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突破

「おおおおおおぉぉぉ!!! 剛力一閃!」


 先頭を進むモーガンが吠えた。腕の筋肉を隆起させ、血管を浮かべ、手にした大斧を真横に振るう。それだけで目の前にいた近衛兵たちが2、3人まとめて吹っ飛んでいった。


「はっはっ! やるじゃねえか! モーガンのおっさん!」


 モーガンの活躍を横目に、ラングも手際よく剣を振るい、近くにいた兵士を倒していく。


「ラングさん! 真面目にやってください!」


 ルルはそんなラングをたしなめながら、弓を引き、敵を着実に倒していった。モーガンの連れてきた手勢も主君の思想を反映してか、命を惜しまずひたすら前進していく。しかし、それでも......


「進めないな......」


 烈が目の前の敵を斬り伏せながら独り言ちた。


「レツ! 敵さん、次々と俺らと本陣の間に人数を入れていきやがる。陣形も何もあったもんじゃないぜ!?」


 ラングが烈に馬を寄せて言った。


「ああ、ここまで露骨に時間稼ぎするとは思わなかった」


「あっちの方が人数が多いから適当に相手してくれると思ったんだがな」


「こちらの力を最大限警戒しているようだ」


「で? どうするよ? 姫さんがやられるとは思わねえが、このままだと被害が大きくなる一方だぜ?」


「ああ、何か手を打たなきゃな......」


 烈は馬上から辺りを見回し、この場を打開する策を練り始めた。そして何かを見つけ、叫んだ。


「ルル! あの黄色い兜を被っている奴らを倒してくれ!」


「は......はい!」


 ルルは急に呼ばれて少し驚くも、すぐに気を取り直して矢を複数つがえた。


「射落とせ! 天涙!」


 ルルの矢は空へと昇り、あらゆる方向に四散して、正確に烈が指示した人物たちを打ち抜いた。


「流石だ! ルル!」


「えへへ~」


 烈に褒められて、ルルは照れたように笑った。


 かくしてその効果は絶大だった。近衛兵たちの動きが目に見えて衰えはじめたのだ。


「お?」


「うむ?」


 それに真っ先に気付いたラングとモーガンが攻勢を強めようとした。明らかに今が好機だったからだ。だが烈はそれを制した。


「違う! こっちだ!」


 正面突破しようとした二人を止め、烈は斜めの方向へ突撃した。するとどうだろうか。先ほどよりも明らかに抵抗が弱く、どんどん前に進めるようになった。


 ラングは驚いて烈と馬を並走させながら聞いた。


「おいおい、随分とうまくいくじゃないか? さっきの指示はどういうことなんだ?」


「黄色い兜を被ったやつらは指揮官だ!」


「そこではわかるさ。敵の動きが露骨に鈍ったからな。だがその後の動きはどういうことだ? どうしてこっちの方が抜けやすいと分かったんだ?」


 二人は会話している最中も右に左に馬上から敵を切り崩して進んでいた。


「流れだ!」


「なに?」


「敵の気の流れ、動きの流れ、淀みが歪みが大きい所はそのまま連携がもっとも弱い所だ。そこを縫っていけばいい」


 簡単に言う烈にラングは冷や汗を流した。一国の軍師が高所から敵を見てそういうことができると聞いたことはあるが、平地から見てなどついぞ聞いたことがない。


「天才っていうのは怖いね......」


「どうした、ラング!」


「なんでもねえよっと!」


 二人が目の前にいる敵を切ると、敵の厚みが急に途切れた。目の前には数人の兵士と、明らかに他のものと位の違う男が馬上から烈たちを睨みつけていた。


「信じられんな」


 シーバスであった。彼は声を低くして言った。


「たしかに第三軍は守りの戦が苦手だが......まさかこんな小僧どもに抜かれるとは思わなんだ」


 嘆息をこぼすシーバスを余所に、烈が一歩進み出た。


「あんたが、この軍の総大将か?」


「いかにも。近衛軍団第三軍軍団長シーバスと申す。その方は?」


「烈、レツ・タチバナだ。ミネビア・アーハイム・キャンベル・ロンバルトの盟友としてあんたを倒しに来た」


 あまりの不遜な物言いに、シーバスはふっと笑ってしまった。

登場人物紹介


★立花烈 (レツ・タチバナ)

本作の主人公。ある日、亡き妹の姿を追って、異世界に迷い込んだ少年。齢は18。黒い髪に、高い身長が特徴。実家が古流剣術の道場であり、そこで厳しく育てられたため、剣術の腕は比類なきものとなっている。なにやら暗い過去があるようだが、それについては口を閉ざしている。


★ミア・キャンベル

烈が異世界で目覚めてから初めて出会った少女。齢は18。赤髪に金色の眼、烈と同じくらいの高身長で、身の丈もある、幅広のバスターソードを軽々と振るう。その正体はドイエベルンの王女『ミネビア・アーハイム・キャンベル・ロンバルト』。実兄である現国王と、その腹心のペルセウス侯爵の専横を打倒するために奮闘している。『紅雌虎』の異名を持つ。


★ラング

烈とミアがバリ王国の山賊を退治した時に出会った男。齢は20。金髪で小麦色の肌を持ち、ノリもよく、いわゆるモテる男なのだが、何か秘密があり謎めいている姿も持つ。剣の腕は我流だが一流。


★ルル

モニカ王国の元王女。齢は13~14くらい褐色、黒髪の美少女。モニカ王国がバリ王国に滅ぼされ、奴隷に身をやつしていたところを、烈に解放されたため、その恩返しのために共に旅をしている。元々は『軍破弓』の異名を持つほどの弓の達人で、200m先の敵将を正確に射抜くことができる実力の持ち主。

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