した。
「複数いるな。おそらく斯波氏が雇った暗殺者。政秀、恒興、準備はいいか?」
「「はい。」」
当然、竹千代が人質として那古野城に来た情報は斯波氏に流れている。
そして斯波氏は父信秀の帰りに合わせて古渡城に来ることになっていた。
斯波氏にとっては信長と竹千代は将来邪魔な存在。父の信秀がいない今、食いつく可能性が高いと警戒していたが案の定、刺客を送り込んできたか。
「グハァ!!」
結局、暗殺者は3人。
信長がひとりの暗殺者を拳で無効化すると、政秀と恒興は刀で斬りつけた。
「さてと…。息があるのはひとりだけ。何かあるごとにこうも刺客を送り込まれちゃ迷惑だ。そろそろ相手にも分からせてやろうか。」
気絶した暗殺者を起こし、政秀が脅すと、震えながら答える。やはり斯波氏が命令したみたいだ。
「どうするので?」
「決まっている。直接、斯波氏の所へ行こうと思う。今が好機…本音を言えばひとりで行きたいが…。」
「それは無理な相談ですね。」
「だろうな。それなら3人で行くか。暗殺者も3人だ。同じように変装すれば丁度いいじゃないか。」
そして居場所を吐かせると、斯波氏がいる寺へと向かった。
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「護衛は5人程だな。夜が明ける前に終わらせよう。」
「「はい。」」
政秀は右手から、恒興は左手から、信長は正面からと、別々に侵入した。
護衛達も全員が起きている訳ではない。
各箇所に1人の配置だが、夜中で気も抜けている。それぞれ音もなく一撃で無力化していく。寝ている残りの2人は政秀が始末したようだ。
(しかし…恒興も成長したな。)
そして、目的の部屋の前で合流したのであった。
「すぴーっ。すぴーっ。」
手で簡単な合図を出す。
まさか目の前に敵がいるとも思わず、独特な音を出しながら寝ている斯波の者。
「この者は?」
「斯波義統です。」
政秀と小さな声で会話すると、信長は暗殺者が使っていた短刀を片手に持ち、首に置く。
そして…もう片方の手で口を塞ぐと、流石に目を覚ました。
「ん…ん?ん!?んーんー。」
現状を理解出来ていないのか、叫ぼうとするが短刀を見ると黙り出した。
「騒いだり、変な動きをしたら殺す。分かったら頷け。」
コクリッ。
「よし。今回、竹千代を狙って暗殺者を送り込んだのは知っている。それは全員始末した。」
それを聞くと目を見開いた。
これで織田家の者だと分かったはずだ。
「先に仕掛けたのはそっちだ。殺そうとして報復が怖いなどと戯言は無しだ。こっちは何度も暗殺者を送り込まれて迷惑なんだよ。」
斯波義統が震えているせいで短刀が首を少し切り、血が滲み出る。
「んーんー。」
「そんなに話したいなら、少し話をしよう…護衛達もいないことだしな。」
そっと短刀を離すと、義統は口を開いた。
「命だけは…助けてくれ。」




