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自信の元

 ブレマンの街へと入った烈たちは、そのまま街の中心部の屋敷へと招かれた。


「ここは?」


「私の住まいです。本来はカイエン様の屋敷なのですが、当人が全く使わないので私が代わりに。ここの来賓室で軍議をいたしましょう」


 烈が聞くと、ミントレア子爵が丁寧に教えてくれた。烈は


(シリウス公爵の屋敷と比べてもかなり小さいな。本当にただ大きめの家という感じだ)


と少々失礼なことを考えていた。


 皆が会議室に通されると、ミアが真ん中に座り早速軍議を始めた。


「それで、師匠。実際の話、兵力差三倍というのは無策で挑むには無茶ではないかと思うのだが?」


「儂もそこまで無謀ではないわい。ミントレア。説明してやれ」


「はいはい」


 ミントレア子爵は粗雑な扱いにも文句を言わず、説明の準備を進めた。彼は大きな布を持ってくると、真ん中にある大テーブルにそれを広げた。布の正体は地図であった。ミントレア子爵はポイントとなる場所に兵をかたどった人形や城を模した模型を設置していった。


「まず、バウワーが今一万五千の兵をもって立てこもっている場所がここです」


 ミントレア子爵が指し示すと、その場にいた全員が地図をのぞきこんだ。


「そしてブレマンがここ。まあ大体5日程度の距離でしょうか? 先ほど正式に殿下の陣営に味方する旨の使者を送ったので、まあここへは10日程度で到着することになるでしょう。よって、我々は()()で迎え撃ちます」


 ミントレア子爵が指で示したのはブレマンとバウアー近衛軍団の丁度中間の場所だった。


「ここに何かあるのか?」


 ラングが聞くと、ミントレア子爵はこくりと頷いた。


「はい、ここはヘグネの谷という場所です。実はこの谷、入り口は一つなのですが、中に入ると無数の小さい枝分かれした道がありまして、兵力を分断させるのに都合がいいんですよ」


「へ~。地の利を活かすわけか。軍勢が分かれたところを各個撃破と......だが、それだとバウワー近衛総司令がどの道に入ったか分からないんじゃないか?」


「はい。なので餌で釣る必要があります」


 そういってミントレア子爵はカイエン公爵をちらっと見た。カイエン公爵はふっと笑っている。


「開戦前から最初の入り口近くにカイエン様を配置しておきます。そこでまあ挑発をしてもらいます。敵を怒らせるのは得意でしょう?」


「おう! 任せておけ。きっちり猪武者を釣ってやるわい」


「はい方法は任せます。そこで谷に入ってきたはいいものの、軍勢を分けざるを得ず、バウワー近衛司令の本体は段々と先細りしていくことでしょう。別れた軍勢を谷の脇道で各個撃破します」


「流石にそうなったらいくらバウアーという人が猪武者でも、罠だと気づいて戻るんじゃないでしょうか?」


 ルルの疑問にもミントレア子爵はにこっとまるで出来の好い生徒を見るように笑って、説明を続けてくれた。


「はい。そこが狙いです。バウワーが戻ろうとした時点で、カイエン公爵の軍勢が突撃をかけて一気にバウアーの首を獲ります。軍勢の流れに逆らえず、ほとんど抵抗できないまま、我らの勝利は決まるでしょう」


「なるほど。ならあとは開戦するまでの、8日程度、いやこちらが移動することを考えると6日程度でどれだけの軍勢をそろえられるかというところか」


「いえ、その点は大丈夫です」


 烈の言葉にミントレア子爵は首を横に振った。


「カイエン様の軍勢は特殊でして、職業軍人はほとんどいないのです」


「どういうことだ?」


「このブレマンの街も含めて、兵の大半は普段町民や農民として暮らしています。そして戦の時はすぐに武装して戦えるようにしてあるのです。カイエン様、すでに各町や村に遣いのものは出しているのでしょう?」


 ミントレア子爵の問いにカイエン公爵は肩をすくめて答えた。無論だと言わんばかりであった。


(出るときに村人に頼みごとをしていたのはそのためか。だが......)


 烈が疑問を一つ口にした。


「普段町民をしている人たちは強いのか? 町民に武装させてもあまり意味がない気が?」


「問題ありません」


 ミントレア子爵は自信満々だった。


「彼らは町民・村民であると同時にカイエン様の弟子でもあります。個人の強さでも近衛兵の部隊長クラス。練度でも鉄百合団など王国を代表する騎士団に引けを取りません。はっきり言って、この国で最強の兵団こそ、カイエン様が率いる雷迅衆であると自負しています」


 烈たちはここへきて、カイエン公爵とミントレア子爵の自信の理由(わけ)を理解した。戦略でも戦術でもすでに練りに練ってあるのだ。


「そして.....」


 ミントレア子爵は烈たちを見回してにっこりと笑った。


「あなたたちの指揮能力にも期待していますよ? 色々と噂は聞いていますからね」

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