第14話
それはいきなりの報告だった。
「今川からの使者が父信秀の元に。」
那古野城にて一報を知らされた信長は至急、父信秀の元に使いの者を送る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜古渡城〜
すぐに対応する信秀。
「なっ!?」
今川側の使者の内容は、10月中旬に三河への”同時侵攻”の提案。これには信秀は驚いた。
今川軍が、東三河の今橋城を攻め。
織田軍は、この動きに連動して西三河へ出兵し、安城城を攻める。
無事に制圧すれば義元と信秀の間で三河を分けあおうというのだ。
これには、すぐに答えは出ないと周りの者達も思った。しかし信秀が言った第一声は。
「了解した。今回の戦は織田と今川で共闘といこうではないか。」
信秀が言い放った言葉には、その場にいた全員が驚愕の表情を浮かべていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
那古野城にて同時侵攻の話を聞いた信長。
「確かに…領地を奪うという点では、考えれば考える程…良い案ではあるが。今川を信用してもいいのか?それに即答した父にも気になる。」
織田家が攻めるのならば、松平家と事を構えなければならない。
5年程前は尾張と三河で強く対立していたが、現状は織田家の力を恐れた松平家は、昔の遺恨を忘れて一見良好な関係を見せている。まぁ決して信用はしていないが。
だから今回の話がなかったとして、今川が三河に攻めたと知っても、織田家は援軍に向かうことはしなかったであろう。
しかし…三河を同時に攻めるとは考えもしなかった。それもこの案は今川から持ち掛けた案。
例え共闘しなくとも、天変地異でも起きない限りは今川の勝利であろう。
「それならばなぜ?この話を?今川に何かメリットが?」
信長は1人考える。
そしてひとつの予想を導き出す。
「北条氏康と武田信玄との和睦が鍵…。今川は和睦を結んでいる内に領地を広げたいと急いでいるのか…。今川だけで三河を攻略するのには時間がかかる。だからといって北条や武田に助力をこう事はしたくはないだろう。それで我が織田家を選んだ訳だ。織田家なら多少力をつけても、いつでも潰せるからと。」
「「「舐められたものだ!!」」」
おそらく父は、その意図にいち早く気が付いた。
「果たして父の狙いは?」
約束の10月中旬まで、およそひと月。
元々、今川の動きに注意していた事もあり、戦の準備は出来ている。
「政秀、恒興!!私は至急父の元に向かう。詳しい話を聞かなければならないからな…ついて来い。」
「「はっ!!」」
信長は2人を引き連れて古渡城に向かうのであった。




