第12話
時は遡る。
信長は、転生する前に”3つ”のスキルを持つ事を許された。
1つは”身体強化”。
そして残りのスキルは……。
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転生前。
「そうか。1つ目は”身体強化”か。これはワシも賛成じゃな。どこの世界にも多かれ少なかれ争い事は起こる。身体能力の向上は使い道も多い。残る2つは何にするのじゃ?時間はいくらでもある、ゆっくり考えるといい。」
神様が言ったように、1つ目はすぐに決まった。だが残る2つは中々決まらない。
理由は転生先に魔力が無い世界だと言われたからだ。勇者の頃に使っていたスキルは魔法関係のスキルが多く、魔力を使わないスキルは癖のあるものばかり。
「神様。転生先は魔物がいない世界なんですよね?それならば住んでいる種族は何種類程になるのでしょうか?」
「ん?ああ…すまんの。説明不足じゃったわ。転生先で知能が高いのは人族のみじゃ。お主が知る魔族や亜人族、獣族などといった者は、次の世界にはおらん。それに身体能力は、お主がいた世界よりも数段劣ると考えてくれ。魔力やスキルがない純粋な身体能力だけだからの。」
「そうなんですね…。」
そうなると…剣や槍などの武器は普通にあると言っていたので、剣術系や槍術系のスキルを選んでもいいと思ったが、話が違ってくる。
身体能力のベースが低いのなら、”身体強化”だけで十分だろう。
「それなら…2つ目は、このスキルはどうでしょう。魔王討伐の旅では使用する事はなかったスキルですけど、これがあれば楽しいと思います。」
「ほぉー。面白いのを選んだの…ふむ…いいのではないか。勇者の頃の経験と身体強化のスキルがあれば戦闘系のスキルは必要ないじゃろ。」
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2つ目のスキルは、勇者の時代には出来なかったあるスキルを選んだ。
それが情報収集に使えるとは思わなかったが、今…信長が2つ目のスキルを使用したのである。
「「「調教師。発動!!」」」
その名の通り、動物を使役するスキル。
前世から動物が好きで、動物と心を通わせるのが好きだったのだが、魔王討伐の旅では、そんな暇はなかった。
だから日ノ本に転生したのなら、前世で出来なかった…動物といっぱい触れ合うのに便利だろうと選んだのだが…。
「こっちにきて…まだ馬や犬にしか”調教師”のスキルを使用していなかったしな。」
そう言って信長はある動物にスキルを使用する。
バサッバサッと羽ばたくそれは、用意してもらった鷹である。
「まずは名前を付けないとな…んー。お前の名前は”ルーク”にしよう。その堂々とした姿にぴったりだ。前世では光といった意味を持つんだぞ。」
スキル”調教師”の能力は、意思疎通など命令を聞かせる他にも、集中すれば視覚、聴覚、嗅覚の共有が可能だ。
しかし…どんな生き物にも使える訳ではない。ある程度の知力がなければ発動させても意味はない。例えば虫などの小さい生き物や産まれたばかりの生き物なんかは、それにあたる。
「よし。これでルークがいれば空から情報を得られる。まずは練習だな。」
そう言ってルークを青空に羽ばたかせた。




