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第2話 空間を駆ける電撃の一撃が敵を倒すのだ

「……ふうぅ……」


 ダンジョンの中は思ったより薄暗かった。それに少し肌寒い。厚手のジャケットでも着てくればよかったぜ。

 でも、ドローンに貯金のほとんどを持っていかれたから服装が私服しかない。

 これが個人じゃなくて事務所に所属していたら、装備一式そっちで貸してくれるんだろうなぁ。個人配信の弱みだぜ。


<っていうか何? 君、護衛とか雇ってないの? 一人でモンスター退治までするの? お金ないんだなぁ>


<やめとけやめとけ。金のないやつが一発逆転狙って個人配信とかするけど、結局金がないとスタートラインにも立てないぜ?>


「い、いやですねぇ。俺の場合、ちょっとのお金さえあれば、あとは余裕で巻き返しとかできるんで。できるはずなんで! まあ見てくださいよ。見た上で判断をして欲しいなぁって。ほらさっきも言ったけどこれ初回配信なんで、もう少し広い心でね?」


 くっ、こいつら……! 俺が折角気分良くやっているのに、どうしてこうも邪魔をするんだ。

 まあいいさ、今はいくらでも好きに言ってろ。お前たちは今日から俺が作り上げる伝説の目撃者になるんだ。最古参のファンとして未来永劫そのことを誇りに持つようになるんだよ。


 俺は近所の不良中学生から巻き上げたバタフライナイフを片手に、ダンジョンを突き進んでいく。

 意外とモンスター出てこないなあ、なんて思いながらも華麗なトークで場をつなぐこと数十分、ついに第一モンスターを発見したのだ!


「皆さん見てください! これぞ運命の相手、俺の初回配信に相応しいモンスターです! あのトロトロで緑色とした見た目、まさしくスライムですよスライム!!」


 半ばやけくそ気味に盛り上げてみたが、スライムなんて弱点のコアがむき出しになってる最下級モンスターだ。これを相手にどうやって視聴者を楽しませればいいんだ? いや、やるんだよ。俺のスマートな立ち回りで盛り上げてみせるんだ!


「さーて、それじゃ早速戦っちゃいますか! まずは小手調べにっと」


 そう言うなり俺は素早く駆け出して、勢いそのままにナイフで切りつけた。


「よっしゃ! いいぞ! このまま一気に畳みかけちゃるもんね!!」


 だが、そこで俺はとんでもないミスを犯してしまった。


「……あっ!?」


 足元の段差につまずいて盛大に転び、手に持っていたナイフを落としてしまうという致命的な失態である。


「ちょ、ちょっとタンマ! お互いここは仕切り直してよーいどんでまた始めようぜ?! な? な!」


 なんて言ったって聞いてくれるわけもない。やつはそのまま俺の若々しい肢体に襲いかかろうとして――そのコアを撃ち抜かれた。


「あ!」


 振り向いた先には小型ドローン。

 そういえば忘れてた、あのドローンは持ち主の警護の為に電撃を飛ばせるようになってるんだっけ? この機能も値が張る要因だった。


 ちなみに投げ銭システムと連動していて、払ってもらったお金の分だけ電撃の威力が上がるように設定していたことを今思い出した。

 俺からは見えないが、その説明は視聴者の動画概要欄に自動で書かれるらしい。


<危なっかしくて思わずお金払っちゃった。怪我はない?>


<このドローン面白いシステムだなぁ。他で使ってるのまだ見た事無いから、これが見れただけ視聴してよかったかも>


 キョトンとしてしまったが、それも一瞬で立ち直り、気を取り直して見せた。


「いやはや思わず油断してしまいました。援護の方ありがとうございます! おかげでまだまだピンピンしてますよ! では改めて探索再開といたしましょう!」


 これは意外とつかみに成功しているのでは? 

 そんなこと思いながらも、再び足を前へと進み出すのであった。


 その後は俺の快進撃。華麗な体裁きに視聴者の投げ銭ボルトの連携で、バッタバッタと倒れていくモンスターども。


 やはり天職なのでは?

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