プロローグ
私が歴史の中でも特に好きなのが”戦国時代”。そこで史実も織り交ぜながら転生作品を作れないかなと思って、試しに投稿してみました。
本当はあまり知られていないマニアックな武将を主人公で考えていましたが、そうすると暗躍系の話が中心になってきて…ちょっと違うかなと思って辞めました。
色々考えた結果…まずはメジャーな”織田信長”でいきます。よろしくお願いします。
私は勇者として魔王を倒す為に仲間と旅を続けてきた。
そして、あと少しで魔王を倒せる所まできた。
「あと一撃。あの剥き出しになっている、魔王の核に攻撃を加えれば倒せる。」
「でも……それじゃ貴方も一緒に…。」
「いいんだよ。誰かがやらなくては世界は救えない。皆んな体力の限界だ。勇者である私が最期の止めをさす。」
そう言って、勇者は魔王の核に剣を突き立てた。
「これで世界に平和が訪れる。皆んなありがとう。ここまで一緒に旅が出来て楽しかった。」
直後、魔王の核が壊れ大きな爆発が起こる。
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「はっ!!」
勇者が目を覚ました。
「私は魔王と共に死んだはずでは?」
自身の身体を見渡しても、傷もない。火傷すら負っていない。そこで周りを見ると真っ白な空間が続いている。
「そうか。そうだよな。あの爆発で生きてられる訳がない。きっとここは死後の世界だな。」
1人考えていると、いきなり声が聞こえてきた。
「勇者よ。お主のこれまでの行いを見ておったぞ。私は神ゼノン。見事に魔王を倒してくれた。これで世界は平和になる事だろう。」
「神様でしたか。勇者として当たり前の事をしたまでです。神様にお会い出来て光栄です。」
「ふむ。それでじゃが、世界を救ってくれた褒美に勇者を生き返らせる。転生させると言った方がいいかの。どうする?流石に同じ世界に生まれ変わる事は出来ないが、他の世界なら可能じゃ。」
「そうですか。仲間には会えないのですね。……残念です。他の世界がある事に驚きはありますが、それでも生き返れるのであれば、今度は勇者の役目など気にせずに暮らしてみたいです。お願いします。」
「分かった。魔王や魔物などいない、そのような世界に転生させる。赤子からになるが、その世界の言葉は分かるようにしておくからの。あとこれは特別じゃが、勇者の頃のスキルを3つまで持たせて転生させてあげよう。ちなみに転生する世界にはスキルもないし魔力もない。だから魔法の類は使えないから気を付けてな。」
「ん〜。3つですか。それなら使い勝手の良い身体強化と…………の3つでお願いします。」
「ほう。それでいいんだな。分かった。」
「はい。何から何までありがとうございます。」
「それでは転生させるぞ。地球という世界じゃ。では達者でな。力を上手く使って、次は早死にするでないぞ。」
「はい。」
身体が光り出した。
転生が始まっているのだろう。
そこで意識が移り変わった。
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1534年6月23日
尾張勝幡城
「オギャーオギャー。」
(どうやら転生が完了したみたいだな。)
「男の子だぞ。可愛い赤ちゃんだ。良く頑張ったな。」
「えぇ。男の子なら名前は決めてあったの。」
「あなたの幼名は『吉法師』よ。」
こうして転生が完了した。
優しそうな父や母。
(ここから新たな人生が始まるのか。)
吉法師、後の織田信長と呼ばれる男が誕生した瞬間であった。
それから10年。
吉法師は、健やかに成長していった。
勉学、剣術、馬術など幅広い分野で優秀な成績を残し、尾張では文武両道の若武者として有名であった。
丘の上に寝そべる吉法師。
隣には剣を振る1人の男。
「なぜ人間同士で争うのか。なぁ政秀よ。」
(魔王や魔物がいないと言うのに。)
「そういうものです。戦わなくては尾張の国が奪われますぞ。若はまたそんな事を言って。成績は優秀なのに、戦いたくないと言う。教育係として困ったものですな。」
そう言ったのは平手政秀。
吉法師の教育係として、幼少の頃からの付き合いだ。
「私は奪うのが嫌いなだけだ。もし尾張国を奪う者が現れたなら、剣を振るおう。」
「はぁ。父信秀様に怒られますぞ。そんな甘い考えでは。」
「父上も分かってくれている。それよりも今日の稽古は終わった。町へ行こう政秀。」
吉法師は町へ向かい、民達に困ってる事がないか見回る事が日課になっていた。
「あっ!若。この前はありがとうございます。お礼に今日採れたての野菜です。」
「若。今日も良い天気ですね。」
「若様。見て下さい。言われた通りに間引いてみたら、こんなに大きな野菜が出来ました。」
「若。魚釣りいこ。」
「若は領民の皆んなに好かれていますな。」
囲まれる吉法師を見て政秀はそう言った。
「政秀。私は子供達と一緒に魚釣りに行ってくる。先に帰っていいぞ。日が落ちるまでには帰るから。」
「若。あまり領民と近しいのも問題ですぞ。」
「何言っておる。政秀が言ってたではないか、領民あってこその国だと。夕飯は私が釣った魚だ。楽しみにしておけ。はははっ。」
「そうですな。期待せず待ってますよ。若は釣りだけは苦手ですからな。」
その日の夕方。
「政秀め馬鹿にして、見ろ。今日はこんなに釣れたぞ。」
かごいっぱいの釣った魚を抱えながら、那古野城に戻る。
そしてすぐに政秀が吉法師の元に来る。
「どうした?そんなに魚が食いたいか?」
「違います。若、戦が始まりそうです。家老の皆が集まっております。」
「そうか。すぐに行く。」
吉法師は父信秀に尾張那古野城と4名の家老達を譲り受けていた。
家老とは、武家の家臣団の内最高の地位ある役職。
合議により政治•経済を補佐•運営をする。
家老
林秀貞 1番家老
平手政秀 2番家老
青山信昌 3番家老
内藤勝介 4番家老
吉法師も加わり部屋に皆んなが集まった。
1番家老、秀貞が最初に声をあげる。
「若様。報告します。信秀様は尾張国中に要請して兵を集め、美濃へ戦を仕掛けようとしております。」
「美濃…斉藤道三か。尾張国中と言ったな。自ら動くとは…父上も本気なのだな。」
「そのようです。しかし若様は元服してませんので、戦場には行けません。」
元服、成人になったことを示す儀式。
「それなら、すぐ元服の儀を行う。準備せよ。」
吉法師の決意が分かる。
しかし1人の家老が待ったをかけた。
「若様はまだ10歳。元服の儀は早すぎます。ここは私、青山信昌に行かせて貰えませんか?必ずや信秀様と、尾張国を守ってみせます。」
沈黙が流れる。
それを破ったのは吉法師。
「分かった。焦りすぎた…すまぬ。10歳の私が戦場に行っても誰も命令など聞いてくれぬしな。信昌!父上と尾張国を頼んだぞ。」
「はっ!!」
こうして那古野城からは、3番家老の青山信昌が戦に向かう事になった。
天文13年9月22日(1544年)
後に加納口の戦いと呼ばれた合戦。
この合戦の結果が吉法師の人生を大きく変える事になる。