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担任の先生と妹①

 喫茶店に移動してきた。


 木製のシックなテーブルに案内され、俺が椅子に座り。

 篠宮先生とチサキがソファで隣り合わせで座っている。


 どっちが俺の隣に座るのかで軽い口論が勃発したためだ。


 折衷案として、篠宮先生とチサキがソファに座ることになった。


「……まず初めに聞きたいんだけど、なんで誤解を生みかねないこと言ったんだよ」


 俺はコーヒーをちびりと含んでから、単刀直入に切り出す。

 うっ、苦いなこれ。


「お兄ちゃん、絶対騙されてるから」

「は?」

「こんな美人が、お兄ちゃんの彼女なわけないじゃん。そもそも、お兄ちゃんに彼女ができること自体おかしいんだから」

「し、辛辣すぎないかな」


 さすがに目から汁が出てきそうだ。


 そりゃ、モテない人生だったけど。

 妹からもらったバレンタインチョコを、一個とカウントする程度には残念なやつだけど。


 俺が言葉の刃に切り裂かれていると、篠宮先生が困ったように表情を強張らせながら。


「誤解してるよ、チサキちゃん。私、タクマくんのこと騙そうとか考えてない。ちゃんと、真剣に交際してる、から」

「馴れ馴れしく名前で呼ばないでください」

「あ、ごめんね。じゃあなんて呼べばいいかな?」

「呼ばなくて大丈夫です。金輪際、お兄ちゃんから身を引いてくれれば結構ですから」


 チサキはツンケンした物言いで、敵意を剥き出しにする。


 どうやら本格的に俺が騙されていると思っているようだ。

 もし、篠宮先生が彼氏からお金を吸い取るような性悪女なら、俺と付き合ったりはしないだろう。


 高校生の経済力なんてたかが知れている。


 だが、おそらくチサキは、篠宮先生のことを社会人とは思っていないのだろう。

 同年代だと勘違いしている節がある。まぁ、誤解されても仕方のないポテンシャルの持ち主ではあるのだが。


「チサキ、ちょっと思い込みが激しすぎるぞ」

「……そんなことないし」

「じゃあ、花澄さんのこといくつくらいだと思ってる?」

「え? お兄ちゃんと同い年……いや、敬語使ってるから一つ先輩とか?」

「花澄さんは、にじゅ──」

「わああぁぁああ⁉︎ 女性の年齢いったらダメって習ってないのかな! タクマくん!」


 篠宮先生は燃えるように顔を熱くすると、慌ただしく俺の口を塞ぎにかかる。


 周囲に居合わせた人が、ぎょっとしていた。


「す、すみません……つい」

「ついですまないからね!」


 ピンと人差し指を突きつけて、俺に注意してくる篠宮先生。


 お、おお……。

 なんか怒られるのも新鮮で、いいな……。


 とか呑気なことを思っていると、チサキのパチパチとまぶたを瞬かせながら篠宮先生を見やる。予想よりも遥かに大人だったことに驚いているみたいだ。


「まぁとにかく、経済力という面で花澄さんは俺よりよっぽど力がある。そもそも、俺から搾り取れる金なんて雀の涙みたいなものだ。騙す価値がない。違うか?」

「……それは、そう、だけど」


 視線を落とし、不服そうではあったが、納得してくれる。


 しかしチサキはむっと唇を尖らせると、俺の目を見て。


「じゃあ、どうやって知り合ったの?」

「え、あ、ああえっと、海でナンパした的な」

「は?」

「だからナンパしたんだ。俺が、花澄さんを」


 付き合うきっかけになったのは、間違いなく海でのナンパだ。

 あれがなければ、教師と生徒のままだっただろう。


 チサキは俺からナンパという単語が出てくると思わなかったのか、小さい口をポカンと開けてしばらくその場で放心していた。


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