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ブレマンの街

 戦いに参加すると決めた後のカイエン公爵の動きは素早かった。一日で身支度を終えると、麓の村までミアたちを急かしながら下り、村民に何事かを指示した後、目的地へと馬を走らせた。続くのはミア・烈・ラング・ルル・アイネにコース。来たときは4人だったのが今や倍近くにまで増えたのである。道程は順調だった。


 そのまま二日程度、街道沿いを走り、見えてきたのは一つの街だった。


「あれは?」


 烈が聞くと、ミアが答えた。


「ブレマンの街だな。師匠の---カイエン公爵の本来の拠点でもある。確かあそこにはミントレア子爵がいたはずだ」


「確か、カイエン公爵の副官だったか?」


「ああ、昔から師匠の尻拭いをさせられてきた苦労人だ。本人も『白雷』の異名を持つ武の達人なのだがな。可哀そうに」


 ミアのじとっとした目線にも、カイエン公爵はどこ吹く風であった。


「あいつもそろそろ領地のことばっかりで腕が鈍っているだろうからな! 引っ張り出してやるわい!」


 そう言って、カイエン公爵は馬にはっと鞭を入れた。ミアたちも肩をすくめて後に続いた。そして、カイエン公爵が街の門に近づくと、ががっと何も検問などなく門が開いた。そして街の中からゆっくりと男が歩み出てきた。


(齢は50か、少し若いくらいか? 黒髪で......緑色の眼か......武人という割には知的な雰囲気だな。どことなくクリスに似ている気がする)


 烈がどのような人物かと観察しているのを余所に、カイエン公爵の前で男は膝をついた。


「お久しぶりです。カイエン様。本日は如何様でこのような場所まで赴いていただけたのでしょうか?」


「やめろミントレア。気持ち悪い」


「然様ですか? ですがこの北部の広大な領地を私に任せっきりで、自分は悠々自適に田舎暮らしをしている主が呑気に顔を見せに来たと思うと、皮肉の一つも言いたくなるというもの」


 カイエン公爵はうっと顔を引きつらせた。


「ミントレア。今はその辺にしてくれるか?」


 ミアは笑いそうになる顔を必死に抑えながら、カイエン公爵の横に馬を並べた。ミントレア子爵はその姿を見て、今度は本物の敬礼をした。


「これは殿下。お久しぶりでございます。ペルセウス侯爵に追われたと聞いたときは、この国の行く末を案じたものですが......こうしてまたお元気な姿を見れるとは嬉しい限りです」


「私もだミントレア。貴公が息災な限り、北部が混乱を招くことはないだろうからな」


「勿体なきお言葉です。それで......」


 ミントレア子爵は改めて、カイエン公爵に向き直った。


「わざわざ殿下やお嬢---アイネ様をお連れになったということはついに戦う決心をつけたと考えてよろしいのですかな?」


「ああ、それで構わん。で? 何か王都で動きはあったか?」


「動きというより、軍を差し向けてきましたよ? バウワー近衛総司令様率いる軍勢が、殿下を引き渡すようにと使者を送ってきたところです」


「ほう? わざわざ近衛総司令がのう? ペルセウスは思い切った手を打ってきたな」


「どうでしょう? 大隊長時代の彼を知っていますが、武力はあれど、知も品もなくという男でした。存外ペルセウスにとっては大した駒ではないのかもしれませんよ?」


「ふむ。だが近衛軍団を連れてきたのであれば侮ることはできまい?」


「いえ、どうやら近衛軍団は一人として連れてきていないみたいです」


「何?」


 どういうことかと、カイエン公爵はミントレア子爵に尋ねた。


「どうやら、王都近郊や北部の現政権派の勢力を、王の綸旨でかき集めたようで。数は一万五千程度いるようですが、実態は精鋭とは程遠いようです」


「ほう? こちらの軍勢は?」


「まあ、五千程度でしょうか?」


「そうか、なら楽勝だな」


「ええ、相手にもならないでしょう」


 相手の数が自分たちの三倍の数だというのに、カイエン公爵もミントレア子爵も勝つことを一ミリも疑っていないようであった。その様子に烈は空恐ろしさを感じタラリと汗を流した。

登場人物紹介


★立花烈 (レツ・タチバナ)

本作の主人公。ある日、亡き妹の姿を追って、異世界に迷い込んだ少年。齢は18。黒い髪に、高い身長が特徴。実家が古流剣術の道場であり、そこで厳しく育てられたため、剣術の腕は比類なきものとなっている。なにやら暗い過去があるようだが、それについては口を閉ざしている。


★ミア・キャンベル

烈が異世界で目覚めてから初めて出会った少女。齢は18。赤髪に金色の眼、烈と同じくらいの高身長で、身の丈もある、幅広のバスターソードを軽々と振るう。その正体はドイエベルンの王女『ミネビア・アーハイム・キャンベル・ロンバルト』。実兄である現国王と、その腹心のペルセウス侯爵の専横を打倒するために奮闘している。『紅雌虎』の異名を持つ。


★ラング

烈とミアがバリ王国の山賊を退治した時に出会った男。齢は20。金髪で小麦色の肌を持ち、ノリもよく、いわゆるモテる男なのだが、何か秘密があり謎めいている姿も持つ。剣の腕は我流だが一流。


★ルル

モニカ王国の元王女。齢は13~14くらい褐色、黒髪の美少女。モニカ王国がバリ王国に滅ぼされ、奴隷に身をやつしていたところを、烈に解放されたため、その恩返しのために共に旅をしている。元々は『軍破弓』の異名を持つほどの弓の達人で、200m先の敵将を正確に射抜くことができる実力の持ち主。

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