ミアの師匠
「ぐはぁ~~」
馬上の人となったミアの口から特大のため息が漏れた。
「疲れてるな姫サン」
ラングがミアにからかうように言った。それをじろっと睨みつつ、ミアはぶちぶちと文句を言った。
「当たり前だ。クリスのやつめ。起き上がれないのをいいことにあれほど文句を言いおって」
「そりゃそうだろう? 一国の王族、それも内戦中の片方の陣営の総大将がほとんど共も連れずに出かけるって言うんだからな。小言の一つも言いたくなるってもんだ」
「仕方あるまい。師匠は私でなければ会ってくれないのだからな」
「だからって、4人だけだぜ?」
ラングが後ろを振り返ると、烈とルルが付いてきていた。烈は本調子ではないにしろ、少し回復したようだ。ルルの話し相手になっていた。その様子を見てラングはふっと笑った。
「ま、元々この4人からだったからな。悪くはないか。ところで姫サンほどの達人の師匠って何者なんだ?」
「ああ、カイエン・バーハルトという男だ」
「げ!? それってまさか『雷鳴戦鬼』か!?」
「さすがに知っているか?」
「それはな。傭兵国家『ドイエベルン王国』の伝説の8割はその人のものっていうじゃねえか」
「まあ、当たらずとも遠からずと言ったところか。話に尾ひれは付いているが、ドイエベルンが中央の列強と肩を並べることができたのは師匠の功績がでかいだろうな」
「はっは~、読めたぜ」
「何がだ?」
「『雷鳴戦鬼』に会うのはただレツの悩みを解決するためってだけじゃねえ。カイエン・バーハルトは最強の武人であると同時に、ドイエベルンの『三大公爵』の一人だ。軍力の強化も目的ってわけだな?」
「ああ、だからこそクリスも最終的には行くのを認めたんだ。『魔剣』との戦で主力が消耗してしまったからな。少なくとも首都ベルンを陥すなら三大公爵の軍勢は必要不可欠だ。純粋に物量が少なすぎる」
「で、ただ仲間を増やすのにペルセウスに知られては邪魔になると?」
「ああ。ただ、私たちが三大公爵を迎え入れようとするのは、ペルセウスの想定通りであろうな」
「おいおい。じゃあ俺らは敵が対策をしているかもしれない所に飛び込んでいかなきゃいけないってことか?」
「そうなるな」
「そうなるなって姫サン......」
虎穴に入らずんば虎子を得ずを地でいくミアの戦略にラングは冷や汗を垂らした。
「まあ、今回は姫サンの師匠だって言うなら、陣列に加わってもらうのは簡単ってことか」
「いや、実はそうでもない」
思わずラングはミアの横顔を見た。どこか困難なことを必死で成し遂げようとするような雰囲気を持った顔であった。
「師匠は剣にしか興味のない人だ。権力争いやペルセウスのことなど気にも留めないだろう。自分の領地にすら興味がない」
「おいおい。じゃあ誰が領地の面倒を見てるんだ?」
ラングの問いにミアは少し考えながら発言した。
「多分、長年戦場で師匠の副将だった人---ミントレア子爵だ。師匠の説得ができれば、その方も協力してくれるだろう」
「なるほどね、そりゃ大分癖が強そうだ。まっ!」
ラングはにかっと笑って周りを見渡した。
「この面子ならどうにかなるだろう」
ラングの目線に気付いて、談笑をしていた烈とルルはなぜ自分たちのことを見て笑っているのかと不思議そうにしていた。
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